2016年11月1日

本研究成果のポイント

・部品母材への熱影響を極力低減し、高効率かつ高精度なマルチレーザー式※1 金属積層(Multi-laser Metal Deposition:M-LMD)技術を開発
・従来技術に比べ金属粉末と熱源のコントロールが容易
・航空・宇宙・油井産業等に必要な加工部品への適用に期待

概要

大阪大学接合科学研究所の塚本雅裕准教授らの研究グループは、従来技術に比べて、金属粉末と熱源(レーザー)のコントロールが容易で、微細な積層や熱影響が問題となる薄板への積層や、AM(Additive Manufacturing)加工ヘッド※2 を旋回させた5軸自由曲面コーティング積層に適したマルチレーザー式金属積層(Multi-laser Metal Deposition:M-LMD)技術」(図1) を開発しました。

これにより、部品の強度や耐久性を向上させる金属コーティングや高価な部品の部分補修、微細形状の部分的な積層造形など、航空・宇宙・油井産業等に必要な加工部品への応用が可能になります。

本研究成果であるM-LMD技術は、ヤマザキマザック株式会社により、世界で初めて工作機械に搭載され、2016年11月17日(木)から22日(火)まで東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催される第28回日本国際工作機械見本市JIMTOF2016にて公開・展示されます。

図1 マルチレーザー式金属積層造形技術(Multi-laser Metal Deposition)

研究の背景と研究成果

これまでのLMD技術は、レーザー加工ヘッドの中心からレーザーを照射することにより母材表面に溶融池を形成し、また金属粉末をレーザー光周囲からその溶融池に供給することにより、溶融金属が厚膜を形成し積層を造形することを可能としています。しかしながら、これまで加工ヘッドから噴射される金属粉末が微細かつ軽量なため、風圧などの外乱により溶融池に粉末が効率良く供給されないという課題がありました。また、部品母材が薄い場合、LMD技術では大きな溶融を形成することにより部品母材自体が大きな熱影響を受けてしまう可能性がありました。

そこで大阪大学接合科学研究所の塚本雅裕准教授らの研究グループは、図2 に示したAM加工ヘッドを開発した。複数のレーザー光が集光点に向かって加工ヘッド側方から照射され、粉末材料は加工ヘッド中心から供給される構造(一般的なLMD技術とは、レーザー光と金属粉末の供給位置関係が反対)を実現しました。この構造により、加工ヘッド中心から噴射される金属粉末は部品母材に到達する前にレーザーにより溶融され、部品母材への熱影響を極力低減させ、高効率かつ高精度な金属積層造形が可能になります。今回開発したM-LMD技術では、金属粉末供給口が一つというシンプルな構造であるため、AM加工ヘッド※2 を旋回させても金属粉末が受ける重力方向の変化による影響が少なく、加工点へ安定した金属粉末供給が可能であり、従来と比べ金属粉末と熱源のコントロールが容易となり、本加工ヘッドを搭載することで、5軸自由曲面での積層を実現しました。

図2 AM加工ヘッド

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、部品の強度や耐久性を向上させる金属コーティングへの適用や高価な部品の部分補修、微細形状の部分的な積層造形など、航空・宇宙・油井産業等に必要な加工部品への応用が期待されます。

特記事項

本研究成果を搭載した工作機械は、2016年11月17日(木)から22日(火)まで東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催される第28回日本国際工作機械見本市JIMTOF2016にて公開・展示されます。
製品名:“「INTEGREX i-200S AM (M-LMD仕様)」”
製造メーカー名:ヤマザキマザック株式会社

なお、本研究は、内閣府主導(管理法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の国家プロジェクト、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的設計生産技術「高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング※3 技術の研究開発」の共同実施先である石川県工業試験場、村谷機械製作所と協力して行われました。

用語解説

※1 マルチレーザー式
多数本のファイバーから出力されるレーザーを同じエリアに集光し、重畳する方式。

※2 AM(Additive Manufacturing)加工ヘッド
マルチレーザー集光・重畳領域に粉末を供給し、金属コーティングを実現するユニット。

※3 レーザーコーティング
金属粉末に対し、レーザーを照射して、溶融凝固させることで母材に高い密着性を有した膜を形成する方法。

参考URL

接合科学研究所 加工プロセス学分野
http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~uhed/index.html

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