2014年7月4日

リリース概要

大阪大学大学院理学研究科の住 貴宏准教授、名古屋大学太陽地球環境研究所の阿部 文雄准教授、京都産業大学理学部の米原 厚憲准教授を中心とするMOAグループ※1は、他のグループとの国際共同観測で、地球から3千光年離れた連星系※2の片方の星をまわる地球に似た惑星を発見しました。これは、重力マイクロレンズ現象を用いて検出しました。発見された惑星の重さは地球の約2倍で、軌道半径は太陽と地球との距離(1天文単位)とちょうど同じぐらいです。しかし、その主星は太陽の10分の1程度と軽く暗いので、この惑星は-210℃程度と地球より非常に冷たく、木星の氷衛星エウロパより少し冷たい程度です。この主星は、15天文単位程度、つまり太陽から土星までの距離にある同程度の重さの星と連星系をなしています。この様な比較的近傍に伴星※3をもつ星で、しかも地球の様な軌道と質量を持つ惑星が発見されたのは初めてです。宇宙に存在する星の約半数は連星系をなしていますが、連星系での惑星探査は難しくあまり進んでいません。今回の発見で、連星系中にも地球の様な軌道に地球型惑星※4が存在する事が明らかになったことで、今後地球の様な惑星の探査の可能性を大きく飛躍させる事につながると考えられます。

この成果は、7月3日(米国東部時間)、米国科学雑誌「Science」に掲載されます。
(論文題目「A Terrestrial Planet in a ‐ 1 AU Orbit Around One Member of a ‐ 15 AU Binary」)

研究の背景、内容

系外惑星※5は1995年に初めて発見されてから、これまでに1800個以上も発見されており、系外惑星研究は、今や天文学で最も活発な分野の一つとなりました。これら発見された惑星のほとんどは、我々の太陽系の様に単独で存在する恒星(主星)の周りを回っています。それに対して、連星系での惑星の発見は大変稀です。これまで多くの系外惑星を発見してきた視線速度法※6や、トランジット法※7、また今回我々が使ったマイクロレンズ法も、観測天体が連星系であると分かると観測を中止したり、観測頻度を減らしてしまいます。これは、連星系中の惑星検出が技術的に難しいのと、連星系中では惑星はあまり形成されないであろうと言う予想も関係しています。

一方、我々MOAグループは、専用1.8m望遠鏡(図2)を用いて重力マイクロレンズ現象を利用した系外惑星の探索に取り組んできました。この現象は、アインシュタインの一般相対性理論が予言する「光が重力によって曲がる」と言う性質のために起こります。ある星(背景光源)の前を偶然別の星(レンズ天体)が横切るとレンズ天体の重力によって背景光源からの光はあたかもレンズを通ったかのように曲げられて集光し、突然明るくなった様に見えます。普通の星がレンズとなると20日程度の間に、単調に明るくなって、また同じ時間をかけて元の明るさに戻っていきます。しかし、もしこの星(主星)の周りに惑星があると、その惑星の重力の影響で単調でない増光や減光が余分に加わります(図3)。この余分な増光減光を見つける事で、そこに惑星がある事が分かり、現在までに20数個の惑星が見つかっています。

重力マイクロレンズは、百万個の星を見て1個しか起らない非常に稀な現象なので、我々MOAやOGLEと言うサーベイグループが、銀河系中心(いて座)方向の数千万個に及ぶ膨大な数の星を毎晩観測して、現在では毎年5百?2千個のマイクロレンズイベントを検出しています。今回観測されたイベントはその内の一つで、2013年3月26日にチリのOGLEグループがイベントOGLE-2013-BLG-0341として発見し、その少し後に我々MOAも独自にMOA-2013-BLG-260として発見しました。そして、OGLEとMOAの両サーベイデータに約一日の短い惑星シグナルが発見され、主星から約1天文単位の距離を2倍地球質量の惑星が回っている事が分かりました。さらに、WISEグループ、μFUNグループなど、世界各地の時間帯の異なる合計9カ所から、増光のピークを非常に高頻度で観測が行われた結果、主星は0.1-0.15倍太陽質量のM型赤色矮星※8で、これより若干重いM型赤色矮星と距離約15天文単位で連星系をなしている事が分かりました。

連星系中の惑星はこれまでに様々な物が見つかっています。連星の二つの星の外側を廻る周連星惑星は、ケプラー衛星によって7例発見されています。視線速度法によって連星系中の木星質量の惑星が2例発見されています。また、地球型惑星は4個見つかっています。しかし、これだけ距離の近い(20天文単位以下)連星で、軌道半径が地球と同じ1天文単位と連星間の距離に対して比較的大きい地球型惑星が発見されたのは初めてです。この様な惑星は伴星の影響で形成されにくいと考えられていました。この様な惑星系の検出は非常に難しいにも関わらず今回1個発見されたと言う事は、この様な惑星系が非常に一般的である事を示唆しているかもしれません。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

この惑星は、主星が暗いために生命が生存するには冷たすぎますが、もし主星が太陽程度の星だったら、液体の水が存在し、生命が存在しうる「ハビタブル」な惑星であった可能性もあります。これまで、連星系での惑星の探査は難しくあまり進んでいません。しかし、銀河系内の全ての星の半数は連星系をなしており、その中でも赤色矮星は宇宙で最も一般的な星です。今回の発見で、連星系にも地球の様な軌道の地球型惑星が存在する事が分かり、今後、地球の様なハビタブルな惑星の探査の可能性を大きく飛躍させる事につながると考えられます。特に、暗い赤色矮星で、しかも軌道半径の大きい惑星を発見するのは他の方法では難しく、マイクロレンズはこの様な惑星系に感度をもつユニークな手法で、今後多くの連星系中の地球型惑星を発見し、惑星形成の理解が深まると期待されます。

特記事項

この研究は、大阪大学、名古屋大学、京都産業大学が中心のMOAグループの他、μFUNグループ、OGLEグループ、WISEグループの共同研究で、参加する機関は以下の通り、Ohio State University, Warsaw University Observatory, Chungbuk National University, Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics, University of Cambridge, Universidad de Concepcion, Auckland Observatory, Auckland University of Technology, University of Canterbury, Texas A&M University, Korea Astronomy and Space Science Institute, Solar-Terrestrial Environment Laboratory, University of Notre Dame, Massey University, University of Auckland, National Astronomical Observatory of Japan, Osaka University, Nagano National College of Technology, Tokyo Metropolitan College of Aeronautics, Victoria University, Mt. John University Observatory, Kyoto Sangyo University, Tel-Aviv University and the University of British Columbia.

参考図

図1 発見された連星系中の惑星の想像図 (提供:Cheongho Han, Chungbuk National University, Republic of Korea)

図2 MOA-II 1.8m望遠鏡

図3 重力マイクロレンズによる系外惑星検出の概念図

用語解説

※1 MOA(モア)グループ
日本とニュージーランドの共同研究グループ。ニュージーランドMt.John 天文台で独自のMOA-II 1.8m望遠鏡を用いた重力マイクロレンズ観測をしています。

※2 連星系
二つの星が互いに重力で引き合い、その重心のまわりを互いに回り合う系。

※3 伴星
ある星と連星系をなすもう一方の星。

※4 地球型惑星
地球質量程度の岩石を主成分とする惑星。

※5 系外惑星
太陽以外の恒星の周りを回る惑星。

※6 視線速度法
惑星の公転の反動で中心にある主星はふらつく。この主星の視線方向の速度の周期的変化をスペクトル観測で精密に測定する事で惑星を発見する方法。

※7 トランジット法
惑星が主星の前を横切る時の減光を観測して惑星を発見する方法

※8 M型赤色矮星
0.1-0.5倍太陽質量の軽くて温度が低く赤い星。宇宙の星全体の70%を占める。

参考URL

大阪大学大学院理学研究科
http://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/topics/2937/
大阪大学大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻 赤外線天文学グループ
http://www-ir.ess.sci.osaka-u.ac.jp/
名古屋大学太陽地球環境研究所
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/jpn/topics/2014/07/planet-20140704.php
京都産業大学理学部
http://www.kyoto-su.ac.jp/department/sc/news/20140704_news.html
論文URL
http://www.sciencemag.org/content/345/6192/46.abstract?rss=1

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