
\どんな葉っぱもこれ1つ!/ 多様な植物種・変形を表現する葉のCGモデルを開発
AIによる緻密な植物管理で農業を変える新技術
研究成果のポイント
- AI・深層学習技術を活用し、多様な植物種・多様な変形を単一モデルで表現可能な葉のCGモデル「NeuraLeaf」を開発
- 植物の葉には様々な形状・変形があるため、従来は手作業する必要があった葉のCGモデル作成を、葉の撮影データと多様な変形を含む葉の3次元形状データを用いることで、多様な植物種としおれ等の変形を単一モデルで再現することが可能に
- 植物栽培における葉の詳細な形状変化の追跡に活用でき、生育予測や病害の早期発見、品質改良への応用が期待される
概要
大阪大学大学院情報科学研究科大学院生の楊陽(よう よう)さん(博士後期課程)、大倉史生准教授(マルチメディア工学専攻コンピュータビジョン講座)らの研究グループは、AI・深層学習を活用し、様々な植物種の葉・しおれなどによる様々な変形を、単一のモデルで表現可能なCG技術「NeuraLeaf」を世界で初めて開発しました。このCGモデルは、植物種・変形をそれぞれ異なるパラメータによりコントロール可能なパラメトリックCGモデルになっています。
これまで、人体や動物の形状を表現するパラメトリックモデルは開発されてきましたが、植物の葉は人体や動物と比較して種による形状変化や変形の自由度が高く、高精度なパラメトリックモデルの実現は困難と考えられてきました。そのため、多様な植物種によって異なるCGモデルを人手で作成する必要がありました。
今回、研究グループは、従来から植物科学分野で使われてきた葉の撮影データと、独自に収集した多様な変形を含む葉の3次元形状データを用いた学習により、多様な植物種としおれ等の変形を単一モデルで再現することを可能にしました。本モデルはCG分野におけるモデリングの省力化につながるほか、実際の植物に合うパラメトリックモデルを推定することで、植物栽培における葉の緻密な形状変化の追跡が可能になり、生育予測や病害の早期発見、品種改良への応用が期待されます。
本研究成果は、10月19日~23日にハワイで開催されるコンピュータビジョン分野最高峰の難関国際会議「IEEE/CVF International Conference on Computer Vision (ICCV)」にハイライト論文(投稿論文中の上位3%未満)として採択されました。
図1. 植物種(Base Shape)としおれ等による変形等(Deformation)を異なるパラメータで表現するパラメトリックCGモデル
研究の背景
これまで、植物器官の形状は、種の多様性や変形の柔軟性により、モデリングや推定が困難な対象であることが知られていました。特に、植物の葉は、光合成効率との強い関連や、成長・病害の指標としても重要性を保ちながらも、その3次元形状のモデリングは、植物種ごとにCGモデルを手作業で作成する必要があり、膨大な労力を要していました。
研究の内容
研究グループでは、植物種などによって変化する葉の「基本形状」が2次元平面状であり、しおれなどの変形が2次元的に表現できる特性に着目しました。この特性を活かし、深層学習を用いたパラメトリックCGモデル「NeuraLeaf」を開発しました。本手法では、植物種ごとの基本形状と、しおれなどによる変形を異なるパラメータで表現可能です。さらに2次元平面で表現できる基本形状は、従来植物科学の分野で集められてきた葉の画像群を用いて学習可能であることを示し、加えて自然な3次元変形の表現を学習するために、数百枚規模の葉の変形を含む3次元形状データを計測・収集しました。
図2. 開発された葉のパラメトリックモデル(NeuraLeaf)を、実際の植物画像に合わせて最適化することで、「葉ごと」の詳細な形状を復元できる
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、植物の「葉ごと」の詳細な形状を再現することが可能になり、植物の成長予測や病害の早期検出に役立つことが期待されます。NeuraLeafモデルは、農業のみならず、育種(品種改良)の評価や、植物科学における重要なツールとしての活用が期待されます。
特記事項
本研究成果は、2025年10月19日~23日(現地時間)に開催されるコンピュータビジョン分野最高峰の難関国際会議「IEEE/CVF International Conference on Computer Vision (ICCV)」にハイライト論文(投稿論文中の上位3%未満)として採択されました。
タイトル:“NeuraLeaf: Neural parametric leaf models with shape and deformation disentanglement”
著者名:Yang Yang, Dongni Mao, Hiroaki Santo, Yasuyuki Matsushita, Fumio Okura
プレプリントのDOI:https://doi.org/10.48550/arXiv.2507.12714
なお、本研究は、JST創発的研究支援事業およびJSPS科研費の支援の下で行われました。
参考URL
大倉准教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/857a2a1d99272c9d.html
研究プロジェクトサイト
https://neuraleaf-yang.github.io/
SDGsの目標
用語説明
- パラメトリックCGモデル
限られた対象(人体や動物など)の形状を、比較的少数のパラメータ群で表現するコンピュータグラフィックス(CG)モデリング手法。人体形状を対象として、体型と人物姿勢を表現可能なSkinned Multi-Person Linear (SMPL) モデルが特に有名であり、人物CGモデリングのほか、画像や動画からの人物行動解析に広く用いられている。



