工学系

2017年6月26日

研究成果のポイント

・医薬品等の高機能化学品製造における夢の反応“温和な条件でのアミドの還元反応”に世界で初めて成功
・新たな合金ナノ粒子触媒※1を開発し、常圧水素・室温でのアミド還元を実現
・アミド還元物であるアミンを安全かつ省エネルギーでつくり出す、環境に優しい触媒プロセスの開発に期待

概要

大阪大学太陽エネルギー化学研究センター金田清臣招へい教授(名誉教授)と同大学院基礎工学研究科満留敬人准教授らは、温和な条件でアミドの還元反応を進行させる触媒の開発に世界で初めて成功しました。

アミドを還元して得られるアミンは、医薬品・農薬・電子材料などの様々な高機能化学品に必要不可欠な化合物です(図1)。アミドは難還元性の化合物であるため、これまでアミドの還元反応は、数百から数十気圧の高圧水素ガスの下、高温の厳しい反応条件下で行なわれており、温和な条件下でアミドの還元を行うことは、次世代の省エネルギーかつ安全な高機能化学品製造プロセスにおける夢の反応の一つに挙げられていました。

今回、金田清臣招へい教授らの研究グループは、白金とバナジウムが複合した2ナノメートルの合金ナノ粒子触媒(Pt/V/HAP)(図2)を開発し、世界で初めて、常圧の水素圧、室温条件下でアミドの還元反応を進行させることに成功しました。本反応後の副生成物は無害な水のみであるため、安全かつ省エネルギーで反応を行なうことができます。さらに、開発した触媒は、反応液からのろ過により簡単に分離ができ、回収した触媒を再びアミドの還元反応に用いても触媒の活性低下は観られず、繰り返し使用することができます。

この触媒反応系は従来の反応系に比べて極めて温和な条件下で、アミドをアミンへと選択的に変換します。また、固体触媒※2であるため反応溶液との分離が簡単に行えるという利点があります。これらのことから、安全かつ省エネルギーでほしいものだけをつくり出す、環境に優しい触媒プロセスの開発が期待されます。

本研究成果は、ドイツ化学会誌のAngewandte Chemie International Edition(オンライン)に、6月26日に公開されました。

図1 アミド化合物の還元反応目的生成物であるアミンと水のみが副生する。

図2 (a)開発した合金ナノ粒子触媒(Pt/V/HAP)の写真、(b)電子顕微鏡像(白い粒子が白金とバナジウムの合金ナノ粒子)

研究の背景

アミドを還元して得られるアミンは、染料・溶媒・医薬品など様々な用途で必要不可欠な化合物です。これまでアミドの還元反応では、アミドが難還元性であるため、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)などの強力な還元剤が使われていました。しかしながら、これらの試剤は反応後に金属廃棄物を大量に排出し、廃棄金属と生成物であるアミンとの分離が難しいといった難点があるため環境に負荷を与える反応です。そのため、反応後に水のみを副生する水素ガスを使ってアミドを還元する“触媒”の開発がおよそ100年前から熱心に研究されてきました。しかし、水素を用いたアミドの還元反応を進行させるには非常に高い水素圧と高温の反応条件が必要であるため、“温和な条件下で進行するアミドの還元反応の開発”が求められてきました。理想的なアミドの還元反応条件は水素圧30気圧以下、反応温度70℃以下と言われていますが、これまでにこのような温和な条件でアミドを還元できる触媒は開発されませんでした。

そこで、本研究グループでは、バナジウムと白金を複合化しナノ粒子化した触媒が、30気圧以下、70℃以下で様々なアミドを高選択的にアミンへと還元できることを見出し、世界で初めて、“温和な条件下で進行するアミドの還元反応の開発”に成功しました。さらに、開発した触媒を用いることで、世界で初めての常圧(1気圧)の水素でのアミドの還元反応を達成し、室温でも反応が進行することを明らかにしました。また、開発した触媒は、反応液からのろ過により簡単に分離ができ、回収した触媒を再びアミドの還元反応に用いても触媒の活性低下は観られず、繰り返し使用することができます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、世界で初めて常圧の水素ガスでアミドを還元することができることを示し、次世代の高機能化学品製造プロセスにおける夢の反応の一つを実現したことから、省エネルギーかつ安全で、有害な廃棄物を一切副生しないアミドの還元反応プロセスの開発が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2017年6月26日にドイツ化学会誌のAngewandte Chemie International Edition(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Mild Hydrogenation of Amides to Amines over Platinum-Vanadium Bimetallic Catalyst”
著者名:Takato Mitsudome, Kazuya Miyagawa, Zen Maeno, Tomoo Mizugaki, Koichiro Jitsukawa, JunYamasaki, Yasutaka Kitagawa, Kiyotomi Kaneda

なお、本研究の一部は、大阪大学「未来知創造プログラム」(代表者:満留敬人)、科学研究費補助金(基盤研究(B)研究代表者:満留敬人)、新学術領域「3D活性サイト科学」(領域代表:大門寛)の支援の元に行われました。

用語説明

※1 合金ナノ粒子触媒
骨や歯の主成分であるヒドロキシアパタイトという無機物の上に、白金とバナジウムから構成される直径約2ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1(10-9)メートル)程度の非常に小さな合金ナノ粒子を調製することに成功しました。この小さな合金ナノ粒子が温和な条件におけるアミドの還元反応を可能にしました。

※2 固体触媒
化学反応を進行させる触媒は、溶液に溶け込む均一系触媒と溶け込まない不均一系触媒(=固体触媒)に大別できます。固体触媒は、粉末であるため反応溶液からろ過により簡単に取り除くことができる他、再使用ができるなどの多くの実用的な利点があります。

研究者のコメント

当研究グループでは、触媒開発を通して環境問題の解決に貢献したいと考えています。本研究では、白金とバナジウムから構成される非常に小さなナノ粒子触媒を作ることに成功し、世界で初めて次世代の高機能化学品製造プロセスにおける夢反応の1つとされる“温和な条件下でのアミドの還元反応”を実現しました。本研究成果から生み出される、省エネルギーかつ安全で、有害な廃棄物を排出しない触媒反応プロセスの開発が環境に調和した持続可能な社会の構築に貢献できることを期待しています。

参考URL

大阪大学太陽エネルギー化学研究センター グリーンサステイナブルケミストリー ラボ
http://www.cheng.es.osaka-u.ac.jp/kanedalabo/GSCLabo/index-j.html

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