工学系

2019年4月16日

研究成果のポイント

・全世界で普及している安価なCPUボード・ラズベリーパイ※1と組み合わせて簡単に利用可能な、5つの眼(レンズ)をもつ複眼カメラ※2PiTOMBO(パイトンボ)を開発。
・多様な多次元撮影を1ショットで実現可能な複眼カメラは、様々な用途での活用を期待されているが、イメージセンサに対して専用の複眼光学系を組み合わせる必要があるため、一般の利用者が容易に採用できないという課題があった。
・開発したPiTOMBOは5眼構造で、5つの異なる光学特性の撮影を同時に実現でき、5つの異なる分光波長のマルチスペクトル撮影※3、5つの異なる偏光角のマルチ偏光撮影※4などが可能に。
・ICT化が進む農業分野、生体計測、小型軽量性を活かしドローン搭載による空撮計測などに期待。

概要

大阪大学大学院情報科学研究科の谷田純教授と株式会社アサヒ電子研究所の共同研究グループは、全世界で普及している安価なCPUボード・ラズベリーパイと組み合わせて利用可能な5つの眼(レンズ)をもつ複眼カメラPiTOMBO(パイトンボ)を開発しました。
これにより、複眼カメラ利用の敷居を一気に下げて応用範囲の裾野を拡大することができ、様々な分野での実用化加速が期待できます。(図1)

今回の開発では、谷田教授発案の複眼カメラTOMBOを、ラズベリーパイ専用カメラであるPiCAMERAベースで実現しました。
開発に当たって、PiCAMERA用レンズを置換する小型の5眼複眼光学系を新規開発するとともに、多目的での利用を想定して光学系の取り付け調整機構とフィルタ交換機構を実装しました。(図2)
研究グループは、同カメラをPiTOMBO(パイトンボ)と名付け、ラズベリーパイ基板と組み合わせて利用可能とすることで、複眼カメラの普及を狙います。(図3)
今回開発したPiTOMBOは5つのレンズをもつ5眼構成で、5眼それぞれに異なる特性の分光フィルタを組み合わせることで小型のマルチスペクトルカメラや、偏光角が異なる偏光フィルタとの組み合わせによるマルチ偏光カメラなどの多次元カメラを容易に作製することができます。

今後、PiTOMBOの製造は株式会社アサヒ電子研究所が行い、本年夏以降の販売を目指します。
大阪大学ではこれまでの複眼カメラ応用研究において積極的にPiTOMBOを活用することで、複眼カメラ技術の社会実装を加速させ、特にICT化が進む農業分野、生体計測分野、小型軽量性を活かしたドローンとの組合せ活用を狙います。

図1 マルチスペクトルPiTOMBOによる植物撮影例
異なる4波長の近赤外画像とRGB画像の5眼画像が1ショットで撮影される

図2 PiTOMBO(パイトンボ)の外観
5眼マルチスペクトル複眼カメラの実例
外形:25mmx24mmx6mm(突起部含まず)
写真点線内側に5つの複眼レンズと5種類の分光フィルタが配置されている

図3 ラズベリーパイ基板(最下層基板)とPiTOMBOの利用風景、マルチ偏光複眼カメラの実例

研究の背景

複眼カメラは昆虫の複眼に触発され考案されたカメラで、1つのイメージセンサ上に複数のレンズを並べることで構成されます。異なる撮影条件の複数台カメラによる撮影を1つのカメラで実現することが出来ます。
複眼カメラは、特別な複眼光学系をカメラの主要要素であるイメージセンサの間近に直接配置しなければならず、一般のカメラのように市販レンズと組み合わせて簡単に利用できませんでした。そのため、様々な分野での応用が期待されているにもかかわらず、複眼カメラの特性を活かした撮影を行いたいユーザーが簡単に独自利用できず、実用化には至っていませんでした。(図4)

図4 マルチスペクトル複眼カメラの断面構造図

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

前述したとおり、今回、教育用・組み込みシステム用シングルボードコンピュータのラズベリーパイと組み合わせて利用可能なPiTOMBOを開発したことで、複眼カメラ利用の敷居を一気に下げて応用範囲の裾野を拡大することができ、様々な分野での実用化加速が期待できます。
特にマルチスペクトル撮影用途では、5波長のマルチスペクトル撮影~データ蓄積~画像処理までを手のひらサイズ環境で実現可能となり、実用レベルでの応用展開が容易となります。

研究者のコメント

PiTOMBOは、ラズベリーパイ用の小型のカメラを複眼カメラ化することによって実現されていますが、1.2mm角程度の超小型カメラが5つ集合した構造になっています。そのためレンズやフィルタの配置や調整には高精度を要求されますが、独自の構造によって実現可能となり、多くのラズベリーパイユーザーに複眼カメラを提供できるようになりました。PiTOMBOによって、複眼カメラユーザーの裾野が広がり、様々な用途に活用されることを願っています。

特記事項

本研究成果を展示会OPIE2019(会期:4/24(水)~26(金)、会場:パシフィコ横浜)における(株)アサヒ電子研究所ブース(ブース番号:J-18)に出展し、マルチスペクトル撮影とマルチ偏光撮影を実演します。

用語説明

※1 ラズベリーパイ
イギリスのラズベリーパイ財団によって開発されている教育用ワンボードコンピュータ。小型かつ高い可用性により、プロトタイプ開発や組み込みシステム用途など幅広い分野で活用されている。

※2 複眼カメラ
昆虫など視覚器官である複眼を模倣したカメラ。独立した複数台カメラを組み合わせる方式と一台のカメラに複数の結像光学系を装着する方法があり、多様な物体情報を取得することができる。

※3 マルチスペクトル撮影
複数の波長バンドを同時に取得する撮影方式。被写体情報はスペクトル信号として観測できるため、青、緑、赤の3波長バンドが用いられる通常のカラーカメラより精密な被写体計測が可能になる。

※4 マルチ偏光撮影
複数の偏光信号を同時に取得する撮影方式。通常のカメラでは偏光フィルタを装着して撮影しなければならない。被写体表面の向きや拡散状態などを観測することができる。

参考URL

大阪大学 大学院情報科学研究科 情報フォトニクス講座 谷田研究室
http://www-lip.ist.osaka-u.ac.jp/index.html

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