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【お口の相談コーナー】切らずに治せるがん治療

口腔外科学第二教室・助教・加藤 逸郎

【お口の相談コーナー】切らずに治せるがん治療

【お口の相談コーナー】切らずに治せるがん治療

歯学部附属病院
口腔外科学第二教室 加藤 逸郎 助教

口の中にがんができるの?
口の中にできるがんを口腔がんと呼びます。口腔がんのうちの約9割はいわゆる癌で、できる場所によって舌癌、歯茎にできる歯肉癌、頬にできる頬粘膜癌、口底癌などがあります。これらの癌は、通常は、手術によって治しますが、中には癌が進行して手術できない人や手術しても大きな障害が残る可能性の高い人、手術拒否した人に対して、当科では2006年から選択動注化学(放射線)療法を行っています。

どのような治療法ですか?
がんのできている場所に応じて、がんを栄養している動脈に選択的にカテーテル(細いチューブ)を留置(複数)して、皮下に薬剤注入のための装置を埋め込みます。装置から1週間に1回抗がん剤を投与します。抗がん剤を流している間は、静脈から中和剤を投与して副作用を軽減します。通常は放射線治療も同時に行います。注入装置を皮膚の下に入れているので、外出や洗髪も可能です。

どんな良い点があるの?
切らずに治せるので、食べる、咬む、飲み込む、しゃべるなどの様々な働きをできるだけ温存することができ、また顔や顎の変形を防ぐことができる非常に優れた治療法です。

副作用は?
治療中と治療後しばらく口内炎がでます。また、貧血などになる場合があります。治療期間が長くなることがあります。

(2017年10月「大阪大学歯学部附属病院広報誌 NewsLetter vol.13」より)

手術前


手術後


MR画像:一番左図の舌の白い部分は癌の拡がりを示します。中2つは抗がん剤と同じ速度で造影剤を流しながらMR撮影したもので、抗がん剤の潅流域を示す。一番右は、治療により白い部分の癌は消失しています。

(2017年10月取材)