工学系

2020年4月17日

研究成果のポイント

・紫外線照射によりタンパク質中のアミノ酸が変換されるメカニズムを解明
・これまで明らかにされていなかったUVC※1を照射した際のタンパク質中のアミノ酸の構造変化メカニズムを、質量分析法と安定同位体標識された水を使用することで解析可能に。
・UVC照射を抗体医薬品※2などで利用する際の影響が明確となり、さらにウイルス不活化などへの応用も期待。

概要

大阪大学大学院工学研究科の内山進教授、薬学研究科の大久保忠保教授、大学院生の宮原佑弥さん(薬学研究科博士後期課程)、奈良女子大学の中沢隆教授、パナソニック株式会社らの研究グループは、抗体医薬品に紫外線照射を行うことで、タンパク質を構成するアミノ酸の一種であるヒスチジンが構造変換されるメカニズムを明らかにしました(図1)

これまでにも紫外線を照射するとタンパク質が分解されることやアミノ酸が他のアミノ酸に変わることは知られており、光照射は、微生物の殺菌などの目的で使用されてきました。特に、従来の光源よりエネルギーの強いUVCランプは、より効率的な殺菌・消毒の方法として、医薬品製造の場での利用が期待されていますが、抗体医薬品にUVCを照射した際の、アミノ酸の構造変化メカニズムは、明確に解明されていませんでした。

今回、内山教授らの研究グループは、抗体医薬品にUVCを照射し、質量分析法※3と同位体標識された水(18O水)※4を用いて実験を行うことにより、ヒスチジンがアスパラギン及びアスパラギン酸へと構造変換されるメカニズムを解明しました。これにより、UVC照射を抗体医薬品の製造の場で利用する際の影響が明確となりました。さらにUVC照射を用いた研究を進めることにより、UVC照射によるウイルスの不活化などへの応用が期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Scientific reports」に、4月14日(火)19時(日本時間)に公開されました。

図1 UVCを照射した際のヒスチジンの構造変化メカニズム
ヒスチジンが光照射により、中間体を経て、アスパラギン及びアスパラギン酸へと変換される。

研究の背景

これまで、UVC照射は、タンパク質の分解やアミノ酸変換を引き起こすことが知られていましたが、その詳細な構造メカニズムは明らかとなっていませんでした。

内山教授らの研究グループでは、質量分析法と酸素の安定同位体である18O水を組み合わせた方法により、ヒスチジンがアスパラギン及びアスパラギン酸に変換されるメカニズムを解明しました。これは今後、医薬品製造の場において、UVC照射による殺菌、ウイルスの不活化などの用途で使用する際の、医薬品への影響を評価する上で有益な情報となります。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、抗体医薬品において有効性及び安全性に影響を及ぼすアミノ酸変換のメカニズムが明らかとなりました。さらに研究を進めることにより、UVC照射によるウイルスの不活化などへの応用が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2020年4月14日(火)19時(日本時間)に米国科学誌「Scientific reports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Effect of UVC Irradiation on the Oxidation of Histidine in Monoclonal Antibodies”
著者名:Yuya Miyahara, Koya Shintani, Kayoko Hayashihara-Kakuhou, Takehiro Zukawa, Yukihiro Morita, Takashi Nakazawa, Takuya Yoshida, Tadayasu Ohkubo and Susumu Uchiyama

用語説明

※1 UVC(Ultra Violet-C)
200 - 280nmの波長を有する紫外線。殺菌灯などに利用される。

※2 抗体医薬品
遺伝子組換えや細胞培養などのバイオテクノロジーを利用して製造されたバイオ医薬品の一種である。有効成分は、タンパク質であり、がんや自己免疫疾患などの難病の治療に大きな効果をあげている。

※3 質量分析法
分子をイオン化させ、質量(m)を電荷数(z)で割ったm/zに応じてイオンを分離・検出する方法。

※4 18O水
酸素(16O)の同位体である18Oで構成された水。

参考URL

工学研究科生命先端工学専攻 高分子バイオテクノロジー領域 内山研究室HP
https://macromolecularbiotechnology.com/

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