2016年12月12日

本研究成果のポイント

・オートファジーは、タンパク質を分解するだけでなく、炎症性タンパク質であるインターロイキン-1βの分泌も制御していることを発見した。
・これまで、分泌を指示するシグナルペプチドがない炎症性タンパク質を初めとした多くのタンパク質の分泌経路は不明だった。
・今後、今回同定された分泌経路をターゲットにした治療薬の開発が期待される。

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科の木村友則特任助教(常勤)(腎臓内科学、元・ニューメキシコ大学医学部)らの研究グループは、オートファジー※1によって炎症性タンパク質(炎症性サイトカイン※2)インターロイキン-1β(IL-1β)を分泌する機構を解明しました(図)

これまで、分泌に関与するシグナルペプチド※3を持たないIL-1βを初めとしたタンパク質が、どのようにして細胞から分泌されるかは明らかではありませんでした。

今回、本研究グループは、IL-1βなどの炎症性サイトカインを、オートファジーが受容体※4やSNAREタンパク質群※5と協調して分泌する機構のメカニズムを解明しました。さらに、この機構は、IL-1β以外のシグナルペプチドを持たないタンパク質の分泌にも関与していることが分かりました。

この発見により、オートファジーが関与する各種疾患や免疫疾患などに対する分泌経路をターゲットにした治療薬の開発が期待されます。

本研究成果は、欧州系科学誌「The EMBO Journal」(オンライン)で12月9日(金)に先行公開されました。

図 オートファゴソームに包まれたIL-1βはSNAREタンパク質と協調することで分泌される。

研究の背景

これまで、オートファジーの主な研究は、分解機構について行われてきました。一方で、オートファジーには分解だけでなく、細胞からの分泌を促進する機構が存在することも指摘されていました。

また、炎症性サイトカインであるIL-1βは、細胞内の異物により活性化されたタンパク質複合体(インフラマソーム)によって分泌されますが、シグナルペプチドを持たないため、どのように分泌されるのか明らかではありませんでした。また、IL-1βのみならず、多くのタンパク質はシグナルペプチドを持っておらず、これらの分泌経路についても不明のままでした。

本研究の成果

研究グループは、IL-1βがTRIMタンパク質※4と呼ばれるオートファジーの受容体と結合することによってオートファジー関連構造物に輸送されること、そしてTRIMタンパク質が細胞膜融合に関与するSNAREタンパク質と結合し、IL-1βの分泌を促すことを明らかにしました。

さらに、IL-1βのみならず、シグナルペプチドを持たないタンパク質群も、同様の分泌経路で分泌されることが判明しました。その一つに、これまでオートファジーによって分解されることが知られていたフェリチン※6があり、フェリチンもこの経路によって分泌されていました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、オートファジーがタンパク質の分泌に重要な役割を果たしていることや、シグナルペプチドを持たないタンパク質の分泌経路が判明しました。今後、感染症、免疫疾患を含むオートファジー関連疾患(他に生活習慣病、癌、心血管疾患や腎臓病など)の治療法開発が期待されます。

研究者のコメント

<木村特任助教(常勤)>
ホットな生命科学領域であるオートファジーの病気との関連についての理解がさらに進みました。シグナルペプチドを持たないタンパク質には臨床的に重要なものが多く含まれていますので、本研究成果を下に治療法開発が進むことが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2016年12月9日(金)に欧州系科学誌「The EMBO Journal」(オンライン)に先行掲載されました。

タイトル:“Dedicated SNAREs and specialized TRIM cargo receptors mediate secretory autophagy
著者名:Tomonori Kimura, Jingyue Jia, Suresh Kumar, Seong Won Choi, Yuexi Gu, Michal Mudd, Nicolas Dupont,Shanya Jiang, Ryan Peters, Farzin Farzam, Ashish Jain, Keith A. Lidke, Christopher M. Adams, TerjeJohansen, and Vojo Deretic

なお、本研究は、鈴木万平糖尿病財団及び上原記念財団よりサポートを得て行われました。

用語解説

※1 オートファジー、オートファゴソーム
オートファジーは、まず細胞内のターゲットを二重膜で包み込み(オートファゴソーム)、これとリソソームが融合することで内容物を分解する機構である。しかし最近、オートファジーが分泌経路にも関与していることが判明してきた。

※2 炎症性サイトカイン
サイトカイン(他の細胞に情報を伝えるために細胞から分泌されるタンパク質)という生理活性物質の内、炎症反応を促進する機能を持つ物質のこと。細菌などが感染すると、まず自然免疫応答が働き感染から自己を防御する。インフラマソームは複数のタンパク質群からなる自然免疫応答の一種であり、活性化すると重要な炎症性サイトカインであるIL-1βの成熟化を担う。

※3 シグナルペプチド
タンパク質に含まれる短い配列で、この配列を介してタンパク質は細胞内の特定の部位に輸送されたり、細胞外に分泌されたりする。しかし、シグナルペプチドを持たないタンパク質も多く知られており、これらがどのように分泌されるかはよく分かっていなかった。

※4 オートファジーの受容体、TRIM タンパク質
オートファジーが特定の物質を認識する際には、受容体を介することで選択性を挙げている。その受容体の一つとしてTRIMタンパク質が知られるようになってきた。TRIMタンパク質は特有の配列を持つタンパク質群で、ヒトでは82種類のTRIMタンパク質があり、免疫応答等に関与する。

※5 SNAREタンパク質群
細胞内外のタンパク質の輸送の際には細胞内小器官や細胞膜等の膜と膜の融合(膜融合)が行われるが、これを調節するタンパク質。一般的にはQa-, Qb, -Qc-, R-SNAREと呼ばれる4種類のタンパク質の結合によって膜融合が進められる。2013年のノーベル賞はSNAREタンパク質の分子機構を解明した研究者に贈られた。

※6 フェリチン
鉄と結合している複合タンパク質の一つ。主に、肝臓、脾臓のような臓器や骨髄、小腸粘膜など、細胞内に存在する。

参考URL

大阪大学 腎臓内科HP
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/kid/index.html

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