2014年1月22日

リリース概要

大阪大学産業科学研究所 立川貴士助教、真嶋哲朗教授らの研究グループは、1種類もしくは2種類の金属酸化物ナノ粒子からなる金属酸化物メソ結晶※1を簡便に合成することができる手法の開発に世界で初めて成功しました。また、p型およびn型半導体※2の特性を示す金属酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶では、粒子間で非常に高効率な光誘起電荷移動反応が起こることを実験的に明らかにしました(図1)。これらの研究により、これまで成し遂げられていなかった複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られたことに加え、開発されたメソ結晶を用いることで光触媒※3や太陽電池などのエネルギー変換デバイスの更なる高効率化が期待されます。

本研究成果は、2014年1月22日(ロンドン時間10時、日本時間19時)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されます。

研究の背景

金属酸化物ナノ粒子は、これまで、光水分解、環境浄化光触媒、バッテリー、センサー、色素増感型太陽電池など、様々な用途に幅広く用いられてきました。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子は無秩序に凝集しやすく、そのために生じる表面積の低下や界面の不整合が、光活性や光エネルギー変換効率を低下させる一因となっていました。この問題を解決するために、金属酸化物ナノ粒子が自己組織化した超構造体である金属酸化物メソ結晶の応用が期待されています。金属酸化物メソ結晶は、これまで多くの合成法が報告されてきましたが、いずれも手順が煩雑で合成に時間がかかる場合が多く、また、特定の種類の金属酸化物1種類のみのメソ結晶しか合成することができませんでした。様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる一般的合成法を確立することができれば、これまで成し遂げられていない複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られるとともに、個々の物質の有する物理的・化学的特徴を生かした応用展開の可能性が飛躍的に広がると期待されます。

本研究では、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、二酸化チタン(TiO2)などの金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる方法を開発しました。また、複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の合成にも世界で初めて成功しました。さらに、単一粒子蛍光分光法や時間分解拡散反射法などの分光法を駆使することで、メソ結晶中の異なる種類の金属酸化物ナノ粒子間で非常に高効率な光誘起電荷移動反応が起こることを明らかにしました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究で開発した手法は、複数の金属酸化物メソ結晶を同一条件下で簡便に合成できるという点で大きく優れています。これまで開発されていなかった複数の金属酸化物ナノ粒子から形成されるメソ結晶や複数の金属を含むナノ粒子から成るメソ結晶の合成にも成功したことから、本手法は汎用性と応用性に大きな可能性を秘めていると考えられます。また、本手法は非常に簡便で、既存の設備による大量生産が可能であるため、環境浄化光触媒、水素発生光触媒、色素増感太陽電池、リチウムイオンバッテリー、磁気記録材料など、幅広い産業応用への展開が考えられます。

今後の予定

金属酸化物メソ結晶の組成、構造、サイズをより精巧に制御することができれば、金属酸化物の有する様々な機能性をより一層向上させることができると期待されます。また、メソ結晶の形成機構や界面反応機構の詳細を明らかにすることで、金属酸化物のみならず、様々な無機・有機ナノ材料からなるメソ結晶の合成へと展開することが可能であると考えています。これらの新材料を用いることで、光触媒や太陽電池電極など、様々なエネルギー変換システムへの応用が期待されます。

特記事項

本成果は、以下の事業による支援を受けて得られました。

研究代表者 真嶋哲朗(大阪大学産業科学研究所教授)
独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(S)
研究課題名「光エネルギー変換系におけるナノ触媒の単一分子化学」

研究代表者 立川貴士(大阪大学産業科学研究所助教)
独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ研究
(研究領域:超空間制御と革新的機能創成)
研究課題名「ナノ粒子の高次空間制御による高効率光エネルギー変換系の創製」

発表論文

Zhenfeng Bian, Takashi Tachikawa, Peng Zhang, Mamoru Fujitsuka, Tetsuro Majima
“A nanocomposite superstructure of metal oxides with effective charge transfer interfaces”
英国Nature Publishing Group, Nature Communications, DOI: 10.1038/ncomms4038

参考図

図1 ZnO-CuOメソ結晶の合成と高効率な粒子間電荷移動の観察
(a)ZnO-CuOメソ結晶の形成過程。ナノ粒子が自己組織化によって集合し、中間体結晶を形成する。焼結によってトポタクティック転移※4が起こり、金属酸化物メソ結晶となる。
(b)角度散乱暗視野走査型透過電子顕微鏡によるエネルギー分散X線分析(HAADF-STEM-EDX)法によって得られたZnO-CuOメソ結晶断面の元素分布像。赤色はCu、緑色はZnである。
(c)単一粒子蛍光分光法によって観測された発光スペクトル。従来型のナノ複合体と比べ、ZnO-CuOメソ結晶の発光は電荷移動によって著しく消光されている。ZnOはn型半導体、CuOはp型半導体である。

用語解説

※1 メソ結晶
ナノメートルサイズの微粒子が規則正しく三次元的に配列した結晶性の超構造体である。数百からマイクロメートルサイズで、粒子間空隙に由来するメソ孔(2~50ナノメートルの細孔)を有する。

※2 p型およびn型半導体
p型半導体とは、電荷を運ぶキャリアとして正孔が使われる半導体であり、n型半導体とは、電荷を運ぶキャリアとして電子が使われる半導体である。p型とn型の半導体を組み合わせることで、高効率な電荷分離が達成される。

※3 光触媒
光を照射することにより触媒作用を示す物質。代表的な光触媒として、アナターゼ型TiO2が知られている。

※4 トポタクティック転移
ある結晶が同じ結晶方位をもった新しい結晶相に転移すること。

参考URL

大阪大学産業科学研究所 第3研究部門(生体・分子科学系)励起分子化学研究分野
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/mec/index.html

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