1兆分の1秒の超高速光現象を簡単に計測できる技術を実現
たった1本の光ファイバーをつなぐだけ!
本研究成果のポイント
・たった1本の光ファイバー を既存の装置につなぐだけで、まるでpHを測るリトマス試験紙のような簡単さで、従来よりもはるかに短時間・簡単操作・ポータブル・メンテナンスフリーで、1兆分の1秒オーダーの超高速光現象を計測可能にする、革新的な分析プログラムを開発
・本技術により、太陽電池の微細加工・レーザー治療・生命現象の観測・光通信装置のテスト等が従来よりも容易になり、豊かで持続可能な社会の発展に貢献するものと期待される。
概要
大阪大学大学院工学研究科の小西 毅 准教授らは、香港の企業であるAmonics社との協働により、超高速(1兆分の1秒)の超短光パルス の形を短時間で計測できる、簡単操作・ポータブル・メンテナンスフリーの計測装置を開発しました。
本技術により、微細加工や顕微鏡の性能等が大幅に向上し、例えば、太陽電池のウェハー の性能向上や、新しい生命現象の観測・発見が容易に行えるようになるものと期待されます。
研究の背景
超高速(1兆分の1秒)の超短光パルスの形を計測できる従来の装置は、太陽電池の微細加工・レーザー治療・生命現象の観測・光通信装置のテスト等への応用が期待されます。しかしながら、機器の調整が面倒でかつ計測に時間がかかるという問題点がありました。
小西准教授らは、たった一本の光ファイバーを既存の光スペクトラムアナライザー と光強度調節機 に連結し、そこに新たに開発した分析プログラムを組み込むことによって、まるでpHを測るリトマス試験紙のような簡単操作で数秒以内に超短光パルスの形を計測できる、ポータブルでメンテナンスフリーの装置を試作しました。
大阪大学は、この技術をAmonics社にライセンスし、Amonics社は国際産学協働開発により、このたびAOWA(Amonics Optical Waveform Analyzer: 図1 )を事業化・製品販売を開始しました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本装置を超短光パルスの計測・制御に用いることで、微細加工・医療レーザー治療や顕微鏡、光通信装置等の性能が向上し、例えば、太陽電池のウェハーの性能向上、難手術・生命現象の観測・発見、大容量光通信等が容易に行えるようになり、豊かで持続可能な社会の発展に貢献するものと期待されます。
特記事項
・関連特許:
特許1:日本登録番号 5,158,810(2012/12/21登録) 米国登録番号 8,886,037(2014/11/11登録)
特許2:日本公開 特開2013-170905(2013/9/2公開) 国際公開番号 WO2013/125166(2013/8/29公開)
・科学技術振興機構(JST)の「科学技術コモンズ」および「特許群支援」の支援を得た。
・総務省の「戦略的国際連携型研究開発推進事業」の支援を得た。
参考図
図1 AOWA(Amonics Optical Waveform Analyzer)
参考URL
用語説明
- 光ファイバー
電話線の電線に代わり通信のデータを伝送する光通信で用いられるファイバー状のガラスでできた光の伝送路。現在では、ファイバー・トゥ・ザ・ホームというキャッチフレーズで家庭まで光ファイバーがつながれてインターネット通信が行われているほど、一般生活にも普及している。
- 超短光パルス
数ピコ秒(ピコ秒は一兆分の一秒)以下の時間的オーダーの光のパルス。物質中で生じる物理化学現象の最も重要な初期過程は数ピコ秒以下の時間的オーダーで起こっており、超短光パルスを用いるとその様子を観測したり(超高速計測)、コントロールしたり(超高速制御)することが可能となる。
- ウェハー
集積回路を作製するための半導体でできた薄い基板。
- 光スペクトラムアナライザー
光の中に含まれているスペクトル(周波数)成分を分析する装置。分光器とも呼ばれ、スペクトル成分の強度を測定する。
- 光強度調節機
音声信号のボリューム調整のように、光の強度を調整する装置。