2016年12月16日

本研究成果のポイント

・太陽系外の主星から遠い軌道を回る冷たい惑星では、海王星質量程度のものが最も多いことを発見。
・これまでの手法では遠い軌道の冷たく軽い惑星を発見する事が困難だったが、重力マイクロレンズという手法を使うことで可能に。
・今後、さらに発見数を増やし詳細な分布を見積もることで、惑星形成過程が解き明かされると期待。

概要

大阪大学大学院理学研究科の住貴宏准教授、名古屋大学宇宙地球環境研究所の阿部文雄准教授、NASAゴダード宇宙飛行センターの鈴木大介研究員を中心とするMOAグループ※1 は、天の川銀河の中心方向で発生する重力マイクロレンズ現象を観測することで、太陽以外の星の周りを回る惑星(系外惑星)のうち、特に冷たい惑星の中では海王星質量(17倍地球質量)程度の惑星が最も多いことを世界で初めて明らかにしました。まず、惑星系の外側において、海王星質量程度の惑星は、木星(318倍地球質量)のような巨大ガス惑星より10倍程度多く存在する事が分かりました。これは従来から知られている傾向をより精度よく再確認したものです。さらに本研究では、海王星よりも軽い惑星は、海王星質量程度の惑星と同程度かそれよりも少ないことが新たに分かりました。

主星近傍を回る灼熱惑星はこれまでに数千個見つかっています。しかし、惑星系の外側を回る冷たい惑星の検出は難しいため、冷たい惑星の質量分布といった、統計的な性質はよくわかっていませんでした。今回の発見は、太陽系を含めた惑星系がどのように形成されたのかを解明するための重要な手がかりとなります。

本研究成果は、米国科学誌「The Astrophysical Journal」に、日本時間12月14日(水)に公開されました。

図1 氷境界外側を回る海王星質量程度の惑星の想像図 (提供:NASA Goddard Space Flight Center / Francis Reddy)

研究の背景

1995年に初めて系外惑星が発見されて以来、数千の惑星系が見つかっています。第二の地球はあるのか、どのようにして惑星系が形成されるのか、といった疑問に答えるために、系外惑星の研究は精力的に行われています。見つかっているほとんどの惑星は、トランジット法※2 や視線速度法※3 により発見されたもので、主星近傍に軌道を持つ灼熱惑星です。主星から距離が離れると惑星表面の温度は下がっていきます。水などが凍ってしまう温度に相当する距離である氷境界※4 よりも主星から離れた冷たい惑星は氷惑星になります。このような主星から遠い惑星を、上記の方法で検出することは困難です。一方、今回の研究で用いた重力マイクロレンズ法では、氷境界より外側を回る冷たい惑星を検出することができます。

本研究グループはニュージーランドのマウントジョン天文台に設置した専用MOA-II1.8m望遠鏡を用いて、重力マイクロレンズ現象を利用した太陽系外惑星の探査を行っています。この現象は、アインシュタインの一般相対性理論が予言する「光が重力によって曲がる」という性質のために起こります。ある星(背景星)の前を偶然別の星(レンズ星)が横切るとレンズ天体の重力によって背景星からの光はあたかもレンズを通ったかのように曲げられて集光し、背景星は突然明るくなったように見えます。太陽の様な星がレンズ星となると数十日程度の間に、単調に明るくなって、また同じ時間をかけて元の明るさに戻っていきます。しかし、もしこのレンズ星(主星)の周りに惑星があると、その惑星の重力の影響で単調でない増光や減光が余分に加わります。この余分な増光減光を見つけることで、そこに惑星があることがわかります。

研究の内容

今回の研究では、2007-2012年に取得した6年間の観測データから22個の惑星を検出し、それぞれの惑星系において主星に対する惑星の質量比※5 を測定しました。さらに、統計的手法を用いることで、どのような質量比の惑星がどの程度あるのかという分布を見積もりました。重力マイクロレンズ現象を観測する国際チームがいくつかある中で、MOAグループは初めて、銀河系中心方向の数千万の星を15分に一回観測するという特殊な観測手法を実践しました。この高頻度な観測により、海王星よりも軽い惑星を検出することができ、冷たい惑星の質量比の分布を明らかにすることができました。従来は、軽い惑星ほど単調に数が増えると思われていましたが、海王星質量以下で数が減り始める事が初めて分かりました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

太陽系を含めた惑星形成過程の研究は、天文学のなかでも現在最も活発な分野のひとつです。しかし、これまで発見されている惑星は、比較的主星に近いものばかりで、外側の惑星は巨大惑星しか見つかっていませんでした。我々の太陽系がどのようにして生まれたか?一般的なものなのか?という誰もが抱く疑問に答えるに至っていません。

太陽系以外の惑星系にどのような質量の惑星がどの程度存在しているのかを観測により明らかにすること、つまり系外惑星に対する国勢調査は、我々の太陽系が普遍的なのかどうかを知るために非常に重要です。また、どのような惑星形成モデルが国勢調査の結果を最もよく説明できるかを調べることで、惑星形成過程を明らかにすることができると考えられます。

氷境界のすぐ外側では、惑星となる材料が最も多いため、惑星が最も効率よく形成される場所と考えられます。この領域に存在する冷たい惑星、特に土星(95倍地球質量)よりも軽い惑星に対する国勢調査を行えるのは、今回の研究で用いられた重力マイクロレンズ法だけです。今後の重力マイクロレンズ法を用いた観測によって、冷たい惑星の分布がより詳細に判明すると考えられます。

今回の発見は、我々の系外惑星の知識を飛躍的に広げるものと考えられます。特に、軌道半径の大きい惑星を発見するのは他の方法では難しく、マイクロレンズはこの様な惑星系に感度をもつユニークな手法で、今後さらに多く惑星を発見し、惑星形成の理解が深まると期待されます。

特記事項

本研究成果は、米国科学誌「The Astrophysical Journal」に、日本時間2016年12月14日(水)掲載されました。
タイトル:“The Exoplanet Mass-Ratio Function from the MOA-II Survey: Discovery of a Break and Likely Peak at a Neptune Mass”
著者名:D.Suzuki, D.P.Bennett, T.Sumi, et al.
doi:http://dx.doi.org/10.3847/1538-4357/833/2/145

用語解説

※1 MOA(モア)グループ
日本、ニュージーランド、米国の共同研究グループ。ニュージーランド南島のマウントジョン天文台で独自のMOA-II 1.8m 望遠鏡を用いた重力マイクロレンズ観測をしています。

※2 トランジット法
惑星が主星の前面を横切る際に発生する減光を観測して惑星を発見する方法です。

※3 視線速度法
惑星系では、主星・惑星はそれぞれ共通重心を回るため、主星はふらついているように見えます。このふらつきの視線方向の速度の周期的変化を光のドップラー効果としてスペクトル観測することで惑星を発見する方法です。

※4 氷境界
気体の水が氷に凝縮する境界。現在の太陽系では、太陽-地球の距離の2.7倍付近に氷境界があり、小惑星帯が存在します。

※5 質量比
太陽に対する木星、海王星、地球の質量比は、それぞれ約0.001、0.00005、0.000003です。

参考URL

大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻 赤外線天文学グループ
http://www-ir.ess.sci.osaka-u.ac.jp/

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