自然科学系

2018年4月24日

研究成果のポイント

・銀河団※1の成長を規定する法則と、銀河団は成長期特有の内部構造をしていることを世界で初めて発見。
・「ハッブル宇宙望遠鏡」及び「すばる望遠鏡」による精密観測データを使用することで、銀河団のサイズ、重さの精密な観測が可能に。
・銀河団と宇宙そのものの進化史解明への手掛かりになると期待。

概要

大阪大学大学院理学研究科の藤田裕准教授と台湾中央研究院天文及天文物理研究所の梅津敬一教授をはじめとするイタリア国立宇宙物理研究所、米国ミシガン大学、米国プリンストン大学、広島大学、米国宇宙望遠鏡科学研究所の研究者で構成された国際研究チームは、宇宙最大の天体である銀河団(図1)が、ある一つの法則に従って成長すること、銀河団は成長期の内部構造を保っていることを世界で初めて明らかにしました。

本研究成果は、銀河団と宇宙そのものの進化史解明への手掛かりになると期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「The AstrophysicalJournal」に、4月25日(水)午前1時(日本時間)に公開されます。

図1 左:すばる望遠鏡で撮影した銀河団MACS J1206(Umetsu et al.2012, ApJ, 755, 56)。右:左の写真の中心部をハッブル望遠鏡で拡大して撮影したもの(NASA/ESA)。

研究の背景

これまで、銀河団は宇宙最大の天体であることは知られていました。しかし、その主成分が目では直接見えないダークマター※2であるため、その大きさや重さを正確に測ることが困難でした。

銀河団の大きさや重さを測る方法の一つに、アインシュタインの相対性理論に基づく重力レンズ効果※3があります。銀河団の背後に存在する銀河の光は、銀河団を通過するときに銀河団の重力を受けて、その経路が曲がります(図2)。これはまさにレンズの効果なので、地球から見て銀河団の背景の銀河の形はゆがんで見えます。多数の銀河の形のゆがみを精密に測ることができれば、レンズとなっている銀河団の重力場がわかり、結果としてその大きさや重さを正確に測ることができます。

そこで最近、超高解像度の銀河の画像が得られる「ハッブル宇宙望遠鏡」と広視野で多数の銀河の画像が得られる「すばる望遠鏡」を用いた20個の銀河団の重力レンズ効果の詳細な観測プロジェクト※4が実施され、これらの銀河団の精密な大きさや重さのデータが得られました。

藤田裕准教授らの研究グループでは、この最新のデータとチャンドラX線天文衛星で得られた銀河団中の高温ガスの温度データを統計的に調べ、データがすべて単純な法則に従っていることを発見しました。

さらに、コンピューターシミュレーションや理論解析を駆使することで、この法則が成り立つ原因が、銀河団が常に成長期にあること、つまり、現在も絶えず周囲の物質をその巨大な重力で大量に引き込んで成長しているためであることを明らかにしました。

図2 重力レンズ効果の模式図。銀河団の重力により、背景の銀河からの光線が曲がる。

本研究内容の詳細

本研究チームは、20個の銀河団の大きさ、重さの精密なデータと、温度のデータを分析し、これらのデータが(温度)=(重さの1.5乗)/(大きさの2乗)という単純な法則(以下「法則」という。)に従っていることを見出しました。大きさ、重さのデータは、「ハッブル宇宙望遠鏡」と「すばる望遠鏡」の画像(図1)を用いて、重力レンズ効果を観測することで得られました。温度はチャンドラX線天文衛星を用いて測定しました。

この発見を受けて、スーパーコンピューターを用いたシミュレーションで、仮想の宇宙を再現して銀河団を調べたところ、観測で見出した法則に従って、銀河団はおよそ40から80億年かけて成長することを確認しました。さらに宇宙で天体がどのように生まれ、成長するのかを記述する重力不安定理論※5を用いて発見した法則を検討しました。すると、成長期特有の内部構造を銀河団が保っている(図3)と仮定した場合、この法則を説明できることがわかりました。このことにより、銀河団は成長期であり、必ず本法則を満たしながら成長することが判明しました。

図3 左:成長期の銀河団。銀河やダークマターが次々落下し、内部の銀河の運動も活発で温度も上がりやすい。右:壮年期の銀河団。銀河やダークマターの落下は少なく落ち着いた状態

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

多くの天文学の教科書では、大多数の銀河団の内部構造は、平衡状態と呼ばれる成長が止まった壮年期特有の状態に対応していると書かれています。本研究は、それが正しくないことを明確に示すものです。また本研究で得られた法則は非常に単純であるため、多方面への応用が容易です。例えば本研究のデータの元となったような精密観測を何万という銀河団に対して行うことは、望遠鏡の性能や観測時間の制約上無理ですが、精度を落とせば近い将来は可能です。そこで本法則を用いて精度を補うことで、我々の近傍から宇宙の果て近くまでの、膨大な数の銀河団の性質を測定し、銀河団、さらには銀河団を生み出した宇宙そのものの進化史を明らかにすることが可能になると考えられます。

特記事項

本研究成果は、2018年4月25日(水)午前1時(日本時間)に米国科学誌「The Astrophysical Journal」に掲載されます。
タイトル:“DISCOVERY OF A NEW FUNDAMENTAL PLANE DICTATING GALAXY CLUSTER EVOLUTION FROM GRAVITATIONAL LENSING”
著者名:Yutaka Fujita, Keiichi Umetsu, Elena Rasia, Massimo Meneghetti, Megan Donahue, Elinor Medezinski, Nobuhiro Okabe, and Marc Postman
DOI:10.3847/1538-4357/aab8fd

用語説明

※1 銀河団
銀河を数百から数千個含む、大きさ1千万光年、重さは太陽質量の1015倍ほどの天体。成分の80%以上はダークマターでできている。我々が存在する銀河系は、近く(と言っても約6千万光年彼方)のおとめ座銀河団に重力的に引かれていることが知られている。

※2 ダークマター
我々の身の回りにある目で見える物質よりもはるかに多く存在し、宇宙の質量の大半を占める未知の物質。

※3 重力レンズ効果
銀河団などの重力場の中を光が通過すると、その進路が曲げられる効果。アインシュタインの一般相対性理論で説明することができる(図2)

※4 観測プロジェクト
CLASH(Cluster Lensing And Supernova Survey with Hubble)プロジェクトを指す。プロジェクトのホームページ(英語)はhttp://www.stsci.edu/~postman/CLASH/Home.htmlを参照。

※5 重力不安定理論
宇宙で周囲より密度が高いところは、重力も強いので、周囲の物質を集めてより密度が高くなるという理論。

参考URL

大阪大学 大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻 宇宙進化グループ
http://vega.ess.sci.osaka-u.ac.jp/

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