2012年5月17日

<リリース概要>

大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科 武田吉人助教・辻野和之医師らの研究グループは、テトラスパニンCD151※2タンパク質の欠損・低下により呼吸器の難病である肺線維症を発症することを発見しました。CD151を産生できないマウスは呼吸機能の低下や肺内コラーゲンの増加など、ヒト肺線維症類似の病態を呈していました。また、ヒト肺線維症患者の肺上皮細胞においてもCD151の発現低下が確認されました。

肺線維症は原因不明の難病で、現在まで有効な治療法の無い予後不良の疾患であることから、今回のCD151の機能解明は肺線維症治療標的となることが期待されます。

 

<研究の背景>

特発性肺線維症※1は慢性炎症により肺の破壊を伴って線維化(硬化)へと進行する予後不良の難病で、有効な治療法が見つかっていません。今回私たちの研究グループは、膜蛋白であるテトラスパニンCD151が肺線維症を抑制していることを発見しました。テトラスパニンCD151を産生できないマウスを解析したところ、呼吸機能の低下(25%)や肺内コラーゲンの増加など肺線維症類似の病態を呈することを見出しました。次に線維化誘導刺激である抗癌剤ブレオマイシン※3を投与すると、野生型マウスに比べて、CD151欠損マウスは著明な肺線維症に至り早期に死亡しました。そのメカニズムとして、肺上皮細胞の基底膜への接着が弱まることが肺線維症発症の原因であることを突き止めました。同時にヒト肺線維症患者の肺上皮細胞におけるCD151の発現低下も確認しました。以上のことはマウスだけでなく、ヒトにおいてもテトラスパニンCD151が肺線維症を抑制していることを示唆するものです。

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図 CD151欠損マウスは野生型マウスに比べ肺内コラーゲンが増加し(上段)、無刺激で週令とともに呼吸機能が低下(肺線維症)を認めた。

 

<本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)>

今回我々は、テトラスパニンCD151欠損マウスが数少ないヒトに類似した肺線維症モデル動物であることを見出しました。本マウスは数少ない肺線維症モデル動物として薬効評価に活用できるだけでなく、肺線維症のメカニズム解明や新たな治療ターゲット(抗線維化薬)として創薬の対象になることが期待されます。すなわちCD151の発現を増加させる薬剤を開発すれば、難病である肺線維症の治療に繋がることを示唆するものであります。さらに臓器線維化(硬化)は肺のみならず、心臓(心筋線維化)、肝臓(肝硬変)、皮膚(強皮症)、腎臓(腎硬化症)など多くの臓器に機能不全を来すことから、線維化の病態解明という観点からも本研究成果の知見の応用範囲は広いと考えます。

 

<用語解説>

※1 特発性肺線維症
特発性肺線維症は慢性炎症による肺の破壊を伴って線維化へと進行する予後不良の難病です。現在日本では潜在患者も含めて1万数千人の患者がいると推定されています。詳細なメカニズムが不明で、有効な治療法も確立していないため、平均生存期間は約2-5年で多くの患者は呼吸不全や肺癌にて死亡されます。1989年には、歌手の美空ひばりがこの病因により、52歳の若さで亡くなった事でも有名な病気です。現在まで世界中で線維化(肺線維症、腎硬化、肝硬変)の研究が精力的に行われていますが、有効な治療法や病態が解明されていません。

※2 テトラスパニン CD151
テトラスパニンはインテグリンなどの接着分子を細胞膜上の微小領域に配置するまとめ役として働くことで細胞の機能(運動、活性化、増殖)を調節する細胞膜4回貫通型蛋白ファミリーです。ヒトではCD9, CD81, CD63を含めて34種類報告されていますが、十分な機能解明が進んでいません。

※3 抗癌剤ブレオマイシン
抗癌剤の副作用として肺線維症をきたすことから、肺線維症誘導刺激として最も汎用される薬剤です。

 

<参考URL>

http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_8/index.html

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