2019年10月16日

研究成果のポイント

・動作中の金ナノギャップ電極において、電極表面の構造が原子スケールで連続的に変化する現象を初めて可視化した。
・高い空間分解能と時間分解能を有する環境制御型透過電子顕微鏡によるその場観察により、ナノギャップ電極におけるトンネル電子とガス分子との反応メカニズムを解明した。
・様々なガスや電極材料を選択することで、電子を利用した新たなナノ材料の開発が期待される。

概要

大阪大学産業科学研究所の麻生亮太郎助教、大学院生の小川洋平さん(博士前期課程)、玉岡武泰さん(博士後期課程)、吉田秀人准教授、竹田精治教授(研究当時)らの研究グループは、動作中の金ナノギャップ電極※1表面の構造が原子スケールで連続的に変化する現象を世界で初めて明らかにしました。

金は化学的に不活性な金属であり電極材料として広く利用されてきましたが、実際に動作中の電極表面の原子スケールの構造はこれまで明らかにされていませんでした。

今回、麻生助教らの研究グループは、環境制御型透過電子顕微鏡※2内で金ナノギャップ電極に電圧を印加し酸素ガスを導入することで、正極先端の結晶構造が乱れることを世界で初めて明らかにしました(図1)。電圧印加を止めることで元の結晶構造に戻すことが可能であり、これはナノスケールで構造を制御できるということを示しています。

さらにナノギャップ間を金原子が移動する様子をその場で可視化することに成功し、その連続的に変化する構造が金の酸化物であることを解明しました。この研究成果は、ナノギャップ電極におけるトンネル電子※3とガス分子との反応メカニズムの解明と、新たなナノ材料の開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、ドイツ科学誌「Angewandte Chemie InternationalEdition」に、2019年9月4日(水)に公開されました。

図1 ナノギャップ電極のガス反応モデル

研究の背景

これまで、固体表面の構造は電子励起※4によって変化することが知られており、その反応メカニズムを解明する試みが多くなされてきていました。しかし、実際に動作中の電極表面における反応を実時間、実空間、実環境で観察(その場観察)することは困難でした。

麻生助教らの研究グループでは、高い空間分解能※5と時間分解能※6を有する環境制御型透過電子顕微鏡を用いることにより、動作中の金ナノギャップ電極表面の原子スケールの構造変化をその場観察で捉えることに成功しました。酸素ガス中において電圧印加に伴う電極表面の結晶構造の変化を初めて明らかにし、この現象がトンネル電子とガス分子との反応によって引き起こされることを解明しました。さらに、ナノギャップ間を金原子が移動する様子をその場で可視化することに成功し、その連続的に変化する構造が金の酸化物であることを解明しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、ナノギャップ電極におけるトンネル電子とガス分子との反応メカニズムが解明され、この反応を利用した新たなナノ材料の開発に繋がると期待されます。

特記事項

本研究成果は、2019年9月4日(水)にドイツ科学誌「AngewandteChemie International Edition」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Visualizing Progressive Atomic Change in the Metal Surface Structure Made by Ultrafast Electronic Interactions inan Ambient Environment”
著者名:Ryotaro Aso, Yohei Ogawa, Takehiro Tamaoka, Hideto Yoshida and Seiji Takeda

なお、本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費(Grant Numbers:25246003, 16H02074, 15K17468, 19K15446)、および文部科学省の「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行われました。

用語解説

※1 ナノギャップ電極
二つの金属電極がナノスケールの空隙(ナノギャップ)を介して向かい合わせになった電極。

※2 環境制御型透過電子顕微鏡
試料周囲にのみガスを導入して試料をその場観察できる透過電子顕微鏡。

※3 トンネル電子
電子のような微細な粒子が、古典力学では乗り越えることができないポテンシャル障壁を量子効果により通り抜けてしまう現象をトンネル効果と呼び、その電子をトンネル電子と呼ぶ。

※4 電子励起
光や熱や電場などにより、電子が外部からエネルギーを受け取ることで高いエネルギーをもった状態へ遷移(移動)すること。

※5 空間分解能
位置的に接近した2点を独立した2点として見分けるときの最短距離。

※6 時間分解能
画像を取得するときの最短時間間隔。

参考URL

大阪大学 産業科学研究所 産業科学ナノテクノロジーセンター ナノ構造・機能評価研究分野
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/nnf/index.html

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