2012年10月31日

リリース概要

大阪大学大学院生命機能研究科細胞分子神経生物学研究グループ・佐藤晴香特任研究員(現所属:熊本大学発生医学研究所研究員)、山本亘彦教授は、脳発達の基礎をなす神経細胞(ニューロン)の生存と突起成長の研究過程において、感覚の中継部位である視床から大脳への神経投射が形成される際に、ニューリチンとVGFと呼ばれる2つのタンパク質が視床ニューロンの軸索(信号を送る突起)末端から分泌され、大脳皮質ニューロンの生存と樹状突起(信号を受けとる突起)の成長を促すことを見出しました。ニューリチンとVGFの量は脳活動によって変化することから、大脳ネットワークの発達には、遺伝だけでなく、これらの分泌タンパク質による後天的作用が重要な役割を果すことを明らかにしました。

 

研究の背景

新生児から幼児期に、個々のニューロンは軸索を伸長させて標的ニューロンと結合しますが、それと同時に樹状突起と呼ばれる比較的短い突起を多数伸展させます。軸索成長が標的ニューロンから放出される分子によって促進されることはよく知られていますが、逆に軸索から標的細胞に対する作用についてはほとんど明らかにされていませんでした。この問題に立ち向かうため、大阪大学大学院生命機能研究科・細胞分子神経生物学研究グループは、視床から大脳への投射に着目し、発達期の視床に発現する遺伝子をマイクロアレイ※1などの遺伝子工学の手法を駆使して網羅的に探索しました。

その結果、視床ニューロンの軸索から分泌される因子としてニューリチンとVGFを同定し、その作用を細胞培養の実験系を用いて解析することにより、これら2つのタンパク質が大脳皮質ニューロンの生存と樹状突起形成を促進させることを明らかにしたのです。

 

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

入力線維から分泌されるタンパク質、ニューリチンとVGFが後天的な脳発達を担うことが明らかになりました。このことは、幼少期において視覚、聴覚、触覚の感覚入力の影響がこれらタンパク質の作用として発現することを意味し、子供の脳発達の仕組みや自閉症などの精神神経疾患における環境要因の役割の解明にも光明をもたらすことが期待されます。

 

特記事項

本研究成果は、2012年10月31日発刊のジャーナル・オブ・ニューロサイエンス誌(the Journal of Neuroscience誌、米国神経科学会誌)に掲載されます。

 

参考図

図1 感覚の中継部位、視床の神経細胞は、発達期に軸索を成長させ大脳皮質ニューロンと結合する(左)。分泌タンパク質のニューリチンとVGFは視床細胞で作られ、軸索の末端まで運ばれ放出される(右、赤丸)。放出されたニューリチンとVGFは大脳皮質の細胞の生存や樹状突起の成長を促進する(右)。

 

用語解説

※1 マイクロアレイ
DNAチップとも呼ばれ、特定の組織や細胞に発現する遺伝子を探索する手法。

 

参考URL

http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/neurobiol/

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