2019年7月12日

研究成果のポイント

・仏日の国際協力により、世界を代表する高強度レーザー施設を相補的に使った実験を行いました。
・水を主成分とする惑星模擬試料をレーザーで圧縮したところ、光を反射する金属状態になりました。また、試料が炭素を含む場合に反射率が上昇することがわかりました。
・天王星や海王星の強い磁場は、このような金属的な流体中の電流が起源だと考えられます。

概要

太陽系の惑星のうち最も外側にある天王星と海王星は、水を主な成分としており、そこに炭素や窒素を含む分子(メタンやアンモニア)が少し混じっていると考えられています。これらの惑星は、地球の数十倍の強さの磁場をつくる源を内部に持っていますが、その発生のメカニズムは大きな謎でした。岡山大学惑星物質研究所の奥地拓生准教授、大阪大学大学院工学研究科の尾崎典雅准教授らの研究グループは、仏日を代表する二つの高強度レーザー施設を相補的に使って、この謎を解くための実験を行いました。実験では、水を主成分として、炭素や窒素を含む三種類の液体を混合した試料を、レーザーを使って強く圧縮しました。この手法で300万気圧に達する惑星内部の圧力をうまく発生できるのですが、それはナノ秒という短い時間しか維持されません。独自の計測技術により、液体試料の性質をこの短時間のうちに計測したところ、それらは光を反射する金属の状態になっていました。また、炭素を含む場合に反射率は顕著に上昇しました。この結果から、惑星内部にある磁場の源が“金属の水”に流れる電流であり、そこに含まれるメタンが分解して生成した炭素イオンが水の性質に影響を与えていることがわかりました。

本研究成果は7月12日英国時間午前10時(日本時間12日午後6時)に、英国の学術誌「Scientific Reports」のOnline Publicationとして掲載されました。

研究の背景

太陽系の惑星のうち最も外側にある天王星と海王星は、地球のほぼ4倍の大きさと、15~17倍の質量を持つ巨大な天体です(図1)。これらの“氷惑星”とよばれる天体の主成分は、水に少し炭素と窒素が混じったものです。惑星が巨大であるために、その内部は高い温度と圧力の世界となっています。1980年代に天王星と海王星に相次いで到達したNASAの探査機・ボイジャー2号の活躍によって、これらの氷惑星が、地球の数十倍の強さの磁場を発生する源を内部に持っていることが明らかにされました。このような強い磁場が作られるためには、氷惑星の内部を強い電流が流れ続けることが必要です。しかし、氷惑星の主成分である水が、電気をあまり通さない物質であることから、惑星内部に強い電流が流れることには無理があると考えられてきました。このように、氷惑星の磁場の存在は、ボイジャー到達後、長年にわたって残されてきた謎でした。

図1 ボイジャー2号により撮影された天王星(左)と海王星(右)の写真。
ともに地球の約4倍の直径を持つ巨大な惑星です。比較のために地球の大きさを併せて示しています。

研究成果の内容

私たちはフランスおよび日本において、それぞれ世界を代表する高強度レーザー施設を相補的に用い、巨大氷惑星の磁場の起源を明らかにする実験を行いました(図2)。今回の実験では、水を主成分とした3種類の惑星模擬溶液の試料を準備しました。3種類の内訳は、純粋な水、炭素成分を少し含む水溶液、および炭素および窒素成分を少し含む水溶液です。各試料をそれぞれ専用の容器に封入した後に、そこに高強度レーザーを照射するというレーザーショック圧縮※1の手法によって、試料を容器ごと圧縮しました。その結果、約300万気圧という惑星内部の実際の圧力を達成することができました。ただし、この手法によってつくり出される巨大な圧力は、10億分の1秒の程度(ナノ秒)の、非常に短い時間でしか維持することができません。つまり、この短い時間に水溶液の性質を調べる実験を急いで終わらせることができなければ、実験は無駄になってしまいます。

本研究を実施した国際的な研究グループでは、このような一瞬の間に、物質の性質を詳しく調べる方法を開発してきました。レーザーショック圧縮のタイミングを合わせて、計測用のレーザーを試料にあて、ドップラーシフト※2して反射してくる光の強さを高速度カメラで撮影することで、水溶液の圧力、密度、温度および反射率などの性質をまとめて計測しました。その結果、3種類の水溶液は、いずれも光を強く反射する状態へと一瞬のうちに変化することがわかりました。計測用レーザーの光を強く反射する現象は、調べている物質が金属状態になった場合に起こります。物質中で電気伝導が起こりやすくなるほど、光の反射率も上昇します。興味深いことに、試料の水溶液が炭素を含む場合には、純粋な水の場合と比べて、光の反射率が顕著に高くなりました(図3)

水を主成分とする金属的な流体中を、強い電流が流れていることが実証されたことにより、氷惑星の磁場の起源を明らかにすることができました。

図2 今回の実験に利用した、二つの国を代表する大型レーザー施設。
左がフランス・エコールポリテクニークのLULI2000レーザーで、右が大阪大学の激光XII号レーザー。

図3 混合液体からの光の反射率。
赤外(1064ナノメートル)と可視(532ナノメートル)の光を使って測定しました。ともに、純粋な水に比べて顕著に高い結果が得られました。

社会的な意義

昨年5月に倉敷市にてアジア初となる「実験室宇宙物理学に関する国際会議」が開催され、この分野の研究者が世界から集まりました。会議開催の経緯や現地の様子が同時期の新聞の記事として報告されています。惑星の内部の研究は会議の重要な議題の一つであり、今回の論文を共同で執筆した研究者もここに参集して複数の研究発表を行い、活発に議論を進めました。新聞記事をきっかけとして、新たな地域交流も生まれています。地球、惑星、宇宙の謎について、今後も岡山から世界への発信を行い、それをきっかけとした地域交流をさらに深めながら、楽しく研究を進めていきたいと思います。

研究者からのひとこと(奥地准教授)

惑星のことを知りたいという気持ちには国境がありませんでした。アイディアを駆使すれば、45億kmも離れた惑星の内部を地球で調べられることに、学生たちも興奮していました。日本と欧州のたくさんの国の人たちと一緒に、同じ目標の研究をすることができて、とても楽しかったです。

特記事項

論文名:Laser-driven shock compression of "synthetic planetary mixtures" of water, ethanol, and ammonia
掲載紙:Scientific Reports
著者:Marco Guarguaglini, Jean-Alexis Hernandez, Takuo Okuchi, Patrice Barroso, Alessandra Benuzzi-Mounaix, Mandy Bethkenhagen, Riccardo Bolis, Erik Brambrink, Martin French, Yohei Fujimoto, Ryosuke Kodama, Michel Koenig, Frederic Lefevre, Kohei Miyanishi, Norimasa Ozaki, Ronald Redmer, Takayoshi Sano, Yuhei Umeda, Tommaso Vinci, and Alessandra Ravasio
DOI:10.1038/s41598-019-46561-6
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-46561-6

本研究の結果は、日本学術振興会の研究拠点形成事業「X線自由電子レーザーとパワーレーザーによる極限物質科学国際アライアンス」、大阪大学国際共同研究促進プログラム、フランス国立研究機構(ANR)、ドイツ研究振興協会(DFG)の支援を受けて得られたものです。

用語説明

※1 レーザーショック圧縮
高強度レーザーをあてて物質を瞬間的に圧縮する方法。物質の温度もあわせて上昇するために、通常は極めて実現しにくい高温高圧の状態を作りだすことができる。ただし、その後に物質が壊れて飛び散ってしまうまでに、すべての実験を終わらせる必要がある。

※2 ドップラーシフト
救急車のサイレンの音の高さ(周波数)は、近づいてくるときと遠ざかるときで異なる。このように、波の周波数が出てくる場所の速度に従って移動(シフト)すること。レーザー光も波であることから、それが反射するときには同じ現象が起こる。

参考URL

大阪大学 大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻 電気電子システム工学部門 先進電磁エネルギー工学講座 高エネルギー密度工学領域 兒玉研究室
http://www.eie.eng.osaka-u.ac.jp/ef/index.html

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