生命科学・医学系

2019年2月22日

研究成果のポイント

・がん患者さんの血液中のTリンパ球活性を測定する方法を開発し、この方法が抗PD-1抗体の治療効果予測につながることを示唆する結果を得た。
・抗PD-1抗体治療で鍵となるTリンパ球の活性を、患者さんに比較的負担の少ない方法である血液を用いた検査で測定する診断方法を見出した。
・この方法を用いることで、あらかじめ抗PD-1抗体治療の効果が期待できる患者さんかどうかを把握し、患者さんにとって最適な治療選択につながることが期待される。

概要

大阪大学大学院医学系研究科の岩堀幸太特任講師(常勤)、和田尚特任教授(常勤)(臨床腫瘍免疫学共同研究講座)、新谷康准教授(呼吸器外科学)、熊ノ郷淳教授(呼吸器・免疫内科学)らの研究グループは、抗PD-1抗体の治療効果を予測する診断方法として、がん患者さんの血液中のTリンパ球活性を測定する方法を開発しました(図1)

近年、抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法の有効性が明らかになり、様々ながんに適応が広がるとともに新たな免疫チェックポイント阻害剤の開発も進んでいます。しかしながら、すべての患者さんに免疫チェックポイント阻害剤の効果がみられるというわけではないため、効果が期待できる患者さんかどうかを治療前に把握することは重要と考えられます。

今回、研究グループは、Tリンパ球とがん細胞株※1の両方に結合する分子を用いて、非小細胞肺癌患者さんの血液中のTリンパ球のがん細胞株に対する傷害活性を測定することにより、抗PD-1抗体の治療効果を予測できる可能性を見出しました(図1)。これにより、あらかじめ抗PD-1抗体治療の効果が期待できる患者さんかどうかを把握することができ、患者さんにとって最適な治療選択につながることが期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、2月22日(金)午後7時(日本時間)に公開されました。

図1 新規に開発したTリンパ球活性を測定する方法
Tリンパ球とがん細胞株の両方に結合する分子を用いて、Tリンパ球のがん細胞株に対する傷害活性を測定する。

研究の背景

近年、免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法の有効性が明らかになっていますが、すべての患者さんにその治療効果がみられるというわけではないため、効果が期待できる患者さんかどうかを治療前に把握することは重要と考えられます。これまで抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法の治療効果予測方法について様々な研究が行われており、特に患者さんに比較的負担の少ない血液を用いた診断法の開発が望まれています。

本研究の成果

まず、抗PD-1抗体治療で鍵となるTリンパ球の活性を測定するために、Tリンパ球とがん細胞株の両方に結合する分子を用いて、Tリンパ球のがん細胞株に対する傷害活性を測定する方法を開発しました(図1)。この方法を用いて、非小細胞肺癌患者さんの血液およびがん組織内のTリンパ球活性をそれぞれ測定した結果、両者に相関関係がみられ、がん組織内のTリンパ球活性が高い患者さんは血液中のTリンパ球活性も高い傾向がみられました。そこで、少数の患者さんについてですが、抗PD-1抗体治療を受ける非小細胞肺癌患者さんを対象に、治療前の血液中のTリンパ球活性をこの方法を用いて測定しました。その結果、治療前の血液中のTリンパ球活性が高い患者さんは、抗PD-1抗体の治療効果がみられ、長期間治療を継続できる傾向がみられました。このことから、本手法を用いた血液中のTリンパ球活性測定が、抗PD-1抗体の治療効果予測診断法となる可能性が示唆されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果から、がん患者さんの血液中のTリンパ球活性を測定することにより、あらかじめ抗PD-1抗体治療の効果が期待できる患者さんかどうかを把握することができ、患者さんにとって最適な治療選択につながることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2019年2月22日(金)午後7時(日本時間)に英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。

【タイトル】“Peripheral T cell cytotoxicity predicts T cell function in the tumor microenvironment”

【著者名】Kota Iwahori1,2*, Yasushi Shintani3, Soichiro Funaki3, Yoko Yamamoto1,3, Mitsunobu Matsumoto1,4, Tetsuya Yoshida4,5, Akiko Morimoto-Okazawa1, Atsunari Kawashima1, Eiichi Sato6, Stephen Gottschalk7, Meinoshin Okumura3, Atsushi Kumanogoh2 and Hisashi Wada1(*責任著者)

【所属】
1. 大阪大学 大学院医学系研究科 臨床腫瘍免疫学共同研究講座
2. 大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学
3. 大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器外科学
4. 塩野義製薬株式会社
5. 大阪大学 大学院医学系研究科 基礎腫瘍免疫学共同研究講座
6. 東京医科大学 医学総合研究所 病理・画像部門
7. 米国 セント・ジュード小児研究病院

用語説明

※1 がん細胞株
生体から取り出したがん組織からがん細胞を分離し、培養液のなかで維持していくことで得られた長期間にわたって安定して増殖するがん細胞。本研究での T リンパ球活性測定では、毎回同じがん細胞株を用いています。

参考URL

大阪大学 大学院医学系研究科 臨床腫瘍免疫学共同研究講座
http://www.climm.med.osaka-u.ac.jp/

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