2015年9月25日

本研究成果のポイント

・喫煙が老化関連分子αクロトー※1 の血中濃度を変化させることを初めて発見
・近年注目されている、代謝に関与する線維芽細胞増殖因子(FGF)-21※2 も喫煙によって血中濃度が上昇
・喫煙はクロトー関連分子を介して体内の炎症・代謝に影響を与え、老化を促進する可能性を初めて示唆
・喫煙による加齢性疾患発症や老化促進予防に対して新たな知見をもたらすことに期待

リリース概要

大阪大学保健センターの中西香織助教、瀧原圭子教授らの研究グループは喫煙習慣が血中の老化関連分子に影響を与えることを発見しました。喫煙者の平均寿命は非喫煙者と比較すると10年以上短く、喫煙は老化を促進する一因といわれています。しかし、喫煙によって老化が促進される詳細な機序についてはこれまで明らかにされていません。

今回の研究で喫煙習慣が老化遺伝子として知られているαクロトーの血中濃度を変化させることを初めて明らかにしました。さらに、代謝に関連する線維芽細胞増殖因子(FGF)-21の血中濃度も喫煙により変化することを発見しました。喫煙によって老化が促進されるメカニズムの中で、FGF-21とαクロトーは、それぞれ代謝と炎症という2方面から作用していることが示唆されました。

今回の結果は、喫煙による加齢性疾患の発症や老化促進の予防に対して新しい知見をもたらすと考えられます。

本研究成果は英国の科学誌「Scientific Reports」電子版(Nature Publishing Group)に平成27年9月18日(金)(英国時間)に掲載されました。

研究の背景

喫煙が現代社会で問題となっている様々な疾患や健康障害の危険因子であることは広く知られており、禁煙を推進することは疾病予防の観点から極めて重要です。大阪大学では2017年4月からキャンパス内全面禁煙を目指しており、様々な禁煙推進活動を行っています。

当研究グループでは、喫煙が頸部の動脈硬化を促進すること(Circ J, 2012)や女性喫煙者において内臓脂肪を増加させること(Circ J, 2014)を発表し、科学的な面からも禁煙推進のため研究を行ってきました。

今回、喫煙と老化との関係に着目し、クロトーの喫煙による老化促進への関与について検討したところ、喫煙者群ではFGF-21、αクロトー、また炎症関連サイトカインであるインターロイキン(IL)-6※3 が非喫煙者群に比べ有意に高値でした。さらに、喫煙以外の睡眠不足、精神的ストレスといったストレス状況下でもαクロトーの血中濃度は上昇していました。

FGF-21は代謝関連サイトカインとして知られるアディポネクチン※4 と負の相関を持ち、喫煙者におけるFGF-21上昇は代謝異常を示唆していると考えられます。

一方、αクロトーは非喫煙者群においてIL-6と正の相関を示しましたが、喫煙者群ではその相関は認められませんでした。αクロトーは抗炎症作用を持つと過去に報告されています。喫煙者でのαクロトーとIL-6の相関性の欠如は、αクロトーの抗炎症作用が喫煙ストレスによって減弱化されている可能性が考えられました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

喫煙習慣は老化を促進し、悪性新生物、心血管疾患、肺疾患、骨粗鬆症といった加齢性疾患の大きなリスク要因です。本研究で、喫煙習慣が血中の老化関連分子クロトーに影響を与えることを初めて発見しました。喫煙習慣がもたらす老化の促進や加齢性疾患発症の指標となる新しいパラメーターとして、血清クロトーが今後利用できる可能性があると考えます。

特記事項

本研究成果は英国の科学誌「Scientific Reports」電子版(Nature Publishing Group)に9月18日(金)(英国時間)に掲載されました。

掲載論文: Kaori Nakanishi, Makoto Nishida, Masaya Harada, Tohru Ohama, Noritaka Kawada, Masaaki Murakami, Toshiki Moriyama, Keiko Yamauchi-Takihara: Klotho-related Molecules Upregulated by Smoking Habit in Apparently Healthy Men: A Cross-sectional Study., Scientific Reports. Article number: 14230 (2015) doi: 10.1038/srep 14230.

用語解説

※1 クロトー
1997年に発見された老化遺伝子で遺伝子変異マウスは動脈硬化や肺気腫、骨粗鬆症、皮膚の萎縮など早期老化症状を示します。クロトーには老化の表現型を示すαクロトーと、そのホモログであるβクロトーがあります。αクロトーは血清中にも分泌されており、動脈硬化や糖尿病などの疾患群、年齢に伴って低下することが報告されている一方、腎不全では上昇することも報告されています。

※2 線維芽細胞増殖因子(FGF)-21
増殖因子というよりはホルモン様の機能をもつ線維芽細胞増殖因子(FGF)-19サブファミリーに属しています。FGF-21はβクロトーと協同し、糖脂質代謝に関与することが示されています。また、血清FGF-21はメタボリックシンドロームや動脈硬化で上昇することが報告されており、新しい代謝異常を示すマーカーとしても注目されています。

※3 インターロイキン(IL)-6
T細胞やマクロファージなどによって産生され、液性免疫を制御するサイトカインの一つです。炎症反応において重要な役割を果たし、インターロイキン(IL)-1や腫瘍壊死因子(TNF)-αと並んで炎症性サイトカインと呼ばれています。関節リウマチや感染症などの疾患で血中濃度が上昇します。

※4 アディポネクチン
脂肪細胞から分泌されるサイトカインの中で唯一の善玉ホルモンといわれています。動脈硬化抑制や抗炎症作用、アポトーシス抑制作用など様々な生理活性をもちます。メタボリックシンドロームと深い関わりがあり、血中アディポネクチンの低下と肥満や糖尿病、動脈硬化との関連が報告されています。

参考URL

論文掲載先(Scientific Reports)
http://www.nature.com/articles/srep14230

大阪大学保健センター
http://www.healthcarecenter.osaka-u.ac.jp/

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