工学系

2019年7月26日

研究成果のポイント

・新しいレーザー光である自由電子レーザー※1を用いることで、これまでのレーザー照射による最小加工サイズの記録を大きく更新。
・一般の近赤外レーザーとは波長の大きく異なる遠赤外FELを用いることで従来では困難だった詳細な実験が可能となり、従来の変化機構のモデルでは説明不可能な加工サイズに到達することがわかった。
・本研究成果を起点にレーザーによる材料加工技術・理論の新しい領域を開拓することで、材料特性の高度化やデバイス開発技術の発展に大きく貢献できる可能性がある。

概要

大阪大学産業科学研究所入澤明典助教、菅滋正招へい教授と、摂南大学、京都大学先端ビームナノ科学センターの共同研究グループは、大阪大学産業科学研究所内の遠赤外・テラヘルツ自由電子レーザーを用いて回折限界※2を大きく超えた、波長の1/25のサイズの縞状構造(レーザー誘起周期表面構造(LIPSS))※3を半導体シリコン表面に制御加工することに世界で初めて成功しました。これは、従来のモデルでは説明できないサイズであり、新たなメカニズムの解明が必要です。

今回の成果を起点に、新しいレーザー加工技術・理論が展開され、様々な材料加工に応用されることが期待されます。

本研究成果は、米国物理学協会の速報雑誌「Applied Physics Letters」に、2017年12月18日に公開されました。

図1 THz-FELを半導体シリコン表面に照射することで形成された超微細構造(LIPSS)の実体顕微鏡像

研究の背景

これまで、LIPSSは近赤外線フェムト秒レーザーを用いてのみ研究がされており、波長の半分弱程度までの構造形成に成功し、いくつかの構造形成モデルが提唱されてきましたが、完全には解明されていませんでした。

今回、入澤助教らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所の遠赤外自由電子レーザーを半導体シリコン表面に用いて初めて波長の1/25に及ぶ微細構造を系統的に形成・制御することに成功しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果を起点として新たなレーザー加工メカニズムの解明が実現すれば、新しい領域での材料加工が可能となり、デバイス開発などの分野で大きく社会に貢献できると期待されます。

特記事項

本研究成果は、米国物理学協会の速報雑誌「Applied Physics Letters」に、2017年12月18日に公開されました。
タイトル:“Laser-induced fine structures on silicon exposed to THz-FEL”
著者名:Akinori Irizawa, Shigemasa Suga, Takeshi Nagashima, Atsushi Higashiya, Masaki Hashida, and Shuji Sakabe

なお、本研究は、JSPS KAKENHI Grant No. JP17K18989, research program “Dynamic Alliance for Open Innovation Bridging Human, Environment and Materials”, Executive Program of Cooperation in The Field of Science and Technology between The Government of Italy and The Government of Japan(2017–2019)の助成を得て行われました。

研究者のコメント

この研究は、ある意味目的の実験をやり過ぎた(強すぎるレーザー光照射をした)おかげで、目的と異なった結果から発展しました。そのため失敗実験の試料としてしばらく検証してなかったのですが、実際に観測すると非常に面白いことに気がついたという経緯があります。何でも観察する、思い込まない、ということが科学では非常に大切だと改めて感じた研究の一つです。

用語解説

※1 自由電子レーザー(FEL;Free Electron Laser)
光速に近い速度まで加速された電子(自由電子)が蛇行するときに発生する放射光を元にしたレーザー。自由電子の蛇行具合により波長を自由に変えることができます。

※2 回折限界
理想的なレンズを用いても光は、あるサイズ以下に絞ることができません。この光を集めることのできる最小サイズがだいたい波長程度で、これを回折限界といいます。これにより、顕微鏡や望遠鏡でも観察映像の分解能には限界があります。

※3 レーザー誘起周期表面構造(LIPSS;Laser Induced Periodic Surface Structure)
光の波の振動方向が揃った直線偏光のレーザーを物質に当てたときに、回折限界を超えた周期間隔の構造が物質表面にできる現象。偏光方向によって周期構造の方向が変わったり、レーザー波長によって周期構造の間隔が変わる。このため、単なるレーザー加熱効果だけでは無い非熱的な現象としてその発生原理に興味が持たれていますが、未だ明らかになっていません。

参考URL

大阪大学 産業科学研究所 量子ビーム物理研究分野
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bmp/index_J.html

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