2018年3月15日

【お口のマメ知識】食事の時に噛む力について

歯学部附属病院
口腔総合診療部 長島 正 副部長

患者さんから「硬いものをしっかりと噛まないと、顎の機能が低下してしまう」という訴えを聞くことがあります。これは本当に正しいのでしょうか?食品を噛んでいる時の筋肉の活動の様子を顔面皮膚の温度変化から予測したデータがあります。筋肉が仕事をする時にはエネルギーを補給するために血液の流れが活発になり、温度が上昇することを応用した実験です。その結果、口の中に食べ物を入れないでものを噛むまねをしただけでは顔面の温度はほとんど変化しませんが、同じ時間だけガムを噛むと温度の高い部分の面積が広くなりました。さらに、ガムを長時間噛んでいると、スルメを噛んだときに匹敵するだけ顔面の皮膚温度が上昇しました。この実験から、必ずしも硬いものを噛まなくても噛む回数を確保すれば筋肉への血液の流れが多くなることが分かります。すなわち、顎の機能を維持するために必要なのは食品の硬さではなく噛む回数であり、噛むまねをしても温度が上昇しなかったことを踏まえると、食品を必要な回数噛むことが重要であると言えます。

一方、ものを噛むときの力は個人差が大きく、小さい力で効率よく食事をする方や、歯を食いしばるようにして力を込めて食事をする方がおられます。後者に相当する方は加齢とともに歯の耐久性が低下しても強い力でかみ続ける事が多く、最悪の場合、歯が次々に割れてしまうことがあります。「硬いものを噛まなくても、必要な回数噛むことを続けていれば顎の機能は低下しない」ということを踏まえて、食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(2016年1月「大阪大学歯学部附属病院広報誌 NewsLetter vol.06」より)

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ガムを噛んだときと、噛むまねをした時の、顔面の皮膚温度が上昇した部分の面積を、噛み始める前を100%とした比率で表す。(土屋ら、(Jpn.J.Oral Biol., 32:93-102, 1990)より改編して引用)。

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