2015年4月30日

本研究成果のポイント

・酸化した悪玉コレステロールが血管を直接傷つけることが動脈硬化の原因の一つであるが、その仕組みは明らかでなかった。
・高血圧を促進するホルモンと脂質異常症で増加する酸化脂質が共通の受容体により血管が傷つくことを発見
・動脈硬化研究に大きな影響を与えるのみならず、老化に伴う病気全般に対する新たな治療法の解明に期待

概要

大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学の山本浩一講師、楽木宏実教授らは、信州大学の沢村達也教授、垣野明美助教らと共同で、血圧調節に重要なホルモン:アンジオテンシンII※1 の受容体が体内で酸化された脂質(酸化LDL※2 )によっても活性化されることを発見しました。

本研究は高血圧を促進する体内物質と脂質異常症で増加する酸化脂質が共通の受容体により血管を傷害することを示すものであり動脈硬化研究に大きな影響を及ぼすことが期待されます。また、このようなシステムは生体内で他にも存在し、生活習慣病から老化に伴う病気の発症に関与している可能性があるため、本研究を更に発展させることで老化に伴う病気に対する新たな治療法の解明につながることが期待されます。

本研究成果は、4月15日付けで「The FASEB Journal」のon line版に公開されました。

研究の背景

血圧低下時に血管を収縮することで血圧維持に重要な役割を果たすアンジオテンシンIIは、その反面、高血圧を引き起こしたり、血管の壁を傷つけ動脈硬化を進展させたりする負の側面を有しています。アンジオテンシンIIやその受容体であるAT1※3 の働きを抑える薬剤は降圧薬として世界中で使用されています。

一方、脂質異常症では増加した悪玉コレステロール(LDL)が酸化され血管の壁を傷つけることが動脈硬化を進展させる大きな要因となっています。酸化LDLの受容体であるLOX-1※4 は生活習慣病などにより血管表面で増加し酸化LDLによる血管傷害を促進しますが、これまでにLOX-1が細胞を傷害するシグナルを伝達する機構は明らかでありませんでした。

本研究では、酸化LDLが血管内皮細胞の酸化LDLの受容体(LOX-1)に結合するとLOX-1と細胞膜で結合したアンジオテンシンIIの受容体(AT1)が活性化され、その結果血管内皮の機能が障害されることが示されました。LOX-1の細胞内情報伝達機序を新しく解明したものであり、血圧調節とは異なるAT1の新しい機能の発見でもあります。

酸化LDLが血管を直接傷つける仕組み

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

高血圧や脂質異常症などの生活習慣病による動脈硬化の進展や心血管病の発症は本邦を含む先進国の大きな課題です。本研究は高血圧を促進する体内物質と脂質異常症で増加する酸化脂質が共通の受容体により血管を傷害することを示すものであり動脈硬化研究に大きな影響を及ぼすことが期待されます。

また本研究ではAT1のようなG蛋白共役型受容体が他の受容体との重合により間接的に活性化されることが始めて示されました。このようなシステムは生体内で他にも存在し、生活習慣病から老化に伴う病気の発症に関与している可能性があります。本研究を更に発展させることで老化に伴う病気に対する新たな治療法の解明につながることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、4月15日に「The FASEB Journal」のon line版に公開されました。

【論文掲載先】
http://www.fasebj.org/content/early/2015/04/15/fj.15-271627.abstract

用語解説

※1 アンジオテンシンII
血液中を循環し血管を収縮させたり、塩分を貯留させたりすることで血圧を上げるホルモン。血管を傷つけることで動脈硬化を引き起こす原因にもなる。

※2 酸化LDL
悪玉コレステロールである低比重リポ蛋白(LDL)が体内で酸化された物質。マクロファージに取り込まれたり、今回の発見のように直接血管を傷つけたりすることで動脈硬化を引き起こす。

※3 AT1
血管の細胞表面に存在しアンジオテンシンIIと結合する受容体。G蛋白共役型受容体に属する。血管を収縮させる他、血管の傷害にも関わる。

※4 LOX-1
血管の細胞表面に存在し酸化LDLと結合する受容体。生活習慣病などで増加し血管を傷つけ、動脈硬化を促進する。

参考URL

研究室HP
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/geriat/www/jgrpb.html

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