2018年12月19日

研究成果のポイント

・二酸化バナジウム※1薄膜を層状物質※2である六方晶窒化ホウ素※3上に成長させることに成功。
・六方晶窒化ホウ素を介することで、任意の材料上に二酸化バナジウム薄膜を載せることが可能に。
・フレキシブルエレクトロニクス※4やペーパーエレクトロニクス※5などへの応用展開が期待。

概要

大阪大学産業科学研究所の山本真人助教、田中秀和教授らの研究グループは、将来のエレクトロニクス材料として期待されている二酸化バナジウムを、どこへでも貼り付けられる材料である六方晶窒化ホウ素上に薄膜成長させることに世界ではじめて成功しました。

これまで、二酸化バナジウムの薄膜成長は、主に硬いセラミックス※6材料上で行われていました。今回、山本助教、田中教授らの研究グループは、二酸化バナジウム薄膜を、どのような材料上へも自由自在に移し変えることのできる六方晶窒化ホウ素上に成長させ、実際にそれをポリマー材料や紙の上に移し変えることに成功しました。これにより、これまで作製が困難であった二酸化バナジウムを用いたフレキシブル素子やペーパー素子などの実現が今後期待されます。

図1 さまざまな材料上に貼り付けた、二酸化バナジウムと窒化ホウ素との積層構造

研究の背景

セラミックス材料である二酸化バナジウムは、熱や光、ひずみなどの外からの刺激によって絶縁体から金属に敏感に変化することが知られており、スイッチ素子やセンサーへの応用展開が期待されています。

二酸化バナジウムを実際に電子素子へと応用させるためには、基板とよばれる土台の上で薄膜成長させる必要があります。これまで、二酸化バナジウムの成長基板としては、主にサファイアなどのセラミックス材料が用いられてきました。しかし、セラミックスのような硬い基板上の二酸化バナジウムは、近年その需要が急速に高まっているフレキシブル素子やペーパー素子などへの応用が困難でした。

今回、山本助教、田中教授らの研究グループでは、二酸化バナジウムがどのような材料上へも張り付けられる層状物質である六方晶窒化ホウ素上に薄膜成長できることを明らかにしました。そして、粘着性のポリマー材料を使うことによって、六方晶窒化ホウ素と二酸化バナジウムとの積層構造を元の土台から剥がし、ガラスや紙などの別の材料上へその構造を壊すことなく移し変えることに成功しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、これまで作製が困難であった二酸化バナジウムの特性を活かした全く新しいフレキシブル素子の実現が期待されます。例えば、近年需要が高まっている体温の変化を敏感に感知するウェアラブルセンサーや、どのような形状の窓へも張り付けられるスマートウィンドウ※7の開発が期待されます。

特記事項

本研究は、科学研究費基盤研究A、若手研究Bおよび物質・デバイス領域共同研究拠点の「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行われました。また、本研究は物質・材料研究機構の谷口尚フェロー、渡邊賢司主席研究員、九州大学の村上恭和教授、重松晃次研究員、有冨翔大大学院生、大阪府立大学の野内亮准教授の協力のもと行われました。

研究者のコメント

本研究では、世界で初めて六方晶窒化ホウ素上で二酸化バナジウムが薄膜成長できることを明らかにしました。今回得られた知見は、二酸化バナジウムに限らず他の機能性酸化物にも応用できる可能性があります。今後は、この結果を足掛かりとして機能性酸化物を基盤とした全く新しいフレキシブル素子やペーパー素子などの研究開発が促進されることが期待されます。

用語解説

※1 二酸化バナジウム
室温においては絶縁体であるが、熱や光、ひずみなどの刺激を加えると金属に変化する。この変化に伴い、電気抵抗値や赤外線に対する透過率が大幅に減少することから、スイッチ素子や赤外線センサー、スマートウィンドウなどへの応用が期待されている。

※2 層状物質
1原子から数原子の厚さからなるシート状結晶が、ファンデルワールス力と呼ばれる弱い力で積み重なった物質。

※3 六方晶窒化ホウ素
窒素とホウ素が蜂の巣状に並んだシートが積み重なった層状物質。非常にすぐれた絶縁性と化学的安定性を持つ。

※4 フレキシブルエレクトロニクス
ポリマーなどの柔軟な材料の上で電子デバイスを集積させた電子回路。フレキシブルディスプレイや医療機器などへの応用展開が期待されている。

※5 ペーパーエレクトロニクス
紙の上で電子デバイスを集積させた電子回路。既存のエレクトロニクスとは異なり、分解可能な材料を使うことにより環境に調和する未来のエレクトロニクスとして期待されている。

※6 セラミックス
金属元素や非金属元素、半金属元素などから成る無機化合物。もともとは、陶磁器やガラスなど身近に用いられている材料だが、近年ではその魅力的な物理的性質からエレクトロニクスへの応用が期待されている。

※7 スマートウィンドウ
光や熱、電圧などよって特定の波長の光にたいする透過率が変化するガラスを用いた窓。二酸化バナジウムは絶縁体から金属に変化すると赤外線を遮断するため、スマートウィンドウへの応用が注目されている。

参考URL

大阪大学 産業科学研究所 ナノ機能材料デバイス研究分野
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bis/

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