自然科学系

2018年6月6日

研究成果のポイント

・有機分子触媒※1と水素ガスを用いて、多種多様な骨格のアミノ酸※2を短工程かつ効率的に合成
・副生成物は水のみ。環境に与える負荷がゼロに近い、クリーンなプロセス
・この合成法により、創薬シード化合物のライブラリ拡大に期待

概要

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の星本陽一講師、木下拓也大学院生、ハズラスニット研究員、大橋理人准教授、生越専介教授らは、ホウ素を含む有機分子触媒と水素ガス(H2)を用いて、多種多様なアミノ酸を高効率的に合成する手法を開発しました。開発された反応の副生成物は水のみであり、環境に与える負荷がゼロに近いという特徴を持っています。また、当該の手法においては、従来は必須であった毒性の高いレアメタル触媒を必要としないため、医薬品や農薬、創薬シード化合物などの生物活性化合物※3の合成に応用されることが期待されます。

今回の研究成果は、『アミン化合物の最も理想的な合成法』として、その開発が長年待ち望まれていた反応を達成したものであり、米国科学誌「Journal of American Chemical Society」に、6月5日23時(日本時間)に公開されました。

研究の背景および詳細

アミン化合物は多くの医薬品、農薬、機能性材料、食品添加物などに含まれる重要な有機化合物です。最も汎用性の高いアミン合成法の一つであるカルボニル化合物の触媒的還元的アミノ化反応は、触媒存在下にて原料カルボニル化合物とアミン、そして還元剤から一挙にアミンを合成する反応です(図1)

特に、H2を還元剤とする還元的アミノ化は水以外の副生成物を生じない環境調和性の高い反応です。しかし、これまでに報告されてきた手法においては、レアメタル触媒が必要であり、触媒コストや生成物に含まれる残留金属の除去、並びにそのコストが立ちはだかる大きな問題となっています(図1中の従来法)。近年ではレアメタルを必要としない、有機分子触媒と有機還元剤※4を用いた手法も開発されていますが、水素源として用いた有機還元剤由来の廃棄物が大量に生じるという問題点がありました。

これら従来法の問題点を解決する最も理想的なアミン合成法として、有機分子触媒を用いた水素ガスを還元剤とする還元的アミノ化反応の開発が長年待ち望まれていました。

今回、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の星本陽一講師、木下拓也大学院生、ハズラスニット研究員、大橋理人准教授、生越専介教授らは、ホウ素を含む有機分子触媒を用いることで、H2を還元剤とする還元的アミノ化反応を開発しました(図1中の本研究)。

当該手法の特筆すべき点は、多種多様なアミノ酸の高度官能基化に利用出来る応用性の広さです(図2)。例えば、カルボキシル基(-COOH)、ヒドロキシル基(-OH)などの反応性の高い官能基※5は、従来の触媒系で直接用いることが困難でした。このような高度に官能基化されたアミンは多くの医薬品や農薬に見られる部分骨格です。

図1

図2

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究の社会的な意義は、医薬品、農薬などの部分骨格となる高度に官能基化されたアミン化合物を効率的に合成するための、有機分子触媒と水素を用いた環境調和性の高い手法を開発した点にあります。本研究成果により、アミノ酸誘導体を含む多種多様なアミンが短工程・高効率にて合成可能となりました。この合成が可能になったことで、例えばアミノ酸を中間体とする抗生物質、血圧降圧剤、抗ウイルス剤などの医薬品が低環境負荷、低コスト、かつ簡便に合成可能となるなどの効果が考えられ、今後の創薬シード化合物ライブラリの拡大などに繋がると期待できます。

特記事項

本研究成果は、2018年6月5日23時(日本時間)に米国科学誌「Journal of American Chemical Society」(オンライン)に掲載されました。
掲載論文誌:Journal of American Chemical Society, 2018, ASAP.
タイトル:“Main-Group-Catalyzed Reductive Alkylation of Multiply Substituted Amines with Aldehydes Using H2
著者名:Yoichi Hoshimoto, Takuya Kinoshita, Sunit Hazra, Masato Ohashi, and Sensuke Ogoshi
DOI:10.1021/jacs.8b03626.

用語説明

※1 有機分子触媒
遷移金属を含まず炭素・水素・酸素・窒素・ホウ素などの典型元素から構成される、触媒作用をもつ低分子化合物。

※2 アミノ酸
分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)の両方の官能基をもつ有機化合物の総称。

※3 生物活性化合物
生体に作用する薬や天然物などの化合物。

※4 有機還元剤
還元作用をもつ有機化合物。水素化反応においては水素原子の供与体となる。

※5 官能基
有機化合物に含まれる特定の構造を持つ原子団。その化合物の特徴的な物性・反応性の原因となることが多い。

参考URL

大阪大学 大学院工学研究科 応用化学専攻
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~ogoshi-lab/

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