2016年4月27日

本研究成果のポイント

・妊娠高血圧症候群※1 の原因物質に抗腫瘍効果があることを解明
・その物質に卵巣癌、大腸癌の細胞の増殖を抑制させる効果があることを確認
・生体内で産生される物質であるため、臨床応用しやすく、幅広い応用に期待

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座(産科学婦人科学)の熊澤惠一助教は、妊娠高血圧症候群発症のカギとされている可溶性血管内皮細胞増殖因子受容体1※2 (soluble VEGF receptor 1:sFLT1)が卵巣癌、大腸癌の細胞に抗腫瘍効果を認めることを発見しました。卵巣癌のモデルマウスにsFLT1を投与することで抗腫瘍効果を確認しました。

sFLT1は生体内で産生されている物質であるため、抗腫瘍薬として臨床応用もしやすいと考えられます。また、乳癌、肺癌由来の細胞にも効果が確認できたため、利用しやすい抗癌剤として幅広い応用が期待されます。

なお、本研究成果は平成28年4月22日(金)に英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

研究の背景と内容

現在多くの癌で抗腫瘍薬が使用されていますが、新たな抗腫瘍薬の発見、開発は、患者の治療効果向上のために社会から広く求められています。妊娠中に胎盤は腫瘍のように増殖し増大することが広く知られています。熊澤助教は、新たな抗腫瘍薬を発見するために、胎盤にsFLT1が過剰であると胎盤の増大が抑制され、抗腫瘍薬のような働きをすることに着目しました。

具体的にはsFLT1を悪性腫瘍に投与することで増殖を抑制できるかどうか、下図のように治療効果の有無を探索し、さらにどのように細胞を傷害するのかを解析しました。

その結果、sFLT1を投与したマウスでは、外因性投与、内因性投与の両方で、腫瘍増殖の抑制効果を確認し、sFLT1が抗腫瘍効果を持つことが解明されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究では、卵巣癌、大腸癌由来の細胞に、生体でも産生されているsFLT1が抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました。また本研究では、卵巣癌、大腸癌を主たる対象としましたが、乳癌由来の細胞、肺癌由来の細胞にも効果があることも確認しており、幅広い臨床応用が期待されます。

悪性腫瘍は現在の日本での主要な死亡原因の一つとなっています。sFLT1は生体内で産生されている物質であり、抗腫瘍薬として臨床応用もしやすいと考えられます。

さらに、今回の研究が胎盤の研究と悪性腫瘍の研究を結び付けたことにより、今後、両者の研究がより密接に関わるきっかけとなったと考えられます。

特記事項

本研究成果は平成28年4月22日(金)に英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

用語解説

※1 妊娠高血圧症候群
妊娠により高血圧を来す病態で、重症化すれば母児の生命を脅かす。

※2 可溶性血管内皮細胞増殖因子受容体1
血管新生を阻害し、妊娠高血圧症候群発症の原因として注目されている。

参考URL

大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座(産科学婦人科学)HP
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gyne/www/

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