生命科学・医学系

2017年7月25日

研究成果のポイント

・拡張型心筋症及び僧帽弁位人工弁機能不全※1を有する心移植待機重症心不全患者に対する経カテーテル的僧帽弁植込み術※2に成功
・本治療を拡張型心筋症による重症心不全患者に行ったのは世界初
・重症心不全を有する人工弁機能不全症に対する新たな治療法として期待

概要

大阪大学大学院医学系研究科の澤芳樹教授(心臓血管外科)らのグループは、これまで重症心不全患者に対する筋芽細胞シート移植など、多岐にわたる重症心不全治療の開発を進めてきました。また、低侵襲心臓手術として期待が高まっている経カテーテル的弁置換術においても、累計500例を超える経験があり、大阪大学医学部附属病院は国内有数の施設として主導的役割を担っています。

今回、これまで治療不能もしくは極めてハイリスクとされていた人工弁機能不全を有する重症心不全患者に対し、機能不全に陥った人工弁に対して経カテーテル的僧帽弁植込み術を実施し、心機能を改善させることに成功しました。今後、手術不能もしくは手術後補助人工心臓が必要とされるような重症心不全患者での人工弁機能不全症に対する新たな治療法として期待されます。

研究の背景

重症心不全に対する心臓手術はその侵襲性から非常にリスクを伴う手術とされてきました。特に以前施術した人工弁が機能不全に陥った場合、(再)手術のリスクはさらに高くなることが予想されます。また、心臓移植を待機中の重症心不全患者においては術後、侵襲によりさらに心機能が悪化してしまい、補助人工装置(心臓)が必要となる可能性が高くなります。澤教授らの研究グループは、新たな治療法として、これまで積極的に行ってきた経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)※3を応用した臨床研究※4「ハイリスク生体弁機能不全に対する経カテーテル的生体弁植込み術(Valve-in-Valve)」のもと、この度人工弁機能不全を伴う重症心不全患者に対して経カテーテル的僧帽弁植込み術を実施し、成功しました。

図 人工弁機能不全をきたした僧帽弁位生体弁に経カテーテル的に生体弁を植込んだ

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本治療法により、従来治療不能もしくは非常にリスクが高いとされていた患者に低侵襲人工弁治療が可能となることから、重症心不全患者での人工弁機能不全症に対する新たな治療法として期待されます。

用語説明

※1 人工弁機能不全症
過去に開心術で自己弁と置換された生体弁が硬化変性もしくは亀裂を起こし、それぞれ狭窄症や閉鎖不全症をきたす病気。通常8-12年で劣化するとされ根治治療は再弁置換術とされる。

※2 経カテーテル的僧帽弁植込み術
カテーテルを用いて僧帽弁に新しい人工弁を植える手術。

※3 経カテーテル的大動脈弁植込み術
TAVI(タビ)ともいう。通常の手術の危険性が高い(ハイリスク)患者に対して2013年より国内で認可。通常の大動脈弁置換術とほぼ同様の効果をより低侵襲に行うことが可能となった。

※4 臨床研究
人を対象として行われる医学研究のこと。病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者さんの生活の質の向上を目的として行われる。

研究者のコメント<澤教授>

経カテーテル的大動脈弁植込み術は、2009年に本邦で初めて大阪大学医学部附属病院で施行され、その後国内で爆発的に普及しております。この低侵襲治療を重症心不全患者に適応することで、本邦での移植への橋渡しとしての役割も非常に大きいと考え、新たな重症心不全に対する治療戦略に画期的な変革をもたらすものと確信しております。

この治療法が、患者さまやご家族にとって大きな福音になるよう願いながら、今後臨床研究を進めて参ります。

参考URL

大阪大学 大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学
http://www2.med.osaka-u.ac.jp/surg1/

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