2017年4月18日

本研究成果のポイント

・単一分子の熱電特性における分子-電極接合形状効果を発見
・これまでの1分子計測技術では安定な1分子素子の形成・保持が難しく、1分子素子の熱電変換性能における分子-電極接点構造の寄与を実験的に調べることが困難だったが、当グループのナノ加工ブレークジャンクション素子※1を応用することで、室温下において安定な1分子素子形成を実現し、その熱電性能評価を行った
・熱電デバイスへの応用に期待

概要

大阪大学産業科学研究所の筒井准教授、谷口教授らの研究グループは、1分子素子の熱電変換性能における電極-分子接点構造の影響を、世界で初めて実験的に明らかにしました。平均値比で100倍以上の熱電変換性能が実証され、1分子接合の熱電デバイスへの応用が期待されます。

これまでの走査プローブ顕微鏡を基盤とした1分子計測技術では安定な1分子素子の形成・保持が難しく、1分子素子の分子-電極接点構造が熱電変換性能にいかに寄与するか、実験的に調べることが困難でした。

今回、筒井准教授らの研究グループは、当グループのナノ加工ブレークジャンクション素子を応用して、室温下で安定な1分子素子形成を実現し、その熱電性能評価を行いました。

その結果、1分子素子は電極-分子接点の原子レベルの構造次第で、平均値に比べて熱電変換性能が100倍以上も向上可能であることを明らかにしました。これにより、高性能1分子熱電素子に資する電極/分子接点構造を設計することが可能になり、1分子素子の熱電デバイス応用に展開が期待されます。

研究の背景

電極間に1個の分子が配線された1分子接合は、その構造が化学的に極めて精緻に作られています。このナノ構造体は、量子効果を反映した1分子系特有の熱・電気輸送特性を利用することで、バルク材料にない高い熱電変換性能の達成が期待される新しい熱電材料です。2007年に初めて1分子熱電測定が報告されて以来、これまでさまざまな1分子接合について熱電計測が実施されてきましたが、1分子接合の熱電性能における電極/分子界面の寄与は、その重要性が理論的に示唆されている一方、実験的に調べることが難しく、これまで検証されていませんでした。

図1 1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。

本研究の成果

筒井准教授らの研究グループは、ナノ加工ブレークジャンクション素子を応用することで、1分子素子をサブピコメートルの精度で機械的に引張しながら、その熱電特性測定を実施。1分子接合の熱電性能における電極/分子接点構造の影響を評価しました。その結果、短鎖長でかつ低い電気伝導性を有する分子では、1分子熱電特性に真空ギャップを介した場合、直接トンネル現象の寄与が顕著に表れることが分かりました。また、強固な化学結合により配線された1分子接合では、電極-分子間の距離を離すと電子状態が大きく変化し、その熱電性能が平均的な値に比べ100倍以上向上することを明らかにしました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、高性能1分子熱電素子に資する電極/分子接点構造を設計することが可能になるため、1分子接合の熱電デバイス応用への展開が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2017年3月10日(米国東部時間)に米国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Roles of vacuum tunnelling and contact mechanics in single-molecule thermopower”
著者名:Makusu Tsutsui, Kazumichi Yokota, Takanori Morikawa and Masateru Taniguchi

用語解説

※1 ナノ加工ブレークジャンクション素子
微細加工技術を用いてフレキシブルな基板上に作製された中空構造を有する金属細線。基板を機械的に湾曲させることで金属細線を破断し、電極対を形成するとともに、当該電極間に1個の分子を架橋させた構造を作ることが可能。

参考URL

大阪大学産業科学研究所バイオナノテクノロジー研究分野(谷口研究室)
http://www.bionano.sanken.osaka-u.ac.jp/index.html

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