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  • 心不全について知っておくべき2つのこと

    心不全について知っておくべき2つのこと

    医学系研究科・教授・坂田 泰史

    身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。
  • 「学者の使命」 猛威を振るうウイルスとの対峙

    「学者の使命」 猛威を振るうウイルスとの対峙

    微生物病研究所・教授・松浦 善治

    海水1ccの中に、菌やウイルスは一千万種類いるといわれる。9割9分は無害だ。 しかし、ほんの一部の菌やウイルスは、感染した生物との相性で時に鋭い牙を剥く。新たな感染症の猛威は、人類に対してグローバルな社会の課題を突き付けた。世界保健機関(WHO)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に立ち向かうべく、いま世界中で160を超えるワクチン開発プロジェクトが進む。大阪大学では、微生物病研究所(以下、微研)や医学系研究科を中心に複数のプロジェクトが走る。微研の松浦善治教授もそれに関わる一人だ。ウイルス学者としての矜持が、ワクチン開発へと駆り立てる。
  • 魚よりゴミが多い未来の海に一手

    魚よりゴミが多い未来の海に一手

    工学研究科・教授・宇山 浩

    新型コロナウイルスの流行が、プラスチックごみの削減にマイナスに働いている。持ち帰り用の食品容器や包装、使い捨ての不織布マスク――。感染拡大を防ぐため、こうしたプラスチック製品への依存は高まるばかりだ。だが、プラスチックごみが海などの生態系を脅かす存在であることに変わりはない。大阪大学大学院工学研究科の宇山浩教授らの研究グループは今年3月、海で分解される新たなプラスチックの開発に成功したと発表した。新型コロナ時代の今、研究の重要性がさらに増している。
  • 始まりは革新的酸化剤との出会い。感染制御、エネルギー問題の解決策へと夢果てしなく

    始まりは革新的酸化剤との出会い。感染制御、エネルギー問題の解決策へと夢果てしなく

    薬学研究科・教授・井上 豪

    ある除菌消臭剤が作用するメカニズムを調べてほしい―。 大阪大学に2015年に寄せられた1件の相談が、産学共創の大きな研究プロジェクトに発展した。阪大を中心にコンソーシアムが設置され、新型コロナウイルスなどの感染防止への活用や、このメカニズム解析から派生したメタンガスからメタノールを高い収率で安価に生成する技術の確立など他分野への応用も複数進んでいる。
  • 素粒子を紐解き、宇宙を知る

    素粒子を紐解き、宇宙を知る

    理学研究科・教授・橋本幸士

    日本人として初めてノーベル賞に輝いた湯川秀樹博士は大阪帝国大学理学部講師だった1934年、「中間子」の存在を予想し、「素粒子の相互作用について」とする論文を発表した。原子や、それより小さい素粒子は「量子」と呼ばれ、粒子のようにも、波のようにも振る舞う不思議な性質を持っている。そうした極微の世界を扱う「量子力学」は当時、誕生したばかりで、世界中の学者が研究にしのぎを削っていた。湯川博士は、既に存在が知られていた電子や陽子、中性子といった原子核の構成要素に加え、中間子という存在を仮定することで、原子核がバラバラにならないように結び付ける力の正体を説明したのだ。画期的なアイデアで、1949年のノーベル賞につながった。戦後疲弊していた人々を勇気づけたほか、多くの若者を素粒子研究に呼び寄せ、この分野で日本が重要な役割を果たすきっかけともなった。とはいえ人間の目には見えない極微の世界。現代の研究では、「超ひも理論」「異次元空間」など日常生活の常識とはかけ離れた考え方も登場し、それが実は宇宙の成り立ちにもかかわってくるという。理解するのはなかなか難しい。そこで大阪大学理学研究科の橋本幸士教授(素粒子論)に「そもそも素粒子物理学ってなに?」を説明してもらった。
  • あなたを守る究極の暗号。量子インターネットがもたらすもの。

    あなたを守る究極の暗号。量子インターネットがもたらすもの。

    基礎工学研究科・教授・山本俊

    最新鋭のスーパーコンピュータで1万年かかる計算を、量子コンピュータがわずか200秒で解いてしまった――。2019年10月、世界を驚きのニュースが駆け巡った。気候変動のシミュレーションや新薬の開発など応用にも期待を集める夢のコンピュータ。人類の可能性を飛躍的に高める技術だが、大阪大学大学院基礎工学研究科の山本俊教授(量子情報・量子光学)は「万能な量子コンピュータが登場して一番困るのは通信の秘密が守れなくなることです。現代人は大切な情報がインターネットで飛び交っていても、暗号化されているので大丈夫と思っていますが、未来の人間には簡単に解読できるナマの情報が流れているように見えるかもしれません」と警告する。キャッシュカードの暗証番号を、はがきで連絡しているイメージか。では通信のセキュリティを保つにはどうすればいいのか。答えは「量子コンピュータへの対抗策が量子ネットワーク」だという。量子をもって量子を制するその極意とは?
  • SFだった“量子コンピュータ”は、もう実現している。

    SFだった“量子コンピュータ”は、もう実現している。

    基礎工学研究科・教授・藤井啓祐

    現代のコンピュータは多くの人の目に「万能」と映っているかもしれない。「人工知能=AI」は人間より正確で安全な車の自動運転を近い将来に実現し、将棋や囲碁、チェスなどゲームの世界では、既に人間より強いソフトが登場している。人間が一生かかっても不可能な計算も、ノートパソコンなら瞬時に終わる。しかし宇宙的スケールで考えた時、今のコンピュータがどこまで進化しても手の届かない謎は際限なく残るだろう。近未来の「超コンピュータ」として、量子コンピュータへの期待が高まっている。この分野で世界の最前線を走る研究者の一人、大阪大学大学院基礎工学研究科の藤井啓祐教授の目に映る量子コンピュータの現在地と未来について聞いた。
  • 社会の思考を深め、科学・医療を前に進める。

    社会の思考を深め、科学・医療を前に進める。

    医学系研究科・教授・加藤和人

    ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)などから作成した組織や臓器を患者に移植し、損なわれた機能の回復を図るのが「再生医療」の狙いだ。生命科学の進歩が扉を開いた「夢の医学」だが、将来はヒトの精子や卵子をつくることも可能になるかもしれない。また近年では遺伝子をピンポイントで改変できる「ゲノム編集」の発達が目覚ましい。難病治療などに大きな期待が寄せられる半面、親が望む容姿を持たせた「デザイナーベビー」の誕生も絵空事ではなくなっている。人類の福音となり得る先端医療も、一歩誤まれば私たちの生命観・倫理観を根底から覆す危険性を秘めている。何が許され、何が許されないのか。医師・研究者だけでなく、社会全体で幅広く考えていくべき課題だ。大阪大学医学系研究科の加藤和人教授(医の倫理と公共政策学)は、医師や生命科学研究者と、人文社会科学系の研究者の世界を行き来しながら、「上からの一方的な規制ではなく、ボトムアップ型の研究ガバナンス」の実現を目指している。