生命科学・医学系

2017年9月29日

研究成果のポイント

・貴重で高価な油を生産する超耐乾性果樹ホホバについて、効率的な増殖法と改良法を開発
・これまでは経済的に成り立たず長続きしなかった砂漠緑化を、ホホバによって自立的に行なうことが可能に
・砂漠の緑化拡大による環境修復と経済発展に貢献する成果

概要

大阪大学大学院工学研究科の国際環境生物工学(住友電工グループ社会貢献基金)寄附講座は、乾燥に強い産業用作物の研究の結果、貴重で高価な油を生産する超耐乾性果樹ホホバ※1が、経済的に成り立つ砂漠緑化(=緑化農業※2)を可能にすることを見出しました(図1)

本当に持続する砂漠の緑化のためには、森を維持、拡大するための資金として事業者や地元の人たちが収入を得ることが必要であり、そのためには経済的な利益をもたらす木を植えること、そしてその生産物の売り先を日本などの先進国で確保することが重要であると考えられます。

ホホバは乾燥や塩分の高い水にも強いので、砂漠でも元気よく育つことができます。またホホバ油は他のどの植物油とも全く違う、人の皮脂と構造的に似た液体状のワックスで、肌なじみのよい優秀な保湿剤として化粧品原料として珍重され高価で取り引きされています。しかしこれまで、ホホバは、優良品種の開発と普及が十分でなかったため、安定した収穫が得られず、生産が伸びませんでした。

そこで同講座では、緑化に最適の植物遺伝資源として乾燥に強く収益性が高いホホバの木に着目して、増殖法と改良法の研究を行いました。本研究成果をもとに、砂漠でホホバの安定した生産を行い、日本でその生産物を販売するための阪大発ベンチャー「株式会社シモンド」※3が本年4月に設立され、10月からホホバ油の国内販売が始まります(図2)。この売り上げは、将来にわたる持続的「緑化農業」の第一歩となることが期待されます。

図1 「緑化農業」の概念図

図2 エジプトの農場(植え付けをしているところ)〔左〕とエジプト産ホホバ油〔右〕

研究の背景

これまで、緑化プロジェクトは木を植えることを優先していたため、ポプラなど利用価値が低いものでも早く大きくなるものが使われてきました。しかし多くの場合、援助が終了した後に森は利用価値のないものとして放置されてしまうか、燃料として現地の人たちに伐採されてしまうなどの問題がありました。

そこで、国際環境生物工学(住友電工グループ社会貢献基金)寄附講座では、緑化に最適の植物遺伝資源として乾燥に強く収益性が高いホホバの木に着目しました。ホホバは乾燥や塩分の高い水にも強いので、砂漠でも元気よく育つことができます(図3)。またホホバ油は他のどの植物油とも全く違う、人の皮脂と構造的に似た液体状のワックスで、肌なじみのよい優秀な保湿剤として化粧品原料として珍重され高価で取り引きされています。しかしこれまで、ホホバは、優良品種の開発と普及が十分でなかったため、安定した収穫が得られず、生産が伸びませんでした。そこで、本講座では、十分に研究の進んでいなかったホホバについて、増殖法と改良法の研究を行いました。

図3 乾燥地でのホホバの栽培。(上)今年植え付けが終わったばかりのホホバの畑。(下)数年で成熟した木となり、豊かな収穫が得られる林となる。

研究成果の内容

優良なホホバの苗は、優良な雌株からの挿し木からしか得られません。しかし、その供給数が限られているため十分に普及していないのが現状です。その改良も栽培者の経験に頼った選抜のみで行なわれています。

本講座では、優良な雌株のクローンを効率的に増殖させるために植物ホルモンの種類を工夫し、従来よりも多くのクローンが得られる組織培養法の開発を行いました。また改良のためのアグロバクテリウム法によるホホバで最初の形質転換法を開発するとともに、選抜のための指標である DNA マーカーの開発を行いました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果をもとに、エジプトの砂漠でホホバの安定した生産を行い、日本でその生産物を販売するための阪大発ベンチャー「株式会社シモンド」が本年4月に設立され、10月からホホバ油の国内販売が始まります(図2)。この売り上げは、将来にわたる持続的「緑化農業」の第一歩となることが期待されます。

今後、エジプトでの持続的な緑化と、利用されていない広大な砂漠の土地の有効利用、それによる現地の人々の雇用の創出、ホホバ油を利用した新しい産業の育成、そして日本とエジプトとの関係強化が期待されます。

特記事項

本研究は住友電工グループ社会貢献基金と鳥取大学乾燥地研究センターの支援で行われました。

研究者のコメント

私たちの考え方に共鳴してサポートして下さる企業と、エジプトの信頼のできる専門家という、2者の得難いパートナーを見つけられたことが私たちの研究成果を社会に役立てることを可能にしました。特に現地で信頼のできる専門家を見つけることが大変困難でした。エジプトにホホバの栽培を普及させることを夢に持ち、情熱を持って共に事業を進めてくれています。

用語説明

※1 ホホバ
アリゾナ周辺のソノラ砂漠などを原産とする雌雄異株の灌木で、種子に大量の油を含んでいます。ホホバの油は他の植物油とは全く違った人間の皮脂に似た特殊な成分の油(直鎖状ワックスエステル)です。そのため、べとつかず肌なじみのよい、優れた皮膚の保湿剤として珍重されています。世界的に見てもホホバ油の生産量は少なく、高価で取り引きされています。

※2 緑化農業
持続的な砂漠の緑化のためには、森を維持、発展させる資金として事業者や地元の人たちが利益を得ることが必要です。そのためには、砂漠の気候で元気に育ち、かつ経済的な利益をもたらす木を植えて、その収入を森の維持と拡大に使う事が最も効果的です。これを「緑化農業」と名付けました。材木の原料となるような木は切り倒す必要があるのでこの目的には不適当で、毎年種子や果実から収入が得られる果樹が適しています。

※3 株式会社シモンド
2017年4月に、ホホバによる緑化農業を実践するため、大阪大学関係者と民間企業で設立されました。現在、エジプト現地の人たちと一緒にホホバの栽培を始めているほか、エジプトの人たちが作ったホホバ油を日本で売る活動をしています。

参考URL

大阪大学大学院工学研究科 国際環境生物工学(住友電工グループ社会貢献基金)寄附講座
http://www.bio.eng.osaka-u.ac.jp/ev/index.html

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