審良静男先生 日本国際賞受賞おめでとうございます!
先端モダリティ・ドラッグデリバリーシステム研究センター 審良静男 特任教授(常勤)
大阪大学に、今年も嬉しいニュース!先端モダリティ・ドラッグデリバリーシステム研究センター(CAMaD)拠点長の審良静男特任教授が、栄誉ある日本国際賞(Japan Prize)に輝き、4月14日、天皇皇后両陛下ご臨席の授賞式でガラスの賞牌を受け取った。昨年の坂口志文先生のノーベル生理学・医学賞受賞に続き、免疫学の世界レベルの業績が認められた。阪大で生命科学に挑み続けて50年!審良先生の研究や、知られざるエピソードをご紹介。


日本国際賞とは
科学技術の進歩に貢献する独創的、飛躍的な成果を上げた全世界の科学者を対象に贈られる。公益財団法人国際科学技術財団が1985年に始め、これまでノーベル賞受賞前の13人を含む15カ国116人が受賞した。日本人は審良先生が24人目。本学関係者では、2011年に岸本忠三先生と平野俊夫先生が、2019年に岡本佳男先生が受賞している。著名科学者ら約1万6000人の推薦に基づき選考され、毎年1月に発表、4月に授賞式がある。副賞は1億円。
受賞した業績内容
審良先生は、米テキサス大学のジージャン・チェン教授と共同で、「自然免疫システムによる核酸認識メカニズムの解明」の業績により、2026年「生命科学」分野の日本国際賞(Japan Prize)を受賞した。
免疫システムは、生体がウイルスや細菌などから身を守る仕組みで、自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は病原体の侵入初期に起こり、マクロファージや樹状細胞などが異物を取り込む。獲得免疫はB細胞やT細胞などが中心に働き、病原体の特徴を記憶して次回から反応する後天的な免疫を指す。
自然免疫細胞は「病原体を無差別に攻撃する」と考えられていたが、審良先生らは2000年代初頭、細胞膜にある約10種類のたんぱく質「トル様受容体(TLR)」がセンサーとなり、細菌のDNAやウイルスのRNAという「核酸」を認識して働いていると解明。さらにTLR活性化が獲得免疫を誘導し、B細胞による抗体産生などの免疫応答を起こしていることを証明した。
一連の発見は、自然免疫と獲得免疫の関係を根底から見直させた。また核酸が自然免疫を起動する仕組みの解明は、コロナ禍におけるメッセンジャー(m)RNAワクチンの開発につながった。研究をさらに進めたチェン博士は、細胞質の病原体由来DNAを感知して免疫応答を起こす経路を発見。がんなどを治療する次世代の医薬品「核酸医薬」の開発につながるとの期待が高まっている。

受賞決定への感想
正直言って驚きました。私と同じ自然免疫分野で2011年のノーベル生理学・医学賞を海外の研究者が受賞しており、もう受賞はないと思っていました。最近、自然免疫が核酸に反応することを応用して創薬につなげる研究が盛り上がっているところ、僕が核酸を認識する受容体の最初の発見者だったので……本当に運が良かったと思います。


審良先生の現在の研究は?
実は現在は、核酸認識とは少し違うテーマを研究しています。2009年、mRNAの分解酵素「レグネース1」が、免疫反応の炎症を抑制する遺伝子であることを世界に先駆け発見しました。リン酸化が炎症制御の役割を担っており、リン酸化を阻害する分子は自己免疫疾患などの治療薬につながる可能性を感じています。今はこれが一番面白くて、新たな研究分野を作るんじゃないかと思っています。

研究のパートナー
僕の研究に遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)は欠かせません。岸本忠三先生の研究室に在籍した約30年前から今まで、実験のため数百種類のノックアウトマウスをつくりました。遺伝子改変マウスの管理が一番大事で、今も研究費の8割くらいがマウスにかかる費用です。そのマウスを駆使して「面白い現象を見つけ、研究を深める」スタイルを続けています。

「ワニ博士」愛
実はワニ博士の大ファンなんです。2007年にIFReCの拠点長になって「マスコットを打ち出す大学が日本には少ない」と気づいてから、熱烈にプッシュしています。角帽や服を着せて「博士らしさ」を追求したのは僕が最初じゃないかな。お気に入りはマントを羽織った「スーパーワニ博士」。最近まで教授室の天井に吊るして いました。
趣味はスペイン語
高校生の頃、スペイン語の音や響きに魅せられました。10年以上前から毎週語学教室に通い、毎日のDuolingoも欠かせません。中南米諸国やスペイン本国も数回訪れており、2年前にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を60km歩きました。

若手研究員は
IFReCの一角を占める審良研究室。研究員のサトウ・ウゴ・アンヘルさん(30)はアルゼンチン・ブエノスアイレス大学で修士号を取得し、「免疫の勉強をしたい」と研究室の門をたたいた。「審良先生は海外でも有名です。考え方がスマートで、研究も面白い」と研究生活を楽しんでいる。

若い世代へ向けて
これまで「独立したら師匠とは違う研究をする」姿勢を貫いてきました。同じ研究では師匠を超えられない。「○○と言えば誰々」のように一つのキーワードと結ばれる研究者になるべきです。若い人には自分の「テリトリー」を持ってほしいですね。

◆プロフィール
1977年大阪大学医学部卒業、84年大阪大学大学院医学研究科博士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校博士研究員、大阪大学細胞生体工学センター助教授、兵庫医科大学教授などを経て99年大阪大学微生物病研究所教授。2007年免疫学フロンティア研究センター(IFReC)拠点長、18年から特任教授。22年から先端モダリティ・ドラッグデリバリーシステム研究センター拠点長も務める。
(本記事は、2026年10月7日発行の大阪大学NewsLetter 95号に掲載されたものです。)
(2026年10月取材)
