【お口のマメ知識】菌血症とは? 感染予防が、歯科治療では大切です!
口腔治療・歯周科・助教・山下元三
【お口のマメ知識】菌血症とは? 感染予防が、歯科治療では大切です!
歯学部附属病院
口腔治療・歯周科 山下元三 助教
Aさんと大阪大学歯学部附属病院の歯科医師との会話。
Aさん「先生、聞いてくださいよ!『キンケツショウが怖いから、うちでは診れない、大学病院に行ってください』と今まで通っていたかかりつけの歯医者さんで言われました。この間まで心臓病で入院していてやっと退院できたので、いつもの様に歯のお掃除に行ったら、“お金”が無いから診れないなんて、、、、ショックです。」
歯科医師「えー? キンケツショウ? “お金”が無い? あー! Aさん、まあ落ち着いて!心臓、大変でしたね。 『 菌血症 』 って、血の中に菌が入り込むことですよ。かかりつけの歯医者さんは、『菌血症が怖い』とおっしゃったのだと思いますよ。」
お口の中には、約800種類の細菌が10億個以上生息しています。そのため、歯周病やむし歯の治療に伴って歯周病菌やむし歯菌が血液中に入ることがあります。このように身体の血液の中に細菌が存在する状態を “ 菌血症 ” と呼びます。現在では、歯周病の手術や抜歯などの歯科治療だけではなく、歯磨きやご飯を食べるだけでも、血液中に細菌が侵入し、菌血症を発症することが明らかになっています。ただ、通常では、細菌が血液中に侵入しても、マクロファージのような免疫細胞に補まって速やかに排除され、すぐに回復します。
しかしながら、免疫に異常をもつ患者さん、心臓にペースメーカーや人工弁を装着されている患者さん、大きな手術を受けられて体力の低下した患者さんや高齢の方では、そのような体の防御メカニズムがうまく機能しません。そのような方に、抜歯や歯石除去などの出血をともなう治療、歯の根の治療などの歯科治療を実施する場合には、処置開始の直前に、細菌をやっつける抗菌薬を服用していただくことが推奨されています。
一般的にも、お口の衛生状態が不良で、歯周病や歯の根に膿が貯まっている様な患者さんは、歯肉や骨の炎症の部位から細菌が血液に侵入し、菌血症から細菌性心内膜炎や脳への感染などの発症リスクが高まることが報告されています。そのため、毎日の歯磨きとお口の定期的なケアが非常に大切です。
当科では「安心・安全・快適」をモットーに歯周病とむし歯の治療にあたっています。何か分からないことや、全身的な体調の変化があれば、担当医にご相談ください。
(2016年7月「大阪大学歯学部附属病院広報誌 NewsLetter vol.08」より)
(2016年7月取材)