究みのStoryZ

多様なステークホルダーとの窓口を一元化 社会と共に 新たな価値の創出を

「大阪大学共創機構」の今、これからを西尾章治郎機構長(総長)に聞く

 大阪大学は、学内外をつなぐ中核組織として今年1月、「共創機構」を発足させた。既設の「産学共創本部」「社学共創本部」「渉外本部」を集約する一元化窓口となり、企業、自治体、民間組織など市民のみなさんとの絆の強化に取り組んでいくことを使命としている。機構長である西尾章治郎総長に、社会との「共創活動」の理念や展望などについて聞いた。

多様なステークホルダーとの窓口を一元化 社会と共に 新たな価値の創出を

─「共創機構」の理念について教えてください。

西尾 「共創(Co-creation)」とは、社会と大学とが「場」を共有しつつ、「共に価値を創造する」ことを目指す理念です。これからのイノベーションの創出は、社会の多様なステークホルダーと共に課題を探索し、連携し、互いの知と力を合わせることで可能となります。この「知の協奏(Orchestration)と共創」こそが、大阪大学を世界屈指の研究型総合大学へ成長させていくと私は考えます。そこで、さまざまな人や組織と共に社会の問題に取り組むために、共創機構を創設しました。小川哲生理事・副学長が副機構長として指揮をとってくれています。

社会と「場」を共有する原動力に

─総長就任時に提示された「OU(Osaka University)ビジョン2021」との関係は?

西尾 共創機構は、まさにOUビジョン2021を具体化する中核組織です。大阪大学は、創立90周年にあたる2021年を見据えた第3期中期目標期間の6年間を「進化の期」と位置づけています。また、創立100周年という節目を迎える2031年には「社会変革に貢献する世界屈指のイノベーティブな大学」になると明言しています。これを実現するために、学内外のさまざまな壁を取り払い、社会と「場」を共有していく原動力となるのが共創機構の活動です。

─具体的な活動内容を教えてください

西尾 機構は多様な企業とのマッチングや地方自治体、国際機関、NPOとのプロジェクトのコーディネート、プログラムマネジメントなど、共創活動をあらゆる面からサポートします。従来の産学連携は大半が、企業提案型か大学主導型のどちらかでしたが、我々は社会、地域で何が本質的な課題なのかを企業や自治体とも一体となって議論する「共創型」連携にも重きを置き、活動を進めていきます。

受け継がれる地域と共に生きる精神

─市民、地域との連携も強く意識されています。

西尾 大阪大学は「懐徳堂」「適塾」を精神的源流とし、地元政財界による支援と市民の熱い要請によって誕生しました。時を経て、2017年度の日経グローカル「地域貢献度調査」においても、全国748の国公私立大の中で、総合1位にランキングされました。地域と共に生きる大阪大学の「University in Society, University for Society」の精神は、今も個々の活動の中に脈々と受け継がれています。

─学外との橋渡しとともに、学内にも広く共創を求めていますね。

西尾 学内の研究室、組織から「こんな研究を民間と進めたい」「地域ともっと密着するには?」といった相談を受け、それを実現するために多様な経験を全学で共有することも重要な活動です。11月には機構発足を記念して「大阪大学共創フェスティバル」を開催します。企業、自治体、地域の方々などに広くPRする予定であり、全学を挙げて取り組む態勢を整えています。

─今後の発展の方向性は?

西尾 共同研究の支援にとどまらず、基礎研究や人材育成、社会貢献、グローバル化の側面からも、「知」「人材」「資金」という資源を社会から取り入れて好循環を促す活動を進めていきます。また、ダイバーシティの尊重は新たな知の創出につながるとの考えを強く持っています。女性研究者循環型育成クラスターの形成と拡大を、既に大学全体で関西の多くの企業などとともに積極的に進めています。その視点でも、共創機構が一翼を担っていくよう期待しています。

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(2018年9月取材)