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皮膚は内臓の鏡

「ちょっとミミヨリ健康学」Column Entry No.009

医学系研究科 教授 藤本学

身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。

皮膚は内臓の鏡

「皮膚は内臓の鏡」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。皮膚の病気には内臓の異常に関連があるものがあり、皮膚に現れた症状を観察することによって隠れた内臓の病気を見つけ出すことができるという様な意味で用いられます。内臓の病気は体の中のいろいろなところに影響を及ぼすと考えられますが、それを具体的に目にすることができるのが体の表面にある皮膚というわけです。

例えば、肝臓の病気で黄疸が出て皮膚が黄色くなったりするのは代表的な例でしょう。そのほかに、糖尿病、甲状腺などの病気、血液の病気、消化器の病気、がんに関連して出るものなど、様々なものが知られています。子供でも、先天性の病気が皮膚の症状によって見つけられることも少なくありません。

冬の時期に注意すべき症状として膠原病に伴うものが挙げられます。膠原病は免疫の異常によって様々な臓器に炎症が起きる一連の病気の総称ですが、最初に皮膚に症状が現れて診断されるきっかけになることがよくあります。冷たいものを触った時などに突然に指の血の気が失せて真っ白になる症状(図1)はレイノー現象と呼ばれ、膠原病を疑う代表的なものです。勝手に「冷え症」と思い込んでいたり、病院でもそのように言われたりしている場合があるので、注意が必要です。

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図1:レイノー現象によって白くなった指先

また、爪上皮出血点(図2)という爪の甘皮(爪上皮)に見られる黒い点々や爪囲紅斑という爪の根元の皮膚がぼんやりと赤くなる症状も膠原病でしばしば見られます。そのほか、しもやけが治りにくいなどの症状も膠原病の場合があります。

皮膚病には2000を超える種類があると言われ、にきびや水虫のようになじみ深いものから非常に稀な病気まで、また中には皮膚がんのように生命に関わるものもあります。見慣れていないとみな似たように見えたりしますので、自分で決めつけずに早めに正確な診断を受けることがとても大切です。また、治療法も近年飛躍的に進歩しており、以前は治すのが難しかった病気もいろいろな選択肢が増え治療が可能になっているものも少なくありません。そうでないものも近い将来その様になっていくと期待されています。異常を感じたら早めに診断を受けましょう。

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図2:爪の甘皮(爪上皮)に爪上皮出血点がみられる

大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 皮膚科学教室

皮膚科医の扱う疾患は、ありふれた疾患から生命予後に関わる重篤な疾患まで多岐に渡ります。その中には病態の明らかにされていない、あるいは治療法の確立されていない病気が残されています。皮膚科学教室は皮膚免疫を中心に、様々な皮膚疾患の問題を解明しようとする取り組みを行っています。

(本記事の内容は、2022年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)