2016年9月29日

リリース概要

株式会社竹中工務店(社長:宮下正裕)、キリン株式会社(社長:磯崎功典)、神戸天然物化学株式会社(社長:広瀬克利)、大阪大学(総長:西尾章治郎)、大阪府立大学(学長:辻洋)、神戸大学(学長:武田廣)、北海道医療大学(学長:浅香正博)の研究チームは、骨粗しょう症等の治療薬の有効成分である活性型ビタミンD3※1 中間体※2 の高効率な生産技術の開発に着手しました。

本技術開発は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で公募された事業「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」に、本研究チームが「高機能組換え植物組織培養によるビタミンD3高効率生産技術の開発」を応募し、採択されたものです。

急激に進む高齢化社会において、骨粗しょう症の患者数は、国内だけで潜在的に1,300万人もの方がおり、その治療薬の有効成分として活性型ビタミンD3が用いられています。本開発では、各大学でナス科植物のゲノム編集※3 遺伝子操作により、活性型ビタミンD3の代謝機能※4 を飛躍的に高めるとともに、改良した植物の生育環境の最適化制御技術と培養技術、および抽出・精製技術を駆使し、ビタミンD3の含有量を野生種の400倍に増加させることを目指します。

この研究は2016年からの5年間で計画しており、得られた成果を活用して、活性型ビタミンD3中間体の製造・販売事業を企業化することを目標としています。

本開発の主な実施項目は、以下の3つです。

①ゲノム編集技術等を用いた活性型ビタミンD3代謝経路の改変・蓄積組織の増強により、ビタミンD3の生産性を高めた植物の創出
②培養条件の制御やスケールアップの容易さに優れた植物組織の組織培養※5 技術による大量生産と培養施設の最適環境制御を融合した高効率生産システムの構築
③代謝成分であるビタミンD3の効率的抽出・精製技術の構築

図1 開発技術の実施概要

研究チームの役割分担

組織主な役割分担
企業 (株)竹中公務店 ビタミンD3の生産を促進するための光や温度、気流などの環境制御
キリン(株) 組織培養による植物組織の大量生産
神戸天然物化学(株) 分析手法および抽出・精製
大学 大阪大学(大学院工学研究科)
大阪府立大学(大学院生命環境科学研究科)
神戸大学(大学院農学研究科)
北海道医療大学(薬学部)
植物組織培養、ゲノム編集・遺伝子操作技術による活性型ビタミンD3の生産性の向上

参考

近年、医薬品の分野では、世界的に低分子化合物から、遺伝子組換え技術等を用いたバイオ医薬へ大きくシフトしつつあり、その市場は2010年の900億ドルから2015年には1900億ドル(バイオ後発品を含めれば2090億ドル)の規模に増大しています。

医薬品の原薬や中間体は、複雑な化学構造を有しており、化学的に合成するには多段階の反応を組み合せて製造しています。これに変わる手法として着目されているのが、植物や微生物の代謝を利用して工業的に製造する「スマートセルインダストリー」です。

この手法に用いられる遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術は、海外のメガファーマ企業やベンチャー企業が先行していますが、今回公募されたNEDOの事業は、これらの技術の国産化とその応用を促進するものです。

用語解説

※1 活性型ビタミンD3
ビタミンD((vitamin(D)(は、ビタミンの一種であり、脂溶性ビタミンに分類される。ビタミンDはさらにビタミンD2とビタミンD3に分けられる。ヒトではビタミンD3が重要な働きを果たしている。活性型ビタミンD3は、ビタミンD3の体内での働きが高まる化学構造にしたもの。

※2 中間体
医薬品そのものではなく、原薬を製造する前の有効成分を含む素材。

※3 ゲノム編集
ゲノム(ある生物種を規定する遺伝情報全体)上の任意の遺伝子を改変する技術。人工ヌクレアーゼというDNA切断酵素を用いて、目標とする遺伝子を破壊したり、挿入したりすることを指す。遺伝子治療や農畜産物の育種に応用する研究が進められている。

※4 代謝機能
一般に、生物細胞が栄養分を摂取し老廃物を排出する働き。本件においては植物が細胞内で起こす様々な化学変化のことを指す。その生成物としてビタミン類も生産される。

※5 組織培養
生物組織の小片をとって容器内で適度の栄養を与えて生存、増殖させること。閉鎖型の培養技術を採用することで、培養条件の制御やスケールアップが容易になる。

参考URL

大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 細胞工学領域(村中研究室)HP
https://sites.google.com/site/muranakalabjpn/home

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