2018年9月18日

米国における排他条件付取引

激烈な販売競争がもたらしたものは、販売競争相手を市場から排除し、競争が起こらない状態にする「排他条件付取引」。松島教授は、米国の2大飲料メーカーのペプシコ社とコカ・コーラ社が、排他条件付取引獲得の激烈な競争を行っている理由を説明する理論を提案している(Kitamura, Matsushima, and Sato (2018) Naked Exclusion under Exclusive-offer Competition, ISER Discussion Paper No.1021) 。

「様々な食品ブランドを傘下にもつ両社にとって、大きな市場となるのが大学。米国の大学は広大で、しかも多くは近くに店がない環境です。90年代初頭、ペプシコ社はペンシルバニア州立大学に対し、14億円にも上る巨額な提案により、12年間の排他条件付取引を締結しました。これに対抗して、コカ・コーラ社も他の大学と排他条件付取引を締結。これら以外にも、最近は一方から他方に寝返る大学もあり、競争は激化しています。一見、こうした競争があることは好ましいように見えますが、学生や教職員の側から見ると、長期の排他条件付取引があるために、選べる商品の多様性が減ってしまっています。これをどう評価するかは難しいところですが、競争政策上の問題として取り上げられていないことを鑑みると、消費者の側からはあまり問題視されていない印象を受けます」

出典:http://articles.chicagotribune.com/1994-11-06/news/9411060065_1_pepsi-cola-coke-cola-wars

排他条件付取引から学ぶこと

70年代のシカゴ学派による理論では、排他条件付取引を提示できる企業が1社しかなければ、他の企業は撤退までは追い込まれない。しかし、新たな企業が参入し、排他条件付取引を提示できる企業が複数になれば、排他条件付取引獲得競争が始まり、他の企業は何も手を打たなければ、撤退しかなくなる。

日本における価格競争

携帯電話の通信サービス会社(キャリア)は、値段次第でキャリアを変えるユーザーがいる場合、他社の顧客を奪うために新規顧客に対して安い値段を提示することがある。逆に、値段に関わらずキャリアを変えないユーザーに対しては高い値段を提示することもある。キャリアがユーザーのタイプによって異なった商品価格を提示することは価格競争がもたらす価格差別である。
この例では、キャリアを変えないユーザーの側から「高い値段で買わされるのは不平等ではないか」という不満が起こり、実際に販売形態に関して行政が介入した。その結果、価格競争は少し緩くなり、企業の収益は上がったという。しかし、ユーザーがそのことを意識するのは難しい。  過去の購買実績に応じた価格差別の分析は1990~2000年頃から行われている。多くの理論研究は、価格差別の精度が高まると競争が厳しくなることを示している。ただ最近、必ずしも価格差別の精度が高まることで競争が促進されるわけではないことを示す理論も出始めている。

より現実に即した理論分析を

「ある海外の巨大スーパーでは、住所や取引量などの精密なデータ管理により、客一人一人に合わせたプロモーションが行われています。消費者の情報を知った企業は、個々に対する価格差別を行いやすくなっています。それを利用して、できる限り高い値段をつけようとするかもしれません」
今後も、今日の時代背景に沿った理論分析を積み重ねていきたいという。

●松島法明(まつしま のりあき)
2001年東京工業大学社会理工学研究科修了、博士(工学)。同年信州大学経済学部講師、04年信州大学経済学部助教授、05年神戸大学経営学研究科助教授などを経て、09年大阪大学社会経済研究所准教授、11年より現職、17年より同研究所長。

(2018年1月取材)

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