究みのStoryZ

生体、細胞を自在に光らせる

ナノ材料を生かしたバイオイメージングの最先端

高等共創研究院/産業科学研究所・准教授・小阪田泰子

可視化や画像化を意味するイメージング。その中でも、細胞や個体レベルで、特定のタンパク質などの分布を画像解析する技術であるバイオイメージングは、医療やライフサイエンスの分野で幅広く応用されている。より高性能なバイオイメージングツールの開発が求められる中、高等共創研究院の小阪田泰子准教授は、生体適合性の高いナノ材料による生体発光イメージングの研究に取り組んでいる。

生体、細胞を自在に光らせる

X線照射でナノ材料によるイメージングを

小阪田准教授とバイオイメージングの出会いは米国スタンフォード大学での留学時代。学生時代は有機化学や物理化学を学んでいたが、留学先では新しい世界に飛び込みたいとナノスケールでのイメージングの研究室に進んだ。たまたま出会った研究者から、「X線照射すると発光する材料はできないか」と持ちかけられ、共同研究がスタート。学生時代に学んだ放射線科学の知識も動員して、ナノ材料をX線照射により発光させるイメージングを行うという手法を考えついた。

イメージングの応用

次に、発光性のイリジウム錯体や金属クラスターを使ったバイオイメージングに歩を進めた。クラスターは、同種の原子や分子が結合したナノサイズの物体。着目したのは、金の原子25個が集まった構造の発光性金ナノクラスター。現在、多色発光が可能になるようにと応用を進めている。  さらに光化学的な原理を付加して、光信号のオンオフに応じて、発光したり、消光したりするナノ粒子の設計にも取り組んでいる。「光がつきっぱなしでも困るし、つかないのも困ります。実は、消すのは易しいのです。つかないようにする工夫を考えています」  今後は、生体機能制御やDDS(ドラッグデリバリーシステム)分野で、発光バイオイメージングの手法を応用した新しい展開をしていきたいと考えている。「基礎科学の基盤をしっかり構築していく研究をめざしていますが、将来は疾病の治療や創薬に応用できる研究がいいですね」

恩師や仲間から刺激を受けて成長

現在、高等共創研究院に所属しながら、大学院時代の古巣である産業科学研究所で、単独で実際の研究を進めている。「夏期講座などを除けば、今は講義を受け持つことがなく、論文指導に当たる学生もいない。研究に専念できるのが利点ですが、少し寂しさもありますね」と語る。「将来こんな応用につながるだろうと、夢や希望を語り合いながら学生さんと一緒に研究したいですね。大学院時代も、留学先でもたくさんの人々に囲まれ、刺激を受けながら成長してくることができたと思います」  産業科学研究所の恩師の川井清彦准教授とは、今も共同研究でお世話になり、米国留学時代の仲間とは常に交流を続け、「一緒に研究しよう」と約束している。



小阪田准教授にとって研究とは

研究は山登りににていると思います。一歩ずつ、こつこつ歩み続けて達成すると言う点も似ていますが、どの山を目標にするか、どの道を通って頂上にたどり着くかを自分で決められる点も似ています。実験はほとんど失敗するもの。それでも繰り返し続けていると、ある日成功する。その時は『おお、やった。』と喜びが込み上げます。研究で苦労する点は特にないと思います。何があっても、『まあ、いいか』と受け流してしまえる正確ですね。

●小阪田泰子(おさかだ やすこ)
2009年大阪大学工学研究科修了、博士(工学)。同年日本学術振興会・海外特別研究員、10年科学技術振興機構・さきがけ専任研究者(スタンフォード大学)、13年京都大学物質細胞統合システム拠点特定拠点助教、14年大阪大学産業科学研究所助教、17年より現職。

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(2018年1月取材)