2018年6月26日

研究成果のポイント

・ナノポーラス※1金触媒※2において、化学反応の進行に伴って自己発生的に触媒表面で原子が集団で動き回り、触媒として働くところを可視化することに初めて成功した。
・優れた空間分解能と時間分解能を併せ持つ環境制御型透過電子顕微鏡※3を使うことで、原子スケールでのその場解析が可能になった。
・固体触媒の活性※4構造の理解と、エネルギー問題の解決に必要な新規高活性触媒の開発・実用化へ繋がることが期待される。

概要

大阪大学産業科学研究所の神内直人助教らの研究グループは、有害ガスである一酸化炭素を無害化するナノポーラス金触媒の活性構造を原子スケールで初めて明らかにしました。

金は化学的に不活性で錆びない金属であるにも関わらず、ナノサイズの孔を持つスポンジ状にすると触媒として働くことが報告されてきましたが、そのメカニズムは、これまで明らかにされていませんでした。

今回、神内助教らの研究グループは、高性能の環境制御型透過電子顕微鏡によるその場解析と計算機シミュレーションを行い、化学反応中に残留元素を含む特徴的なナノ構造(図1)ができること、触媒表面を複数の原子が激しく動き回り触媒として働くことを明らかにしました。この研究成果は、固体触媒の反応メカニズムの解明と、新たな触媒の開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、5月25日(金)18時(日本時間)に公開されました。

 

図1 ナノポーラス金触媒の活性構造のモデル図

研究の背景

これまで、ナノポーラス金触媒がCO酸化反応などの化学反応に対して触媒活性を持つことが知られており、多くの研究グループが、その原因を追究・提案してきましたが、そのメカニズムは明らかにされていませんでした。

神内直人助教らの研究グループでは、原子分解能かつマイクロ秒の時間分解能をもつ環境制御型透過電子顕微鏡を用いたその場解析を行い、触媒表面に特徴的なナノ構造が自己活性化する様子を捉えることに成功し、CO酸化反応雰囲気におけるナノポーラス金触媒の活性構造を解明しました。また、計算機シミュレーションを行うことにより、このナノ構造には残留元素が含まれており、触媒性能に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果は、金触媒だけでなく、工業的に用いられる様々な固体触媒の反応メカニズムを解明する手がかりになり、高性能な触媒の開発に繋がると期待されます。

特記事項

本研究成果は、2018年5月25日(金)18時(日本時間)に英国科学誌「NatureCommunications」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Self-activated surface dynamics in gold catalysts under reactionenvironments”
著者名:Naoto Kamiuchi, Keju Sun, Ryotaro Aso, Masakazu Tane, Takehiro Tamaoka, Hideto Yoshida and Seiji Takeda

用語解説

※1 ナノポーラス
スポンジ状にナノサイズの多孔があいている状態。

※2 触媒
化学反応を促進させる物質のこと。

※3 環境制御型透過電子顕微鏡
ガスを試料周囲に導入することが可能な透過電子顕微鏡。これにより、反応雰囲気など様々なガス中で試料を観察することができる。

※4 活性
触媒が化学反応を促進する性能のこと。

参考URL

大阪大学 産業科学研究所 ナノ構造・機能評価研究分野
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/nnf/index.html

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