2016年8月4日

本研究成果のポイント

・未知だった極限高温高圧のマグマをレーザー高圧実験により再現し、部分結晶化という異常挙動を明らかにした。
・高温高圧のマグマの物性・振る舞いは、これまで考えられてきた単純な気化蒸発したマグマのものとは大きく異なる。
・今後の惑星科学研究に大きな影響を与える。

概要

広島大学大学院理学研究科 関根利守特任教授は、大阪大学大学院工学研究科(兒玉了祐教授、尾崎典雅准教授グループ)や大阪大学レーザーエネルギー学研究センターなどとの共同研究で、地球型惑星内部や地球飛来隕石の主要鉱物であるカンラン石を成分とするマグマの、極限状態での異常な相変化を示す結果を得ました。

これまで、一旦マグマとなった(溶解した)カンラン石は温度と圧力がさらに上がると、単純に気化蒸発すると考えられてきましたが、これとは異なる全く新しい知見が得られました。

本研究成果は、巨大地球型惑星の内部や惑星形成過程での微惑星衝突時に発生する極限環境(約10,000度及び300万気圧程度)下では、マグマ中で複雑な化学反応・相変化が起こりうることを示唆しています。

このことは、巨大衝突時の生成マグマの組成・物性や物質移動に再考の可能性があることを示唆し、巨大地球型惑星のマントルやコア形成時の元素の分配などに影響し、ひいては今後の地球型惑星の形成史研究に大きな影響を与えると考えられます。

本研究の成果は、平成28年8月3日午後2時(米国東部標準時間—日本時間4日午前3時)に米国科学振興協会AAAS※1 刊行のオンラインジャーナル「Science Advances」に掲載されました。

発表論文

論文題目:Shock Compression Response of Forsterite above 250 GPa
著者名:Toshimori Sekine*(広島大), Norimasa Ozaki, Kohei Miyanishi, Yuto Asaumi (以上大阪大)、Tomoaki Kimura(愛媛大)、BrunoAlbertazzi,Yuya Sato, Youichi Sakawa, Takayoshi Sano(以上大阪大)、Seiji Sugita(東京大)、Takafumi Matsui(千葉工大)、 Ryosuke Kodama(大阪大)
* Corresponding author(責任著者)
掲載誌:Science Advances
DOI番号:10.1126/sciadv.1600157

研究の背景

地球型惑星のマントルと呼ばれる部分は、主としてケイ酸塩鉱物で構成されていると考えられています。原始惑星形成過程における微惑星衝突により、ケイ酸塩鉱物は溶解し、マグマとなって移動し、冷却に伴いマントルとなっていきます。その主成分はカンラン石からなり、隕石中の主要ケイ酸塩鉱物もこれに近い岩石です。

今回の研究では惑星内部に相当する高温高圧状態や隕石衝突時の環境で、このカンラン石組成のマグマに関して、圧力と温度の上昇に伴い一部結晶が晶出する現象が明らかになりました。このことはマグマの組成を変化させるだけでなく、晶出した結晶によって取り込まれやすい成分とそうでない成分との差が生じ、その後のマグマの性質やその固化したマントルの性質を変えることになり、惑星形成過程や隕石衝突時の変化に大きな影響を及ぼすと考えられます。

従来の実験方法では実現が困難な高温高圧状態を発生させるため、高強度レーザー衝撃実験※2 を行いました。10億分の一秒程度のごく短時間での現象であるため高速 度での測定が必要で、ストリークカメラという高速度カメラ※3 を使用しました。密度、 圧力、温度、放射率などの測定結果をもとに、現象の解析を行った結果、かなりの量 の結晶化が起き、しかもその後その結晶が相転移※4 することも解析で示されました。 このような例は、極限環境では起きないとされてきましたが、本研究結果は極限環境 下でもマグマは単純ではなく様々な反応を起こすことが明らかになりました。

この結果は、巨大地球型惑星の内部構造や激しい衝突時のケイ酸塩マグマの従来のモデルの変更を余儀なくし、新しいモデルの構築が急務となり、そのモデル化に役立ちます。

研究成果の内容

関根特任教授らの研究グループは、高強度レーザー衝撃実験※2 で得られた温度、密度、圧力などのデータを解析し、フォルステライト※5 マグマから高融点物質の酸化マグネシウムが圧力約300GPa※6 、温度約10000度の条件で結晶化するという結果を得ました。熱力学的な検討を加え、結晶の量を推定し生成するマグマの組成を見積もることに成功しました。その結果、300GPa付近でマグマの組成が大きく変化することがわかり、このような条件が実現する巨大地球型惑星や巨大天体衝突を理解するための、モデルの再構築が必要となりました。

この結果は、従来この実験条件で液体中に相転移があるとされてきた実験結果と大きく異なります。最近の計算機シミュレーションでの酸化マグネシウム結晶化とは矛盾がありませんが、生成する液マグマの組成に関しては大きく異なります。

今後の展開

この結果は、巨大地球型惑星の内部構造や巨大天体衝突時における他の成分の共存についても検討する必要があり、今後も実験を進めます。今後の惑星科学研究に大きな影響を与えると考えられます。

用語解説

※1 米国科学振興協会AAAS
世界最大級の学術団体であり、著名科学雑誌『サイエンス』の出版元です。

※2 高強度レーザー衝撃実験
高強度レーザーを試料に照射し、高密度プラズマの生成・膨張に伴う反作用で試料中に強力衝撃波を発生させる実験方法である。発生圧力は1000GPa を超える。

※3 高速度カメラ
高速度現象をモニターするカメラにフレーミングモードとストリークモードの2通の方法がある。前者は通常のカメラのようにコマ取りで画像を高速記録する。後者は流し取りで、スリットを通した光を時間走引する方法である。超高速現象を連続的に捉えるためには、後者の方法がとられる。温度や衝撃波速度をストリークカメラで直接測定し、圧力や密度を決める。

※4 相転移
衝撃波の伝播に伴い高温高圧になると液体や固体が、不連続にその密度や結晶構造を変化させる。融解や結晶化も相転移の一種である。

※5 フォルステライト
Mg2SiO4の組成を持つカンラン石の端成分。従来の研究結果からフォルステライトは約200GPa 以上で液体になると示されたが、それ以上での圧力下での実験結果はなかった。

※6 GPa
圧力の単位で1GPaは1万気圧に相当する。地球の中心は約360万気圧に相当する。

参考URL

児玉研究室HP
http://www.eie.eng.osaka-u.ac.jp/ef/index.html

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