2018年6月26日

研究成果ポイント

・1分子レベルで2種類のDNAの塩基配列と量比を同時に決定する定量解析法を開発
・これまでのゲノム解析法は、原理的に定量解析が不可能
・マイクロRNA※1を用いた早期がん診断への応用に期待

概要

大阪大学産業科学研究所の谷口正輝教授らの研究グループは、次世代DNAシークエンシング法※2を用いて、1分子レベルで2種類のDNAの塩基配列と量比を同時に決定する1分子定量解析法を世界で初めて開発しました。

次々世代DNAシークエンシング法は、1塩基分子の電気抵抗の違いをトンネル電流※3で読み出す方法であり、DNAやマイクロRNAの塩基配列、ペプチド※4のアミノ酸配列を直接解読できる方法です。

今回、谷口教授らの研究グループは、次世代DNAシークエンシング法で解読できる塩基長を長くすることにより、がんの診断マーカーである2種類のマイクロRNAに対応するDNAの塩基配列と量比の決定に成功しました。これにより、マイクロRNAを利用した乳がんや肺がんなどの早期診断が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、6月4日(月)18時(日本時間)に公開されました。

図1 次々世代DNAシークエンシング法の原理

研究の背景

これまで、マイクロRNAによるがん診断は、乳がんや肺がんなどの早期診断を可能にすることが知られていました。マイクロRNAによるがん診断を行うためには、数種類のマイクロRNAの塩基配列とその量比を同時に決定する定量解析が必要ですが、これまでの解析方法では定量解析が不可能でした。

谷口教授らの研究グループでは、これまで開発してきた次々世代DNAシークエンサー法の読取り塩基長を長くすることにより、がん診断に用いられる2種類のマイクロRNAに対応するDNAの塩基配列と量比を同時に決定する定量解析に成功しました。

この結果は、マイクロRNAの直接計測による定量解析が可能であることを示しています。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、マイクロRNAによる乳がんや肺がんなどの早期診断が期待されます。また、本DNAシークエンシング法は、マイクロRNAをそのまま1分子レベルで定量解析でき、マイクロRNAをDNAに逆転写してDNAを増幅する操作が不要となるため、低コストかつ迅速ながん診断が期待されます。

特記事項

研究成果は、2018年6月4日(月)18時(日本時間)に英国科学誌「ScientificReports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Quantitative analysis of DNA with single-molecule sequencing”
著者名:Takahito Ohshiro, Makusu Tsutsui, Kazumichi Yokota, and Masateru Taniguchi

なお、本研究は、科学研究費基盤研究(S)の一環として行われました。

用語解説

※1 マイクロRNA
生体機能を制御する20~25塩基程度の長さを持つ1本鎖のRNA。がんなどの疾病マーカーになる。

※2 DNAシークエンシング法
DNAを作る4つの塩基分子である、アデニン、シトシン、グアニン、チミンの配列を明らかにすること。

※3 トンネル電流
量子力学的な極微小電流。DNAシークエンシング法では、塩基分子の電気抵抗の違いを電流で読み出す。

※4 ペプチド
アミノ酸が結合して2個以上ペプチド結合して繋がっている構造。

参考URL

大阪大学 産業科学研究所 バイオナノテクノロジー研究分野
http://www.bionano.sanken.osaka-u.ac.jp/

キーワード

この組織の他の研究を見る

Tag Cloud

back to top