2017年3月23日

本研究成果のポイント

・分光器※1 のセンサーサイズ※2 限界を超えた波長分解能※3 を実現可能な超波長分解能法を世界で初めて提案・実証した。
・これまでセンサーサイズのダウンサイジングには限界があり、波長分解能の向上を制限していたが、等価サンプリング技術※4 を導入した本新技術により、同サイズのまま波長分解能を10倍以上向上することに成功した。
・安価に高速かつ高い波長分解能でのリアルタイム分光※5 が可能になり、ライフサイエンス分野から天文学の分野に至る広い分野での研究の普及・促進に期待。

概要

大阪大学大学院工学研究科の小西毅准教授らの研究グループは、センサーサイズ限界を超えた波長分解能を実現可能な、マルチチャンネル分光器における新規超波長分解能法の実証に世界で初めて成功しました。

マルチチャンネル分光器は、コンパクトかつリアルタイムに計測が可能な分光技術であるため、ライフサイエンス分野から天文学の分野に至る広い分野で盛んに活用されています。これまで、センサーの製造技術や感度の制限から、イメージセンサーのセンサーサイズのダウンサイジングには限界があり(特に赤外領域で数十ミクロン程度)、マルチチャンネル分光器のセンサーサイズ以下の波長の違いを識別することは困難であったため、波長分解能の向上を制限していました。

今回、本研究グループは、ノギス※6 に用いられる副尺※7 と同じ考え方で時間領域の計測技術に用いられている等価サンプリング技術を空間領域に導入しました。これにより、マルチチャンネル分光器のセンサーサイズ限界をハードウェア的な制限を克服し、波長分解能を10倍以上向上する新規超波長分解能法(図1) を市販の分光器において実証し、世界で初めてセンサーサイズ限界を超えた超波長分解に成功しました(図2)

この成果によって、非常に安価であるマルチチャンネル分光器を用いても、センサーサイズ限界を超えた超波長分解が可能になることから、今後本手法の普及が期待されます。また、高性能なマルチチャンネル分光器を駆使することで、世界最高性能の波長分解能を実現することも可能となりま す。

本研究成果は、米国光学会誌「Optics Express」(オンライン)に、平成28年11月9日に公開されました。

図1 新規超波長分解法の 原理図

図2 市販の分光器に新規超波長分解法を適用した実証実験結果

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、非常に安価である市販のマルチチャンネル分光器を用いても、センサーサイズ限界を超えた超波長分解が可能になり、本手法の普及が期待されます。

本技術を用いることにより、ユーザは非常に安価に(市販の分光器の現在の価格とほとんど変わらない価格)、リアルタイム計測性だけでなく、10倍以上の分解能を持つマルチチャンネル分光器を利用することができます。また、一般に10倍の波長分解能を有する高性能分光器は10倍程度の価格で販売されているため、分解能の向上よりも低価格を求めるユーザに対しては、本技術により低価格で従来機と同等の分解能を有する分光器を提供することも可能となります。分光器がバイオテクノロジー分野をはじめとして科学技術分野全般に最もよく使われている分析装置の一つであることに鑑みると、大きなインパクトが期待できます。

また、計測時間を短縮したいユーザに対しては、一般的な干渉型の高性能分光器と比べて10倍以上高速な計測時間の優位性を活かして、同じ計測時間で高い分解能を保ちつつ、今までと変わらないSN比(明るさ)を実現できます。この点においてもインパクトが期待できます。

さらに、次世代超巨大望遠鏡に搭載の高性能なマルチチャンネル分光器と併用することにより、例えば、今後ますます盛んになる宇宙分野での活動の安全確保の視点から重要となる、太陽の活動の観察などにおいて、世界最高性能の波長分解能を実現することも可能となると期待されます。

特記事項

本研究成果は、米国光学会誌「Optics Express」(オンライン)に、平成28年11月9日に公開されました。
タイトル:“Super spectral resolution beyond pixel Nyquist limits on multi-channel spectrometer”
著者名:Tsuyoshi Konishi, Yu Yamasaki, and Tomotaka Nagashima

なお、本研究は、以下の助成を受けて行われました。
・文部科学省/JSTグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)
・日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究B)JP16H04365

用語解説

※1 分光器
プリズムや回折格子などを用いて光を色ごとに分解し、光のスペクトルを測定する装置。

※2 センサーサイズ
マルチチャンネル分光器では、分解されて一直線上に広がった光のスペクトル(虹)を受光するためのセンサーをアレイ上に並べたCCDカメラのような装置を用いて一括で計測します。センサーサイズが小さいと波長分解能が向上することが期待されますが、製造技術や感度の点から小さくするのに制限があります(赤外領域で数十ミクロン程度)。

※3 波長分解能
分光器の性能の重要な指標の一つで、近接した2本のスペクトル線があるとき、どのくらい小さいスペクトルの違いまでを2本のスペクトルとして区別できるかという能力を表わすもの。

※4 等価サンプリング
等価サンプリングはサンプリングのスタート点を少しずつずらして繰り返しサンプリングすることにより、等価的に実際のサンプリング周期よりもはるかに高い時間分解能を得ることができる手法。繰り返し同じ信号が入力される場合に用いられます。

※5 リアルタイム分光
リアルタイムにスペクトルが変化する光を実時間で分光すること。一般的な高い波長分解能を実現可能な分光器では、一つ一つのスペクトル線をスキャンして計測するために長時間の計測時間を必要とします。このため、静止している現象などの計測は可能ですが、リアルタイム分光は困難です。一方、マルチチャンネル分光器はCCDカメラで一括して測定が可能なためにリアルタイム分光が可能です。

※6 ノギス
副尺(※7 参照)つきの精密な長さ測定器のこと。

※7 副尺
長さを測る主尺の一目盛り以下の値をさらに細かく読むための補助目盛り尺のこと。例えば、本尺の9目盛を10等分したものを副尺に用いると、主尺の10倍の細かさまで長さを測ることができます。

参考URL

大学院工学研究科 生命先端工学専攻 フォトニック情報工学領域
http://www-photonics.mls.eng.osaka-u.ac.jp/

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