自然科学系

2020年10月8日

概要

大阪大学レーザー科学研究所の村上匡且教授率いる日米欧の国際共同研究チームは、ミクロンサイズの中空円筒体に強力な超短パルスレーザーを照射することにより、現在地上で生成可能な磁場強度(キロテスラ※1)のさらに千倍強力なメガテスラ※1の極超高磁場を生成させる新たな物理機構を世界で初めて発見し、スーパーコンピューターを使った数値実験での原理実証に成功しました。

従来の高強磁場発生の手法とは全く異なる原理に基づく今回の発見により、極超高磁場下の量子物性研究や、新たな粒子加速方式の開発、更には超コンパクト核融合閉じ込め装置など多岐に渡る基礎・応用研究へと発展することが期待されます。

図1 新原理「マイクロチューブ爆縮」の概念図

研究の背景

磁場は現代物理学における最も基本的な概念の一つであると同時に、常に科学技術の最先端を切り開いてきた物理要素でもあります。身近な例で磁場強度を比較すると、地磁気は0.3〜0.5ガウス、磁気ネックレスは0.1テスラ(=1千ガウス)、病院で使われる磁気断層写真(MRI)では約1テスラ(=1万ガウス)、将来のエネルギー源である磁場核融合やリニアモーターカーではキロテスラ(=1千万ガウス)が必要とされています。こうして、高強度磁場を生成させることで医療・エネルギー・産業といった様々な応用が我々の実生活に寄与してきました。過去半世紀以上に渡って様々な方式を使った磁場強度の増強が追求されてきましたが、これまで人類が地上で実現した最大の磁場強度は1〜2キロテスラでありこの壁を未だ超えるに至っていません。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

メガテスラという極超高強磁場に関して今回発見された物理機構に基づき、今後、これまで議論の俎上にさえ載らなかったような量子電磁力学(QED)効果や極限パラメータ下での物性研究、さらには中性子星やブラックホール近傍において予測されているメガテスラ磁場に関連した宇宙物理など、未踏の研究領域に対する実験室での能動的な基礎研究が展開できることになり、基礎科学に対する大きなインパクトが見込まれます。キロテスラを更に千倍上回るメガテスラ(百億ガウス)級の極超高磁場が地上で実現されれば、前人未踏の基礎科学分野の開拓・発展と共に多岐に渡る応用も視野に入ってきます。今回の発見により、今後、世界の大型レーザー施設を使った極超高磁場生成に関する基礎・応用研究に大きな弾みがつくものと予想されます。

特記事項

本成果は、総合科学誌として世界トップの権威を持つネイチャー・リサーチ社が刊行するオープンアクセス学術誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載されました。
オンライン URL: https://doi.org/10.1038/s41598-020-73581-4

用語解説

※1 テスラ
「テスラ」は磁場強度を表す単位で記号Tで表す。1キロテスラ=1,000T、1メガテスラ=1,000,000T。また比較的弱い磁場強度をあらわす場合の単位として「ガウス」(記号G)が用いられ、1T=10,000Gの関係がある。

参考URL

レーザー科学研究所 村上研究室HP
https://www.ile.osaka-u.ac.jp/research/csn/

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