生命科学・医学系

2017年7月18日

研究成果のポイント

・糖尿病性腎症※1における腎臓繊維化※2を画像化することに成功。
・腎臓繊維化は腎疾患の進行における重要な指標であり、その評価には腎生検が必要だが、特に人工透析の1番の原因となる糖尿病性腎症に関しては、浮腫の影響もあり、繊維化のMRIによる画像化は困難であった。
・糖尿病性腎症の組織障害を非侵襲的(生体を傷つけず)に正しく評価できる方法が確立されれば、透析患者の減少に繋がることが期待される。

概要

大阪大学大学院医学系研究科の貝森淳哉寄附講座准教授(先端移植基盤医療学)、猪阪善隆教授(腎臓内科)、高原史郎寄附講座教授(先端移植基盤医療学)らの研究グループは、ラット糖尿病性腎症モデルラットを用いて、MRIで、腎臓繊維化を画像化に成功しました。

これまで、拡散MRI※3により腎臓の繊維化を評価できる可能性が示唆されていましたが、糖尿病性腎症関しては拡散MRIでも浮腫により繊維化の評価は困難で、他の撮影方法が求められていました。

今回、高原教授らの研究グループは、拡散MRIを多方向から撮影する拡散テンソル画像(DTI)MRI※4という撮影方法でラット糖尿病モデルの腎臓を撮影することにより、腎臓の繊維化を画像化することに成功しました。

本成果により、将来的に非侵襲的に糖尿病による腎障害の程度を正確に評価する手法が実用化されれば、人工透析患者の減少につながると期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、7月18日(火)18時(日本時間)に公開されました。

図1 糖尿病ラットにおいて、シリウスレッド(赤)で染色した繊維化(左図)が、DTI-MRIで白く見えている(右図)。

研究の背景

糖尿病による腎障害により発症する糖尿病性腎症は、日本における人工透析の最も頻度の高い原因で、多くの患者さんが苦しんでいます。慢性腎臓病の病気の進行は、腎臓の組織繊維化と密接な関係があることが知られていました。しかしながら、これまで、糖尿病性腎症では、組織繊維化は侵襲的な腎生検でしか評価ができず、MRIやエコーなどの画像検査では評価が困難でした。特に、近年、拡散MRIが、腎臓の繊維化を評価できる可能性が示唆されてきましたが、まだ、確立しているとは言えませんでした。また、糖尿病性腎症に関しては、組織の浮腫が画像に影響を与えるため、拡散MRIでは評価不可能と考えられており、浮腫の影響によらず繊維化を評価する画像診断が求められていました。

本研究の成果

本研究グループでは、拡散MRIを多方向から撮影し画像化したDTI-MRIと、より感度の高い撮影方法であるスピンエコー法※5を組み合わせた撮影方法を開発し、ラット糖尿病モデルの腎臓を撮影することにより、腎臓の繊維化を画像化することに成功しました。従来の方法では、約3時間の長時間のMRI撮影が必要になり、その間腎臓を静止させておく必要がありましたが、本研究グループは長時間腎臓の血流、温度を変化させることなく静止可能な特殊な器具を開発することで、腎臓を静止させて撮影することを可能にしました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、今後、生体で腎臓を固定する方法や、さらに感度の良い撮影方法に改良することで、糖尿病による腎障害の進行の程度を非侵襲的に、正確に評価する手法の実用化が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2017年7月18日(火)18時(日本時間)に英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。
【タイトル】“Visualization of kidney fibrosis in diabetic nephropathy by long diffusion tensor imaging MRI withspin-echo sequence”
【著者名】Jun-Ya Kaimori1,2*, Yoshitaka Isaka2, Masaki Hatanaka2, Satoko Yamamoto2,Naotsugu Ichimaru1,Akihiko Fujikawa3, Hiroshi Shibata3, Akira Fujimori3, Sosuke Miyoshi3, Takashi Yokawa4, KagayakiKuroda5, Toshiki Moriyama6, Hiromi Rakugi2,and Shiro Takahara1(*責任著者)
1.大阪大学 大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学
2.大阪大学 大学院医学系研究科 老年腎臓内科学
3.アステラス製薬株式会社
4.BioView 株式会社
5.東海大学情報理工学部情報科学科
6.大阪大学保健センター

用語説明

※1 糖尿病性腎症
糖尿病の影響が腎臓に及び次第に腎機能が損なわれ人口透析が必要になる疾患。現在、日本の人口透析導入原因の1位を占める。

※2 腎臓繊維化
腎臓が病気によって障害を受けると腎臓の細胞は再生しづらいために、機能しない線組織に置き換わっていく。腎臓繊維化は腎疾患の進行度を表す指標として知られている。

※3 拡散MRI
MRIの撮影方法の一つで、水分子の広がりやすさを表す。繊維化が進むと組織が硬くなり、水分子が広がり難くなると考えれられるため、繊維に沿って水の動きが一定の場合は、繊維化を評価できる。

※4 拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging; DTI)MRI
拡散MRIの撮影方法の一つで、多くの方向の水分子の広がりやすさを測定できる。

※5 スピンエコー法
MRIの撮影時に、分子にパルスという電磁波を照射する。そのパルスの当て方の一つがスピンエコー法。

参考URL

大阪大学 大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学
http://www.att.med.osaka-u.ac.jp/

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