\波力発電のブレークスルーとなるか/ ジャイロ式波力発電が広帯域・高効率で発電できることを理論的に解明

\波力発電のブレークスルーとなるか/ ジャイロ式波力発電が広帯域・高効率で発電できることを理論的に解明

2026-2-17工学系
工学研究科准教授飯田 隆人

研究成果のポイント

  • 波と浮体とジャイロの連成解析により、ジャイロ式波力発電線形理論上は波の周波数に依らず、常に最大のエネルギー回収効率を達成できることを理論的に証明した
  • 従来方式では浮体式波力発電は共振時のみしか最大のエネルギー回収効率が得られないことが知られていたが、ジャイロ式波力発電ではすべての周波数で最大効率が得られるため、より多くの波エネルギーを電気に変換できる可能性が見いだされた
  • これまで実用化が難しいとされた波力発電に対し、ブレークスルーとなり得る理論的基盤を提供するものであり、将来的な社会実装が期待される

概要

大阪大学大学院工学研究科の飯田隆人准教授は、ジャイロ式波力発電を対象に、波と浮体とジャイロの連成を考慮した、流体力学的な理論解析を行い、ジャイロ式波力発電が線形理論上は波の周波数に依らず、常に理論上の最大エネルギー回収効率を達成できることを理論的に証明しました。

従来方式の浮体式波力発電は、浮体が波に同調して揺れる共振時にのみ、エネルギー回収効率が最大になることが知られていました。そのため様々な周波数の波が混在する海洋では総発電量は限られ、海上から陸上への送電コストに見合う採算性を確保することが難しいという課題がありました。

今回、飯田准教授はジャイロ式波力発電に対して世界で初めて、波と浮体とジャイロの連成理論解析を行いました。その結果、線形理論の範囲において、フライホイールの角速度などの制御パラメータを適切に決めることで、どのような周波数の波に対しても常に最大のエネルギー回収効率を達成できることを明らかにしました。

これは従来方式の波力発電にはない、ジャイロ式波力発電のユニークな性能であり、これまで実用化が進まなかった波力発電に対して、ブレークスルーになり得る新たな理論的基盤を与えるものです。飯田准教授は本成果を基に社会実装に向けた研究開発を進めており、将来的な実用化が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Journal of Fluid Mechanics」に、2月17日(火)午前3時(日本時間)に公開されました。

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図1. ジャイロ式波力発電のイメージ図。
浮体の内部にジャイロが搭載されている。浮体が波の中で揺れているときにフライホイールを回転させると、ジャイロ効果によりジンバルが回転する。このジンバルの回転から発電するのがジャイロ式波力発電である。

研究の背景

従来方式の波力発電は、浮体が波に同調して揺れる共振時にのみ、エネルギー回収効率が最大になることが知られていました(図2)。そのため様々な周波数の波が混在する海洋では総発電量は限られ、海上から陸上への送電コストに見合う採算性を確保することが難しいという課題がありました。一方でジャイロ式波力発電は、これまで神戸大学やイタリアのトリノ工科大学で積極的に開発が行われてきましたが、波と浮体とジャイロの相互作用を考慮した流体力学的特性は十分に解明されておらず、最適な制御パラメータや理論的な発電性能は明らかになっていませんでした。

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図2. 波力発電の方式による比較。
左図:ポイント・アブソーバー式、回転振り子式、ジャイロ式波力発電の模式図。
右図:それぞれのエネルギー回収効率の比較。横軸は波数(周波数に相当)。
ポイント・アブソーバー式や回転振り子式などの従来方式の波力発電は共振周波数でのみ最大のエネルギー回収効率0.5に到達する。一方で、ジャイロ式波力発電はいずれの周波数においても最大のエネルギー回収効率を達成できる。

研究の内容

飯田准教授は、ジャイロ式波力発電を対象に、波と浮体とジャイロの連成を考慮した、流体力学的な理論解析を世界で初めて行いました。その結果、線形理論の範囲において、フライホイールの角速度、発電機の減衰力、および発電機の復元力を適切に設定することで、ジャイロ式波力発電は周波数に依らず、常に最大のエネルギー回収効率を得られることが明らかになりました。

さらに本研究では、理論解析に加えて、周波数領域および時間領域での数値シミュレーションを実施し、線形理論の範囲内では理論解析と一致した結果が得られることを確認しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

これまで波力発電は多様な方式が提案され、研究開発がされてきました。しかし、海洋という遠隔かつ厳しい自然環境において発電を行い、送電コストを含めて採算性を確保できる方式はありませんでした。本研究成果により、ジャイロ式波力発電は広い周波数帯にわたって高い発電効率を実現できる可能性を持つ、従来方式にはないユニークな性能を有することが理論的に示されました。

本成果は、これまで実用化が進まなかった波力発電に対し、ブレークスルーとなり得る新たな理論的基盤を与えるものです。飯田准教授は本成果を基に社会実装に向けた研究開発を進めており、将来的な実用化が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年2月17日(火)3時(日本時間)に英国科学誌「Journal of Fluid Mechanics」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Linear analysis of a gyroscopic wave energy converter: absorbing half of the wave energy over broadband frequencies”
著者名:Takahito Iida
DOI:doi:10.1017/jfm.2026.11172

なお、本研究は、JSPS日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費)JP23K13504の支援を受けて実施されました。また、神戸大学 大学院工学研究科 神吉博名誉教授より有益な助言をいただきました。

参考URL

SDGsの目標

  • 07 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 14 海の豊かさを守ろう

用語説明

ジャイロ式波力発電

浮体の内部にジャイロを搭載し、波による浮体の動揺とフライホイールの回転によってジャイロモーメントを発生させ、そのモーメントから発電する方式。日本ではこれまで神戸大学の神吉博名誉教授が先駆的に開発を進めてきた。

線形理論

波の振幅や浮体の動揺が波長に比べて十分小さく、またジンバルの回転角が微小であると仮定することで解析を行う理論。波の周波数が小さく、もしくは波高が大きくなると、その挙動は線形理論では記述できなくなる。

エネルギー回収効率

波のエネルギーをジンバルの回転エネルギーに変換する効率(一次変換効率)のこと。これに発電機の変換効率(二次変換効率)を掛けると発電効率になる。前後対称形状の二次元浮体の場合、エネルギー回収効率は理論上0.5が最大であることが知られている。