2015年1月20日

本研究成果のポイント

・人間が対話に参加している感覚(対話感)を覚えるロボットの実現は困難であった。
・多様な視線表現機能を駆使して、ロボット同士の対話に人間を巻き込むことで、人間に十分な対話感を与えることのできる“社会的対話ロボット”を開発した。
・ソフトウェア・コンテンツの開発と人間の生活環境における実証と普及を目指す。
・オトナロイドとコドモロイドがこれらの新しいロボットを紹介する、アンドロイドとロボットだけの世界初の報道発表を行った。

リリース概要

JST戦略的創造研究推進事業において、大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授と吉川雄一郎准教授らはヴイストン株式会社(本社:大阪市西淀川区、代表取締役:大和 信夫)と共同して、社会的対話ロボット「CommU(コミュー):Communication Unity」と「Sota(ソータ):Social Talker」を開発しました。

近年のロボット研究では、人間と対話できるロボットの開発が注目されていますが、人間が人間と対話しているときに抱く対話感(対話に参加しているという感覚)と同等の感覚を与えられるロボットは実現されていませんでした。

本研究グループでは、複数のロボット同士の対話を人間に見せることを基本に、より高度な対話感を実現する新しい形態のテーブルトップ型対話ロボット「CommU(コミュー)」と「Sota(ソータ)」を開発しました。このロボットとの対話では、ロボットが人間に向かって話しているのか、ロボットに向かって話しているかがはっきりと区別できます。また同時に、対話の参加者となる人間やロボットを無視しているように見えない“社会的振る舞い”もできます。

「CommU(コミュー)」は、眼球部、頭部、胴体部からなる豊富な自由度※1を持つ機構を用いることで、多様な視線表現を実現しています。ロボット同士が対話しながら、時折、参加者(人間)に質問をし、同意を求めることで、参加者がロボットとの対話感(対話に参加している感覚)を覚えながら、ロボットの話を聞くことができます。

「Sota(ソータ)」は、「CommU(コミュー)」の研究結果に基づき、人間と関わるロボットを広く普及させることを目的に開発されたロボットプラットフォーム※2です。「CommU(コミュー)」に比べてよりシンプルな機構を採用するとともに、ロボットクリエイターの高橋智隆氏による親しみやすいキャラクターデザインを取り入れ、一般家庭への普及を目指すものです。

今後は、ソフトウェアおよびコンテンツ開発環境を整備するとともに、人間の生活環境における情報提供・生活支援・コミュニケーション支援・学習支援といった対話ロボットによるアプリケーションの実証を進め、社会への普及を進めていきます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)
研究プロジェクト:「石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト」
研究総括:石黒浩(大阪大学大学院基礎工学研究科教授)
研究期間:平成26年7月~平成32年3月

上記研究課題では、特定の状況と目的において自律的に対話できる機能、複数の情報伝達手段を用いて社会的状況で複数の人間と対話できる機能等、実社会において人間と親和的に関わり、人間と共生するための自律型ロボットの実現を目指しています。

研究の背景と経緯

ロボット開発の広がりとともに、ロボット研究は、日常的な場面で違和感なく働くロボットの研究に焦点を移しつつあり、一般的な生活環境の中でも、人間と対話ができるロボットの開発が注目されています。近年の音声認識技術の発展により、これまでにも人間と音声言語でやり取りをする機能を持つロボットが開発されています。しかし、人間が人間と対話している時に感じる自然な対話感(対話に参加しているという感覚)と同等の感覚を、ロボットの機能として持たせることは容易ではありませんでした。

研究の内容

本研究グループで今回開発した「CommU(コミュー)」は、複数のロボット同士の対話を人間に見せることを、より高度な対話感を実現するのに利用した、新しい形態の対話ロボットです(図1)。人間に対話感を感じさせるためには、人間とロボットとの対話とロボット同士の対話の両方を高いレベルで両立させる必要があります。これには、ロボットが人間に向かって話していることとロボットがロボットに向かって話していることがはっきりと区別でき、また同時に、対話の中で参加者となる人間や他のロボットを無視しているように見えない“社会的振る舞い”が求められます(図3)。「CommU(コミュー)」は、小型のロボットでは通常採用されない、眼球部、頭部、胴体部からなる豊富な自由度の機構を用いて視線方向を多様な方法で表現できる機能を備えており、これらの自由度の使い分けにより、人間に似た微妙な“社会的振る舞い”を実現することができます(図4)。すなわち、ロボット同士の音声認識を必要としないことで洗練された形で実現される対話と、ロボットと人間との対話が違和感なくつながることで、人間は高度な対話感を感じながら、ロボット同士の対話を聞くことができます。

「Sota(ソータ)」は、同様の形態による対話が実現できるロボットですが、眼球と腕部の自由度を落とし、よりシンプルな機構を採用するとともに、ロボットクリエイターの高橋智隆氏のデザインによるかわいいキャラクターデザインを取り入れ、一般家庭への普及を目指しています(図2)

「CommU(コミュー)」も「Sota(ソータ)」も人間の生活環境における普及を目指し、小型化、運動系の静音化、人間の指を巻き込まないような外装のデザインを採用しました。

なお本発表では、JST戦略的創造研究推進事業CRESTで開発した2台のアンドロイドのオトナロイドとコドモロイドが、新しい社会的対話ロボットである「CommU(コミュー)」と「Sota(ソータ)」を紹介します。アンドロイドとロボットだけの世界初の報道発表となりました(図5)

今後の展開

今後、対話感の実現のための“社会的振る舞い”の実装を進めるとともに、ソフトウェア・コンテンツ開発環境を整備し、プラットフォームとしての成熟を図っていきます。また自閉症スペクトラム障がいなどのコミュニケーションに障がいを持つ子どもが通う発達障がいの専門クリニックの診察室に導入し、このような社会的対話ロボットとの対話を用いた療育プログラム開発の検討を通じて、社会への普及を進めていきます。これらのロボットの対話コンテンツは、ヴイストン株式会社と本研究グループが協力して準備していく予定です。

人間の生活環境における普及を目指し、「CommU(コミュー)」や「Sota(ソータ)」を用いて、情報提供・生活支援・コミュニケーション支援・学習支援といった社会的対話ロボットによるアプリケーションの実証を進めることにより、情報化が進んでいる我々の生活にさらなる変革をもたらすものと期待されます。

参考図

図1 社会的対話ロボット「CommU(コミュー)」の外観
サイズ:H304×D131×W180(mm) 重量:938(g)

図2 社会的対話ロボット「Sota(ソータ)」の外観
サイズ:H282×D140×W160(mm) 重量:800(g)

図3 社会的対話ロボット「CommU(コミュー)」と「Sota(ソータ)」のコミュニケーション例

図4 社会的対話ロボット「CommU(コミュー)」の表情・表現例

図5 「CommU(コミュー)」と「Sota(ソータ)」を紹介するオトナロイド(左)とコドモロイド(右)
「コドモロイド」「オトナロイド」は株式会社国際電気通信基礎技術研究所と株式会社電通の登録商標です。

用語解説

※1 自由度
関節をどの程度動かせるかを表す。動かすことのできる方向や回転をそれぞれ1自由度と数える。

※2 ロボットプラットフォーム
技術を発展・普及させるための基盤(土台)となるロボット。

参考URL

石黒研究室HP
http://www.irl.sys.es.osaka-u.ac.jp/
石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト
http://www.jst.go.jp/erato/ishiguro/robot.html#CommU
ヴィストン株式会社HP
http://www.vstone.co.jp/products/sota/index.html

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