2016年3月24日

本研究成果のポイント

・大坂城の大手口石垣に嵌めてある2つの巨石(大手見付石、大手二番石)は、もともと一つの石で、矢穴※1 を利用して2分割されたものであることを立体的に証明
・石垣に嵌め込まれたままの石であっても、デジカメを利用した立体計測から、コンピュータの中のバーチャル空間で一つの石に接合し、復元する自動接合法を開発。これにより、はつり加工した箇所や近年剥落した箇所が判明
・今回開発した自動接合法により、石垣をデジタルカメラで撮影するだけで、分割された石のペアリングを自動的に探すことができ、石垣の築造方法や採石地との関係の解明に向けて貢献が期待できる

概要

大阪大学大学院基礎工学研究科の佐藤宏介教授と修士課程2年の森多花梨、公益財団法人かながわ考古財団の三甁裕司氏らの研究グループは、矢穴の三次元的な並び方を手がかりにラフな位置合わせを行い、面全体の凹凸を詳細に擦り合わせていく自動接合法を開発し、大坂(阪)城大手口の枡形※2 に使われている巨石を写真測量し、バーチャル空間の中で二つの巨石を精密に嵌め合わせることに成功しました。これにより、大手見付石と大手二番石がもともと一つの石であり、矢穴を利用して2分割されたものであることを立体的に証明しました。また、はつり加工※3 した箇所や近年剥落した箇所の判明にも成功しました。

城などの史跡の石垣に嵌められている石材の多くには矢穴跡が残っています。今回開発した自動接合法により、石割のペアをコンピュータが次々と自動発見していく、考古学向け人工知能への発展が期待され、石垣の築造方法や採石地との関係の解明が期待できます。

本研究の成果は、3月26日から九州国立博物館で開催される日本情報考古学会第36回大会にて発表されました。

研究の背景

佐藤教授の研究グループは、ロボット用の視覚として開発した三次元計測技術を考古学研究に適用する文理融合研究を進めており、考古遺物や文化財の立体分析やデジタルアーカイブを行っています。過去、イースター島の巨石人像モアイや、エジプト・サッカラ遺跡の階段ピラミッド、出雲大社境内遺跡の巨大柱など、世界的に著名な考古遺跡を計測してきた実績から、かながわ考古財団の三甁氏から要請を2年前に受け、調査を進めている過程で今回の発見につながったものです。

研究の成果

本研究は、肥後熊本藩主・加藤忠広が築いた徳川氏大坂城の大手口枡形に利用されている三連の鏡石※3 (図1) のうち、岩肌の模様から2分割されたものと推測されていた、中央に位置する大手見付石 (おおてみつけいし、城内第4位、表面積約48平方メートル)と、左に位置する大手二番石(おおてにばんいし、城内第5位、約38平方メートル)を対象に、市販のデジタルカメラで212枚撮影し、バーチャル空間の中にその三次元形状を復元しました(図2)

矢穴の三次元的な並び方を手がかりにラフな位置合わせを行い、続いて面全体の凹凸を詳細に擦り合わせていく自動接合法により、これらの鏡石が三次元的に5mm以下の精度で一致することが分かりました(図3) 。また、分割の際に利用した矢穴の全体像が再現され、上方から観察することができるようになりました(図4) 。得られた立体データから3Dプリンタで縮小立体模型を製作し、模型同士でも接合することができました(図5)

今回、2つの石がきっちり嵌め合った場合には本来あるはずのない隙間が新たに発見されました(図3 :赤色部分)。分割後のはつり加工により削られた箇所(見付石の左下部。最大空隙幅22.2mm)と、剥離により脱落している箇所(見付石の右端。最大空隙幅22.9mm)の2箇所です。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

史跡の石垣に嵌められている石材の多くには矢穴跡が残っており、この自動接合法に基づき石割のペアをコンピュータが次々と自動発見していく、考古学向け人工知能への発展が期待されます。仮に、採石地に残置された石と史跡の石がマッチングすれば、史跡と採石地とを直接に結びつける証拠となります。

特記事項

本研究の成果は、3月26日から九州国立博物館で開催される日本情報考古学会第36回大会にて発表されるました。
【発表題目】森多花梨、三瓶裕司、佐藤宏介「大坂城大手見付石のデジタルカメラ三次元計測とバーチャル接合」

参考図

図1 坂城大手口枡形巨石
大手二番石(左)、大手見付石(中央)、大手三番石(右)

図2 大手二番石(左)と大手見付石(右)の三次元データ
(CG像であるため、前方に樹木や草木が写り込まない)

図3 バーチャル接合の様子(はつり場所、剥落場所)

図4 合成復元された矢穴の全体像を上方から可視化

図5 3Dプリンタで製作された縮小レプリカ(大手二番石、大手見付石)

用語解説

※1 矢穴
クサビ(矢)を打ち込むために穿たれた穴。ミシン目のように一列に穿って石割するため、切り出された石材にその矢穴の凹みが列として残る。

※2 枡形
城壁で四角(枡形)に囲み、直角となる2方向に門を設けた城郭構造。外敵の城内への直進を妨げ、勢いを鈍らせるために設けられた。

※3 鏡石
表面が鏡のように平らな巨石。城の正面など重要な箇所に配置することで、城主の権力や石造技術を誇示する。

※4 はつり加工
ノミやタガネ等を使って石材の表面を薄く削り落とすこと。表面を平滑にするために行われる。

参考URL

大阪大学大学院基礎工学研究科 佐藤研究室
http://www-sens.sys.es.osaka-u.ac.jp/

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