国内初!耳介後部型補助人工心臓装着に成功
患者申出療養制度による新規デバイス導入で、さらなる患者QOLの向上へ
概要
大阪大学医学部附属病院は、末期心不全で移植適応とならない患者からの申出により実施されている「患者申出療養制度」で、医療機器としては国内初となる承認を平成29年2月20日に受けました。この患者申出療養制度(以下「本制度」という)は、保険外併用療法として、未承認薬等を迅速に使用したいと望む患者の思いに応えるために、新たに創設された制度です。そのため、本制度は困難な病気と戦う患者からの申出が起点となります。
本制度に基づき大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 澤芳樹教授らは、本年3月に心臓移植・Destination Therapy(人工心臓の永久使用)治験(以下、「DT治験」という)の対象とならない患者に対して、本邦初となる耳介後部ケーブルを用いた新しい補助人工心臓の装着を行い、これに成功し、このたび無事自宅退院となります。
この新しい耳介後部型の補助人工心臓を使用することにより、現在承認されている腹部ケーブルを使用する療法と比べて、ケーブル由来感染症のリスクが低く、管理が容易となり、装着患者のQOLが向上するなどの効果が期待されます。
実施の背景
これまで、日本においては心臓移植の登録までの橋渡しとしてのみ補助人工心臓の使用、保険適応は認められておりませんでした。今回、患者からの申出によって、本制度を利用することで従来の適応外である患者に対して補助人工心臓の装着による救命とともに、海外承認、国内未承認の技術である耳介後部からケーブルを出す新しい補助人工心臓を使用することが可能となりました。
本療法が社会に与える影響(本療法の意義)
心臓移植・DT治験の対象外となる患者に対して補助人工心臓の装着が可能となる本療法は、重症心不全という困難な病気と闘う多くの方々に対して、補助人工心臓治療という新しい選択肢を提供することが可能となります。また、耳介後部からケーブルを出す本療法は、ケーブル由来感染症のリスクが低く、入浴が可能など装着患者のQOLが向上する点からも実生活に大きな影響を与えることが期待されます。また、日本人における耳介後部型補助人工心臓の有用性を明らかにすることで、国内承認を目指し、多くの重症心不全患者のQOL向上に寄与したいと考えております。
図1 国内第1例目の耳介後部型補助人工心臓を装着された患者様
参考URL
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学
http://www2.med.osaka-u.ac.jp/surg1/