2015年5月6日

リリース概要

光産業創成大学院大学の北川米喜特任教授と大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの有川安信講師らの研究チーム(11研究機関:浜松ホトニクス社大出力レーザーグループ開発部、トヨタ自動車等)は、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの世界最大のペタワットレーザー「LFEX」を用いて、核融合燃料をおよそ2000万度に加熱することに成功しました。そしてレーザー核融合方式の中で先進的といわれてきた「高速点火方式」での、世界最高の核融合中性子数を更新しました。これは、核融合燃料の点火にさらに一歩進めたことを示しており、高速点火方式の将来性を示したものといえます。

本研究成果は、5月5日付け『Physical Review Letters』誌に掲載されました。

研究の背景

「核融合」は、太陽エネルギーの源です。この核融合エネルギーを地上で実現しようという試みが、過去60年以上にわたり、世界各国で精力的におこなわれています。大阪大学は、これまで、レーザー方式による核融合研究開発の国内拠点として、大型レーザー建設を推進してきました。2009年に建設されたLFEXを用いた成果として今回、北川米喜特任教授が率いる日本国内の11機関の産学官連携チームは、レーザー核融合燃料を超高強度レーザーで作る「高速イオン」で加熱できることを実験的に見出しました。

レーザーで「人工太陽」を形成するためには、核融合燃料を太陽中心以上に圧縮し、同時に燃料の温度をあげる必要があります。光産業創成大学院大学の北川米喜特任教授らのグループは、緑色の爆縮用光レーザー2ビームで燃料コアを形成し、その直角方向から赤色の加熱レーザーを直接に照射加熱することで、加熱前とくらべて1000倍の核融合反応の増大を確認し、爆縮コア温度が2000万度近くに達していることを示しました。太陽中心の温度が1500万度といわれていますので、今回の成果は、高速点火方式で、太陽中心温度を越えたことになります。

核融合反応の増大には加熱温度上昇が必須なのですが、そのための外部からエネルギーを運ぶ媒体として、高速電子だけでなく、高速イオンも寄与させれば良いのではとの指摘は、実験的に明確に実現はされていませんでした。今回その”高速イオン”と呼ばれるものが主要な役割を果たすことがあきらかになり、高速点火の可能性がさらに高まりました。

北川米喜特任教授らのグループは、浜松を拠点にレーザー核融合研究開発を推進しており、これまでに世界で初めて連続ターゲット投入による核融合反応の発生に成功するなどの成果をあげています。

なお、今回の成果は、浜松ホトニクス社大出力レーザー開発部製の高繰り返しLD励起固体レーザーと核融合燃料ターゲットを用いておこなった爆縮加熱研究成果をもとに提案されたものです。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

地上で核融合エネルギーを実現するためには、さまざまな角度から研究開発をすすめていく必要があります。今回の成果は、レーザー核融合方式の中で先進的といわれてきた「高速点火方式」(外部注入した超高強度レーザーで追加熱する方式。このレーザーは高速電子とともに実は高速イオンをもプラズマ中で同時に生成する。)に、従来想定してきた加熱媒体「高速電子」に加えて、加熱媒体「高速イオン」が寄与しうることを実験的に世界に先駆けて証明したものです。加熱前に800万度だった核融合燃料を、電子ビームだけでは200万度しか追加熱できないのが、高速イオンでさらに800万度追加熱でき、合わせて2000万度近くを達成できることを見出したのです。高速電子と高速イオンを利用することで高速点火が一挙に実現性を持ったと期待されます。

核融合燃料に火をつけるためには、温度5000万度が必要だと言われています。本成果は、LFEXレーザーの半分の性能である2ビームを照射して達成されたものであり、今後フルパワーの4ビームで同等の実験を行った場合、“高速イオン”を活用した点火温度に近づくさらなる爆縮コア加熱が期待できます。

有識者からのコメント

◆本島修国際ITER機構名誉機構長 (国際熱核融合実験炉ITER前機構長(歴代トップ))
レーザー核融合研究における高速点火方式はわが国独自のアイディアに基づいており、研究の独創性の高さはもちろんのこと、レーザー核融合実現のための最短距離にあるとされる研究であり、私も予てよりその研究の進展に大きな関心を寄せていた。今回世界のトップレベルの研究組織である大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの大型レーザー「LFEX」を用いて光産業創成大学院大学ほかの11研究機関が産学官一体となって2000万度の加熱を実証したことは日本の研究レベルが世界最先端にあることを示すことであり今後の研究の発展が大いに期待できる。

◆米国リバモア国立研究所MaxTabak教授(高速点火の提唱者のひとり)
私が覚えている限りこれは高速点火で中性子発生の最高記録と思う。高速点火で高速イオンの有用性を際立たせた初めての仕事である。思うに今後さらにイオンと電子による高速点火の道を探っていかねばならないし、その努力こそが今はまだ胎児である核融合が本当に安全で豊富なエネルギー資源として生命を得て成長する方策と考えている。ますますのご活躍を。

◆独国ダムシュタット工科大学MarcusRoth教授
(高速イオン高速点火方式の提唱者の一人でレーザー高速イオンによる中性子発生の第一人者) レーザー生成高速イオンビームが核融合燃料を有効に加熱できることを実験的に示した偉大な成果であり、クリーンな将来のエネルギー源の実現へ向けた特出すべき成果である。

特記事項

5月5日付け『Physical Review Letters』誌に掲載された論文は、30人の共著論文です。11研究機関は、光産業創成大学院大学、浜松ホトニクス株式会社、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社、レーザー技術総合研究所、ネバダ大、トヨタ自動車株式会社、株式会社豊田中央研究所、産業技術総合研究所、大阪大学、核融合科学研究所、京都大学となっています。

【論文タイトル】
Direct Heating of a Laser-Imploded Core by UltraIntense Laser-Driven Ions

参考URL

レーザーエネルギー学研究センターHP
http://www.ile.osaka-u.ac.jp/jp/index.html

光産業創成大学院大学HP
http://www.gpi.ac.jp/

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