2016年10月7日

本研究成果のポイント

・“赤血球の硬さ”を世界最高のデータ相関値で評価できる赤血球硬さチェッカーを開発し、循環器系患者と健常者の赤血球を極細人工血管内に通過させた際に、統計的有意差が現れることを明らかに
・これまでのマイクロ流路を使った赤血球硬さ評価は、取得された細胞速度と細胞変形度合いとの相関係数の低さから、信頼性に疑問が投げかけられていた
・心筋梗塞・脳梗塞などの循環器系疾患診断への応用、赤血球硬さ評価指標による健康診断が可能に

概要

大阪大学大学院工学研究科の金子真教授、医学系研究科の坂田泰史教授らの研究グループは、世界最高のデータ相関値を誇るマイクロ流路埋め込み型の赤血球硬さチェッカー(図1) を開発し、循環器系患者と健常者の赤血球を極細人工血管内に通過させた際に、統計的有意差が現れることを明らかにしました。

これまでの赤血球硬さ計測は、取得されたマイクロ流路内細胞速度と細胞変形度合いとの相関係数の低さから、結果の信頼性に疑問が投げかけられていました。

今回、金子・坂田両教授らの研究グループは、新たな流体工学的発想により、硬さ評価チップの内流路構造(図2) を根本的に見直すことにより、チップ内細胞速度(硬さの評価指標)と変形度合いとの間に相関0.92(相関値の最高は1.0)という驚異的に高い相関値を実現することに成功し、循環器系疾患患者と健常者との赤血球間で統計的有意差を見出しました。これにより、循環器系疾患と赤血球硬さとの関連解明の新展開が期待されます。

本研究成果は、スイス科学誌「Micromachines」に、平成28年10月1日(土)(スイス時間)に公開されました。

図1 計測装置
外付けの圧力センサ出力が規定値になるようにシリンジポンプで圧力調整され、赤血球をマイクロ流路内に流し込んだときの赤血球の大きさと速度が高速カメラで計測される。

図2 マイクロチップ内流路
マイクロチップ内には幅の異なる3つのマイクロ流路が配置され、内部を通過する赤血球速度と変形量が計測される。

研究の背景

これまで、マイクロ流路を用いる赤血球硬さ計測法は、スループットが高いという大きなメリットがある反面、取得データの信頼性が保証されないという問題があり、実用化には遠い状況にありました。特にチップ内細胞速度(硬さの評価指標)と変形度合いとの間の相関は0.3-0.8にとどまっていました。

金子・坂田両教授らの研究グループでは、新たな流体工学的着想に基づき、硬さの評価指標計測チップの内流路設計を根本的に見直すことにより、チップ内細胞速度(硬さの評価指標)と変形度合いとの間に平均相関0.92(相関値の最高は1.0)という世界最高の相関値を得ることに成功し、実験データの信頼性を確保しました。さらに、開発したチップにより、循環器系患者と健常者との赤血球硬さ指標に有意な差が存在することを見出しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、循環器系疾患患者リスク評価における赤血球硬さ指標という新しいバイオマーカーの導入が現実味を帯びてくるだけでなく、循環器系疾患における新しい病態解明、さらに赤血球硬さをターゲットとした新しい治療法の開発が期待されます。

特記事項

本研究成果は、平成28年10月1日(土)正午(日本時間)にスイス科学誌「Micromachines」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“An On-Chip RBC Deformability Checker Significantly Improves Velocity-Deformation Correlation”
著者名:Chia-Hung Dylan Tsai, Junichi Tanaka, Makoto Kaneko, Mitsuhiro Horade, HiroakiIto,Tatsunori Taniguchi,Tomohito Ohtani and Yasushi Sakata

なお、本研究は、科研・新学術研究・超高速細胞システム特性計測の一環として行われました。

参考URL

大学院工学研究科 機械工学専攻 知能機械部門 金子・東森研究室
http://www-hh.mech.eng.osaka-u.ac.jp/home_j.html

大学院医学系研究科 循環器内科学
http://www.cardiology.med.osaka-u.ac.jp/

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