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心不全について知っておくべき2つのこと

ちょっとミミヨリ健康学

医学系研究科・教授・坂田 泰史

身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。

心不全について知っておくべき2つのこと

心不全は長く付き合う病気

 心不全という言葉を聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。亡くなられた方の新聞記事に「心不全」と書いてあると、心不全は心臓が止まる最後の状態を示すように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。日本循環器学会は2018年に心不全を次のように定義しています。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」
 重要なことは、「だんだん悪くなり」というところです。もちろん例外はありますが、多くの心不全患者さんは心不全発症から長い付き合いとなります。よってどこまで長生きするかだけではなく、どのくらい毎日元気に活動できるか、も重要な目標です。


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図:心不全とそのリスクの進展ステージ
出典:厚生労働省Webページ
(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000173149.pdf)を加工して作成
参考:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)(2020年8月閲覧)

心不全は予防するチャンスがあります

 図の通り、心不全は4段階のステージがあります。心臓ポンプ機能低下のリスクを有するステージA、ポンプ機能が実際に低下してしまうステージB、そのため息苦しさなど日常生活に差し障りがでるステージC、そして治療効果が乏しくなるステージDです。よって、心不全はそれぞれのステージに移行しないように予防する、つまり3回の予防チャンスがあります。心臓ポンプ機能は心臓に酸素と栄養を送る冠動脈、脈を整える刺激伝導系、形を維持する弁・構造、そして血液を押し出す心筋によって構成されています。そのどれが調子悪くなってもポンプ機能は低下します。悪くならないように先手を打つ目的で、生活習慣を整え、早めに飲み薬を服用し、必要な場合は様々なタイプのカテーテル・外科的治療を受けるようにしましょう。

● 大阪大学医学部附属病院 循環器内科
循環器疾患全般を対象に、高度先端医療技術を駆使した診断・治療・予防に取り組んでいます。心不全治療については、軽症から重症まで全ての心不全に対し、日本の循環器内科の"最後の砦"としての使命感を持って取り組んでいます。
[URL] https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/departments/circulatory.html