自然科学系

2018年5月16日

研究成果のポイント

・マルチチャンネル分光器における新規超波長分解能法※1を導入した新技術による光ファイバセンシング(温度センシング)のデモンストレーションに成功した。
・これまで光ファイバセンサ※2の温度検出感度には限界があり、IoT※3で注目される光ファイバセンシング(温度センシング)にはサブナノメーター以下の高い波長分解能※4を持つ分光器※5を搭載したインテロゲーター装置※6を必要としていた。
・安価に高速かつ高い波長分解能でのリアルタイム光ファイバセンシング(温度センシング)が可能になり、IoTで注目される温度や歪センシングまで幅広い分野での産業の普及・促進に期待。

概要

大阪大学大学院工学研究科の小西毅准教授らの研究グループは、これまでに開発に成功した新規超波長分解能法を用いて、IoTで注目される光ファイバ温度センシングの課題を克服するデモンストレーション実験に成功しました。

IoTで注目される光ファイバセンシング(温度センシング)用のインテロゲーター装置では、分光器は信号分析のコアエンジンとして使われています(図1)。しかし、これまでは、イメージセンサーのセンサーサイズ限界の制限により、サブナノメーター以下の高い波長分解能を持つ高価な分光器を搭載した装置でしか、光ファイバセンシング(温度センシング)は実現できていませんでした。

今後、安価に高速かつ高い波長分解能でのリアルタイム計測が求められるライフサイエンス分野をはじめとする広い分野では、分光器の高波長分解能化を進めることにより、安価なマルチチャンネル分光器における新規超波長分解能法の導入が期待されています。

今回、本研究グループは、従来の光ファイバセンシング(温度センシング)用のインテロゲーター装置に、マルチチャンネル分光器における新規超波長分解能法の導入を試みました。これにより、安価な分光器のままサブナノメーター以下の光ファイバセンシング(温度センシング)のデモンストレーションに成功しました(図2)

この成果によって、非常に安価なマルチチャンネル分光器を用いても、光ファイバセンシング(温度センシング)が可能となることから、今後、本手法の普及が期待されます。

本研究成果は、国際光工学会(SPIE)主催の国際会議「Photonics West2018」にて、平成30年1月31日に発表されました。また、基本となる技術の詳細について、応用物理学会機関誌「応用物理vol.87」5月号に解説記事が掲載され、表紙を飾りました。

図1 IoT光ファイバセンシング用のインテロゲーター装置におけるコアエンジンとしての分光器の役割

図2 市販の分光器に新規超波長分解法を適用した実証実験結果

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、サブナノメーター以下の高い波長分解能を持つ高価な分光器を搭載したインテロゲーター装置を必要としていた光ファイバセンシング(温度センシング)において、非常に安価である市販のマルチチャンネル分光器を用いたセンシングシステムの実現が可能になり、分散処理が求められるIoTにおける本手法の普及が期待されます。

本技術を用いることにより、ユーザは非常に安価に(市販の分光器の現在の価格とほとんど変わらない価格)、高速なリアルタイム光ファイバセンシング(温度センシング)が可能になります。また、一般に10倍の波長分解能を有する高性能分光器は10倍程度の価格で販売されているため、本技術により低価格で従来機と同等の性能を有するインテロゲーター装置を提供することも可能となります。

図3に示すGrand View Researchより公開されている現在の光ファイバセンシングの市場動向を参考にすると、この先数年で300Million USDを超える勢いです(https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/distributed-fiber-optic-sensor-sensing-dfos-market)。光ファイバセンシングがIoTの代表的なモデル分野と期待されていることを鑑みると、普及の課題となっているコストの課題を大きく解決する本研究成果はそのトリガとなりうることが期待できます。

図3 光ファイバセンシング関連の市場動向.

特記事項

本研究成果は、国際光工学会(SPIE)主催の国際会議「Photonics West2018」にて、平成30年1月31日に発表されました
タイトル:“Compact and cost-effective multi-channel optical spectrometer for fine FBG sensing in IoT technology”
著者名:Tsuyoshi Konishi and Yu Yamasaki

また、基本となる技術の詳細について、応用物理学会機関紙「応用物理vol.87」5月号に解説記事が掲載され、表紙を飾りました。
タイトル:“マルチチャネル分光器の新しい波長分解能向上技術-副尺技術とその分光器応用-”
著者名:小西毅

なお、本研究は、以下の助成を受けて行われました。
・文部科学省/JSTグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)
・日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究B)JP16H04365

・知財情報
1)「光波長測定方法および光波長測定装置」:米国特許9846081、日本特許6056096
2)「分光器およびスペクトル測定方法」:特願2014-185152
3)「分光器、波長測定装置及びスペクトル測定方法」:特願2016-137012、PCT/JP2017/024479

用語説明

※1 超波長分解能法
平成29年3月23日プレスリリース「高性能な分光器を安価に提供できる新技術を実証」
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20170323_1

※2 光ファイバセンサ
温度や歪によって光ファイバタイプのデバイスの伸縮による光の信号変化を発生させるセンサ。伸縮量が小さいために検出感度は一般的にあまり高くない点が課題。

※3 IoT
IoTは"Internet of Things"の略で、家電製品をはじめ様々なものがインターネットで通信することを示す。

※4 波長分解能
分光器の性能の重要な指標の一つで、近接した2本のスペクトル線があるとき、どのくらい小さいスペクトルの違いまでを2本のスペクトルとして区別できるかという能力を表わすもの。

※5 分光器
プリズムや回折格子などを用いて光を色ごとに分解し、光のスペクトルを測定する装置。

※6 インテロゲーター装置
センサから送られてきたデータや信号から環境変化(温度変化量や歪量)を分析・解析する装置。

参考URL

大阪大学 大学院工学研究科 フォトニック情報工学領域
http://www-photonics.mls.eng.osaka-u.ac.jp/

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