2014年3月28日

本研究成果のポイント

・従来にはなかった創傷治癒効果と抗菌効果を併せ持った新しいペプチドを合成
・安定性、製造コスト削減のため改良を加え、最終的な治癒薬としての候補をSR-0379と命名
・今後は、医師主導型の臨床試験へ。アカデミア発創薬の完成間近。

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座の森下竜一寄附講座教授、冨岡英樹(博士課程3年)、同連合小児発達学研究科の中神啓徳寄附講座教授、同医学系研究科金田安史教授らの研究グループは、アンジェスMG(株)との共同研究で難治性皮膚潰瘍治療薬の開発を目指し、創傷治療効果に加えて抗菌活性を併せ持つ20残基の新しいペプチド(SR-0379)の創製に成功しました。本研究グループは30残基のアミノ酸からなる新規抗菌ペプチドAG30/5Cをこれまで報告してきましたが、難治性皮膚潰瘍患者を対象とした医師主導治験に向け、ペプチドの安定性の向上と製造コスト削減を目指した改変型ペプチドの作成に取り組み、SR-0379を最終的な開発化合物とすることに決定しました。ラットでの検討で創傷治癒を促進させる作用を確認する一方で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの薬剤耐性菌に対しての抗菌活性も有することが確認できました。本研究は厚生労働省の早期・探索的臨床試験拠点整備事業のサポートを受けており、今後医師主導型の臨床試験を予定しております。

なお、本研究成果はPLOS ONE(Public Library of Science社)の電子版に3月27日17時(米国東部時間)に掲載されます。

大阪大学早期・探索的臨床試験拠点

早期・探索的臨床試験拠点事業は、革新的な医薬品・医療機器を創出するために、世界に先駆けてファーストインヒューマン試験(FIH)を国内で実施し、POC(Proof of Concept)を取得するための医療拠点を整備することを目的に、厚生労働省が平成23年度より実施している事業です。

大阪大学医学系研究科では、脳・心血管領域におけるアンメットニーズに対応する創薬拠点を形成するべく、医師・研究者による学内の豊富な基礎的医学研究の中から、創薬へ繋がる可能性の高いシーズを審査・採択し、重点的にサポートを行っています。

学内の医薬工連携はもとより、他研究機関、民間企業、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との連携など、総合大学のあらゆる強みを生かしつつ、Academic Research Organization(ARO)の整備を進め、世界的に競争力の高い医薬品の創出を目指します。

研究の背景

創に対する治療法として、組織再生を誘導するには創を乾かすことのない湿潤環境が最適であることから創傷被覆材などを用いた湿潤療法が提唱されています。しかし他方では創部では皮膚のバリアー機構が破綻しているために細菌が繁殖することが多く、創の治りに関与しない汚染・コロニゼーションの状態か、又は創の治癒を遅延させる感染の状態かを正確に見極めて、適切な治療を行う必要があります。創に対しての感染治療では、消毒剤は傷修復を遅らせてしまうこと、抗生剤の長期使用は耐性菌を増やすという問題点があるために適切な感染治療が望まれます。しかし、なかなか傷の治らない難治性皮膚潰瘍は下肢虚血疾患・糖尿病・リウマチ・膠原病などの患者さんに多い疾患であり、このような免疫が低下している患者さんでは局所感染兆候(発熱・発赤・腫脹・疼痛)の判定が困難なことが多いという問題点があります。すなわち、感染の危険性の高い難治性潰瘍に対し傷修復に最適とされる湿潤療法を活かした有効な治療法が確立できていないのが現状です。

研究グループは新規ペプチドAG (Angiogenic peptide) -30の改変型ペプチドであるSR-0379を難治性皮膚潰瘍治療に向けた外用薬として開発しました。SR-0379は、血管新生促進作用や肉芽形成促進作用等による創傷治癒効果と膜透過性変化による抗菌作用を併せ持ち、ラット感染創モデル・皮弁創モデルで既存の治療薬であるトラフェルミン製剤(フィブラスト®スプレー)と同等あるいはそれ以上の創修復効果を認めています。この創修復作用と抗菌活性の両方の特性をもつSR-0379は感染防御機構が障害されている難治性皮膚潰瘍患者さんに対しての新規治療薬となりうると考えられます。本研究は厚生労働省の早期・探索的臨床試験拠点整備事業の重点シーズとしてサポートを受けながら現在非臨床試験・製剤化検討を進めており、2014年度をめどに健康人を対象とした第1相試験(パッチテスト)、2015年に患者を対象とした第1相および第2a相を計画しており、アカデミア発創薬開発を目指しています。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

先行類似薬であるフィブラスト®スプレーは褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍・下腿潰瘍)を効能・効果とする外用液剤であるが、抗菌活性を示さない。SR-0379は創傷治癒作用と抗菌作用を併せ持つペプチドであり、湿潤環境を保ちながら感染を予防する新規治療コンセプトを提唱できる可能性があり、創傷被覆材との併用療法も期待できます。従来の治療法では実現できなかった在宅医療での創傷治療と感染コントロールに使える可能性があると考えられます。

参考URL

大阪大学大学院連合小児発達学 健康発達医学
http://www.cgt.med.osaka-u.ac.jp/vme/research_02.html

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